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レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド的「モツ」の季節

2013-09-19 05:00:00 | 日記
前回は九月の中旬となって放牧されていた羊を集めるリェッティルという町村をあげてのイベントについてご紹介しました。今回はその続きです。

羊たちが集められる季節ということは、残酷な事実になりますが彼らのうちの相当数が一生を終える季節ということでもあります。いわゆるスローターが始まるのです。この時期に全ての食用羊をしてしまうのか、順番待ち?で残しておく羊があるのかまでは知りません。機会があれば酪農家の人に尋ねてみます。ですが、多くの羊がこの時期にサヨウナラとなるのは確かです。

アイスランド北部ではこの冬の厳しさから牧草の育ちがいまいちだったようで、羊の育ちも例年よりもこぶりだった、と食肉関係の人がニュースのインタビューでボヤいていました。

されてから供される上質のラム肉は、店舗に出されるものの他に冷凍保存されるもの、輸出されたり他の食品加工に回されたりするものもあります。既にスーパーの食肉コーナーには新鮮なラム肉がどんどん搬入されています。

ところがこの時期に特に目につくのが、ラムはラムでもステーキやハンギキョート(アイスランド人のソウルフードの半燻製ラムで、特にクリスマス期には大量に消費されます)ではなく、レバ、キドニー、ハツなどのいわゆる「モツ組」なのです。




スーパーの広告も「モツ組」を強調(レバ、キドニー、ハツ)


日本でなら焼き鳥屋さんや居酒屋で「モツ組」には馴染みがあるのですが、こちらでは私はあまりモツ類を食したことがありません。どうもこういうものは専門家が調理して供してくれるのならいいのですが、自分の腕では信頼がいかないようで。

ところでそういう「モツ組」の中でも、専門家が調理して供している半調理済み食品もあります。「ブローズモル」というブラッドプッディングと「リフラピルス」というレバ肉を主体にしたソーセージです。もっとも形態はソーセージよりもブラッドプディングに似ていますが。

この両者のことを指して特に「スラウトゥル」と呼ぶ習慣があります。すぐ分かるように英語のslaughterに通じる言葉です。スラウトゥルは出来合いのものをお店でも買えますが、自宅でせっせと作る人もいるようでレシピなどもネットには掲載されています。

このうちブローズモルの作方を簡単にご紹介しましょう。まず入れ物として羊の胃の皮を使います。胃を切って広げ、また袋状に縫うのだそうです。いきなりすごい作業です。

次に羊の腎臓をチョップでみじん状態にします。腎臓の周りに付いている脂肪分も同様。この両者にさらに羊の血を加え、つなぎとして片栗粉か小麦粉を混ぜます。よーく混ぜ混ぜしたら、胃袋を新たに縫い直した袋に詰め縫って口を閉じます。これを二、三時間煮て完成。

リフラピルサの方はきちんと調べなかったのですが、大体同じような手順だと思われます。はっきり言いますがワタシはゼッタイにやろうとは思いません。

スラウトゥルは好きな人、嫌いな人がかなりはっきり分かれるように見受けられます。「スラウトゥル食べるからおいで」と知り合いの牧師さんに招かれたことがあります。まさかスラウトゥルだけではなくて他の料理も出るのだろう、と思ってでかけたのですが、完璧にスラウトゥルだけでした。参った...




左がブローズモル、右がリフラピルサ
-Myndin er úr is.wekipedeia-


面白いと思うのは、例えば日本の漁師町などでは魚を本当に食べ尽くす文化がありますよね。普通東京の人などが知らないような調理の仕方で頭から骨から全て食べ尽くすような。

アイスランドの羊に関しても同じような文化があると思うのです。肉はもちろんのこと、モツ類、血、頭。豚足ならぬメー足はないようですが、羊の足は先細りなので食用は無理なようです。腿肉に足骨がくっついていることはありますが。

羊の皮と毛はどうしてるのかな?これも今度誰かに聞いて調べてみます。

ともあれ自分的には、田舎へドライブに行ってそこここで見かけるのんびりメーちゃんと、スーパーの食肉コーナーのラム肉の間には深くて暗い河があります。その河の中へ入らないでいいワタシは幸運なのか、偽善者なのか、人任せなのか... 羊たちがいなくなった山肌に、秋風が冷たく吹き抜ける今日この頃であった... (完)


応援します、若い力。Meet Iceland

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

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