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レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

Black lives matter アイスランドでの独自展開

2020-06-21 00:00:00 | 日記
先週の水曜日は17. juni でした。「ソイテャンディ・ユニ」と読みます。これはアイスランドの独立記念日で、もちろん国民の祝日です。なぜか「独立記念日」という呼び方よりも、ソイテャンディ・ユニの方が日常的に使われます。

今年は例によってCちゃんの影響で、祝祭典は控えめだったとのこと。子供たちが大きくなって以降は、まったく参加していない私にとっては、ほとんど関係ありませんでした。 でも、ひとつ特別に良かった、と思えたことがあります。この日は毎年大統領が国に貢献した人に対してFalkaorda ファウルカオルザという勲章を授与します。




左からヴィーザル、アルマ、ソウロウブルの御三方 おめでとうございます
Myndin er ur Visir.is/Sigurjon


その受勲者の中に、ヴィーザルというお巡りさん、アルマとソウロウブルというふたりのお医者さんがありました。

この御三方、コロナの騒ぎの間、毎日記者会見を開き、現状のわかりやすい説明をし、さらに記者からの質問にも丁寧に答えてくれていたのです。相当の仕事だったろうと想像します。「昼帯」を担当しているようなものですから。国民のほとんどが彼らに感謝しているのではないでしょうか?

私もこの受賞は、とても的を得ていると思いましたし、珍しく私でさえ喜ばしく感じるものとなりました。おめでとうございます。

実は、今回は天気も良かったし「街中へ歩いて行って写真でも撮ってみっか?ブログのために」と、思ったりしたのですが、結局自宅での仕事になってしまいました。ここのところかなり忙しかったのです。

今回は、昨今のアイスランドの様子を、私の仕事目線でご紹介してみたいと思います。

アメリカの Black lives matterの波は世界の各地へと波及している、とニュースで見ています。その波はアイスランドへもやってきています。数年前の#Metoo運動の時と似ている面があります。

もっとも、黒人の人たちの絶対数がとても少ない事実がありますので、アイスランドでは、BLMは黒人の人たちへの差別反対という点では、例えば「アメリカでの運動を支援する」というようにして現れています。

ただそれだけではなく、アイスランドでの関連した問題として、「非白人の移民、住民に対する差別の告発」というものがここのところ頻繁になされています。

「告発」というとちょっと言葉がきついかもしれませんが、#Metooの時と同じく、差別や偏見の体験を持つ人たちが、表に出てきてそのことについて話しをするのが目立つようになりました。

ここで、先へ進む前に、アイスランドと日本のメディアのシステムの違いについて少し説明しておきますね。

Youtubeやその他のSNSの発展に伴い、一般の個人が自分の考えやパフォーマンスを、既存のメディアに頼らずに自由に発表できるようになったことはアイスランドも日本や他の欧米諸国と同様です。敢えて「欧米諸国」と言いましたのは、そうではない国も実際にアジアではあるようですので。

ただ、アイスランドではこの発展とは別に、普通の個人がメディアに個人としての意見を発表する場が「伝統的に」保証されてきました。




伝統的な紙面の中でのオピニオン・コーナー モルグンブラウジィズ紙


日本の新聞では、読者のオピニオンなどは本当に数行のものが、日にふたり分くらい掲載されるだけですよね?こちらでは、私が移ってきた三十年前ですら、毎日紙面の数ページを費やして普通の読者からの意見が掲載されていました。

昔は、紙面以外には意見表明の場がなかったので、私も二十年くらい前から定期的に新聞へ自分の意見を発表してきました。簡単ではなかったですよ、もちろん。アイスランド語ですから、助けは必要でした。

十五年くらい前から、徐々にネットが並行して意見表明の場を設けてきましたし、今ではネットの方がメインになっています。印刷版よりも、シェアできるネット版の方が好都合なことが多いのです。

これらオピニオンの場が、Facebookやインスタ、トゥイッターのような個人ベースのものではなく、ネットのニュースサイト、例えば日本やアメリカで言うならば、ヨミウリ・オンラインとかCNN.Comのような公共サイトの一部に設けられているわけです。

