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レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド流「仕分け」内閣

2021-12-05 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。

十二月の初旬ですが、レイキャビクではようやく落ち着いた冬となり、気温は毎日0℃辺りに定まっていますし、すでに積雪しました。朝は10時過ぎまで暗くなりましたが、気まぐれな気温と違い、日照時間の方は毎年カチッと決まっていますね。

もちろん日の入りも早くなっていて、公式的には午後4時前に日没となります。ですが、暗くなるのはもう少し後で5時前となっています。こちらの気象局ではちゃんとMyrkurミルクル「暗くなる」という項目も発表しています。

「暗い時期」に突入したわけですが、十二月は暗くなる一方でクリスマスの飾りの灯りが街中に溢れてきますので、それほど「暗さ」に嘆くというよりは、イルミネーションを楽しむ方に心が動いてくれます。




ホッコリ感アップ用ピック 氷島ではなく「ワイハ」
Myndin er eftir Justin_Lam@unsplash.com


さて、9月25日に行われた国会議員選挙の後、八週間以上を経て、先々週ようやく国会が新規に召集されました。そして、さらに一週間ほどを経た、先週12月1日に、新たな政権の概要が発表されました。

基本的には前政権の延長、ということが緊張感のなさに繋がっていたと思うのですが、発表された新政権の内容は、予想外にドラスチックな変化を含むものとなりました。

まあ、ドラスチックというよりは「ワケがわんねえ」と言ったほうが正解かも。

大臣数は12人ですので、前回から変わりはありません。男性が七人、女性が五人。前政権時も7:5でした。アイスランドではこのような時にも男女比は重要視されます。

男性が二人多いのですが、このうち法務大臣のポストが二年後に交替することになっています。これが男性から女性への交替ですので、二年後には男女比はイーブンになります。もちろん、他のメンバーチェンジとがなければ、の話しですが。

首相は緑の党のカトリーンさんが続投。財務大臣も独立党党首で元首相のビャルトゥニ氏が続投。みっつ目の連立党党首で、今回の選挙の一番の勝者となった進歩党(という名前の保守党)のシーグルズル・インギ氏は、これも続投で交通大臣なのですが、今回、交通省が住宅問題を守備範囲に含めたインフラ省に変わりました。




左 おなじみカトリーン首相
右 ビャルトゥニ財務相
Myndirnar eru ur stjornarradid.is


住宅不足と、不動産価格の高止まりが問題とされてきましたので、この問題にテコ入れをするのが意図だと思われます。交通省はもともと道路の維持・拡張や新トンネルの建設(?トンネルは「建設」でいいのでしょうか?)等、インフラに関係が強い省です。

これまで保健衛生大臣だったスヴァンディスさんは、今回は漁業・酪農大臣。彼女はコロナ下で頑張っていたのですが、コロナで頑張る人は必ず一部の人たちから敵視される運命にありますので、これは何か裏があるかもしれません。

その保健衛生大臣には新入閣のウィルム・ソウル氏。この方のことはまったく存じません。名前も今回初めて聞いた気がします。

これまで外務大臣だったグンロイグル・ソウル氏が環境大臣、外務大臣にはこれまで観光大臣だったソルディス・コルブルンさん。ワタシの密かなお気に入りの女性です。

法務省がまた名称替えをして内務省となりました。大臣はヨウン・グンナルスソン氏。二年後には同じ独立党のグビューズルンさんという女性に交替する予定。

と、ここまでは名称の変更や、一部の管轄の増減はあったもののまだわかりやすい変化です。これ以降が複雑。




左 進歩党(という名前の保守党)党首のシーグルズル・インギ氏
右 同じ党で、昨今露骨に好感度アップに励むリルヤさん
Myndirnar eru ur stjornarradid.is


これまで観光省は、Nyskopunニースコープンという、なんというか「新しい分野の開拓」省を兼ねていました。そのニースコープンの部分が産業及び科学の管轄と合体して「科学、産業及びニースコープン省」となり、これまで法務大臣だったアウスロイグさんが大臣。この女性が法務大臣をの座を降りてくれたことは、今回もっとも拍手喝采したいことのひとつです。

観光省は、実業及び文化問題とくっつき「観光、実業及び文化省」となり、これまで教育及び文化大臣だったリルヤさんが大臣に就任。この辺から、管轄範囲の結び付きが「なんで?」という感じになってきます。

教育省は、子供の問題とくっつき「教育及び子供問題省」となり、これまで福祉省大臣だったダーザソン氏が大臣。一見、もっともらしい組み合わせですが、子供の関する問題は教育問題だけではなく、福祉や権利の問題にも繋がりが強いですので、私としては理解しきれていません。

最後ですが、これまで環境大臣だったグビューズムンドゥル・インギさんが「福祉及び労働市場省」大臣となりました。確かに失業問題などは福祉に関わりますが、労働市場はもっと直接的に経済分野に関わるでしょうし、ちょっと?です。

ちなみに、このグビューズムンドゥル・インギさんは、私の西街の古アパートのすぐ隣りに住んでいます。ごく普通の古アパート。時折、その玄関前に黒塗りの高級アウディが待機しています。お迎えの車。

全体として見ると、福祉省に関わっていた分野 –住宅問題と子供の問題– が他所へ移り、さらに教育・文化の問題が小分けされてあちこちへ移された感があります。




左 ワタシの密かなお気に入りのソルディスさん
右 我が隣人のグビューズムンドゥル・インギさん
Myndirnar eru ur stjornarradid.is


これからしばらくは、ある種の問題についてどこの省庁の管轄なのかとまどうことが多くなるだろう、と感じています。

シングルマザーの家庭の子供手当はどこが責任を持つ?福祉省か子供問題省か?離婚夫婦の子供の親権問題は、子供問題省か、内務省か? 産業、実業、労働市場とか、ルーツが同じ分野も複数に別れてるんですけどー?

複雑怪奇な「仕分け」ですが、ひとつポジティブに考えられるのは、この仕分け、すべて「現存する問題の解決」という視点からなされているように理解できることです。

コロナ禍で、労働マーケットが麻痺し、福祉需要が増大。経済立て直しには観光業のへのテコ入れと、新規産業分野の開拓が不可欠。住宅問題の解決には、新しい住宅建設が必須、等々の諸現実に対応するための新編成だということは理解できます。

おそらく数年後には、また仕分けのし直しがなされることでしょう。




政治の口直し用ピック キルキュバイヤールという町の学校のツリー
Myndin er ur KBS.is


ここでは書ききれませんでしたが、新しい分野が省庁の看板に乗っかったのとは裏腹に、これまで看板に乗っていた「人権」とか「同権」とかの消えていったタイトルもあります。もう要らねえっ!てか?

そういうところに今回の新政権の主要な力点が見え隠れしていますね。経済関係の事細かな分類に比して、表に出てこない分野にも共通性がある気がします。今、挙げました「権利問題」や「性差別問題」「貧富格差問題」「移民問題」「難民問題」等々も、大きな課題だと、ワタシは思うのですが。

どうせなら「Me too省」「貧乏省」「移民難民人権省」とかも設けて欲しかった気がします。

個人的にはカトリーン首相は好きなんですけどね、この路線には少し心配させられます、というのがホンネです。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
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