これは、意見の交換を公明正大にできる、という点ではかけがいのないシステムだと、私は高く評価しています。もちろん、大臣や著名な人も意見を送ってきますが、その隣りにそこらのおじちゃんや学生さんの意見が並ぶこともあります。というか、それが普通です。

大切な点はこれが「裏チャンネル」ではなく、まさにメインのメディアの一部であることです。その点に関わるのですが、匿名寄稿はNGです。それと、何か事情がない限り、必ず顔写真を添えなくてはなりません。つまり、意見は言えるけど、身元を隠してこそこそということはできないわけです。

このメディアの仕組みをまず理解していただきたいと思います。でないと、次にご紹介しますことが良くわかっていただけないでしょうから。

さて、最近、このメディアのオピニオン掲載の部分に、多くの移民、あるいはルーツを外国と分け合っている人たちが、自らの体験や意見を公開してくれているのです。それなりに勇気と覚悟がいることですし、敢えて一歩踏み出してものを言ってくれる人に、私は敬意を感じます。

で、どんな体験があるのでしょうか?

タイ人のお母さんとアイスランド人のお父さんを持つ二十代の女性は、小中学校時代にさんざん自分の容姿をからかわれたそうです。「冗談だから」と教師も見て見ぬ振り。いじめですね、もう。

別の中東からの両親を持つ女性は、アイスランドで生まれ、ずっとこの国で暮らしてきているにもかかわらず、なにかあると「自分の国へ帰れ!」といまだにののしられることがあるそうです。「私はアイスランド人ではないの?」と彼女はネットの記事で問うています。




ネットの中でのオピニオン・コーナー 「私はアイスランド人なのか?」
Myndin er ur Visir.is


あるアイスランド人の男性は、このオピニオンのコメント欄にこう書いてきました。「両親がアイスランド人でないならば、あんたはアイスランド人ではない。両親がアイスランド人なら、たとえ中国で生まれ育ってもアイスランド人さ」

私は、このネットの「コメント・システム」に関しては否定的で、こんなに人を誹謗中傷するだけのシステムなど、取り去られるべきだと考えています。当然、普段は無視するのですが、今回だけはこの男性にコメントを残しました。

「それは大変に面白い意見ですね。(スマイル) では、アイスランド人とは一体誰なのでしょうか?そもそも、アイスランド人のお父さんと、お母さんを持って生まれてきた『最初のアイスランド人』って誰?(スマイル二回目)」

この男性の見解に従えば、アイスランド人は消滅します。祖先は皆、移民なのだから。

ちょっと変わっているのは?黒人でゲイという大学生が、いかにアイスランド人のゲイの人たちが自分に対して期待というか、肉体に関する先入観的願望?を突きつけてくるか、とか。なおかつ、この人が「ものすごく支配的なキャラクターと決めつけてくる」こともあるそうで。

彼はこれを「ゲイの仲間世界での人種差別」と捉えているようです。そうかもしれないけど、いまいち私の理解を越えてしまっています。すみません。

この他にも、様々な人がそれぞれの体験、生活から多くを公表、共有の場を与えてくれています。私は、これはとても良い方向への発展と考えますし、一時(いっとき)のブーム事象ではなく、恒常的になって欲しいと願っています。

こうした意見を聞いていくと、アイスランドでの人種的、民族的、文化的差別というもの輪郭が浮かび上がってきます。直接的暴力の事例も増えてきているのですが、メインはやはり「いじめ」「侮蔑」「仲間外れ」等々の陰湿な日常的行為の中にあるようです。

これも真のアイスランドですから。

ああ、それで、そのようなアイスランドの昨今の状況が、どのように私の仕事に直接あるいは間接的に影響しているのか?ということを書くつもりでいたのですが、途中でネットの仕組みを説明しなきゃ、とか思いついたこともあり、長くなってしまいました。

この線に沿って、もう一回お話を続けさせていただきたいと思います。


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Home Page: www.toma.is
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