肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『2001年宇宙の旅』、観ました。

2007-04-10 20:47:19 | 映画(な行)






■監督 スタンリー・キューブリック
■出演 キア・デュリア/ゲーリー・ロックウッド/ウィリアム・シルベスター

 『2001年宇宙の旅』、観ました。
人類創生期、猿人たちの前に異様な黒石板(モノリス)が現れる。彼らがそれに
恐る恐る触れると、知性が芽生え、動物の骨を武器として使えるようになる。
西暦2001年、再び月面の基地に黒石板が出現。その石が放射する信号に従い、
5人の科学者を乗せた宇宙船ディスカバリー号が木星に向うが……。
 出来ればレビューを書くのを避けて通りたかった“SF映画の金字塔”。すなわち、
“難解映画の決定版”(笑)。これまで幾人もの映画ファンがこの映画の謎に挑み、
《世紀の大傑作》との評価を下してきたわけだが、その賞賛の声のほとんどが
「ここには観る者を惹きつける“何か”がある」とか、「この映画ばかりは一度
観ただけでは駄目で、二度三度観て初めてわかってくる“奥の深い作品”」とか、
挙句には「とにかく凄い」の一言で片付けちゃう人まで(笑)。うん、確かに
“凄い映画”であるのは間違いないのだけど、それにしても、ホントに分かって
言っているのか、あるいはそうじゃないのか、何だかオイラの目には、他の人が
「凄い」と言ってるから、とりあえず自分も…とばかりに、無理やり便乗している
ように見えて仕方ない。まぁ、そうは言ってもオイラ自身、今回が通算5回目の
鑑賞になるわけで、この映画が持つ“神秘性”に惹かれない訳ではない。恐らく、
本作が難解だとされるのは、人物の台詞や言葉による説明が出来うる限り省略され、
映像のみの表現で、観客に“体感させる試み”が成されているからだろう。よって、
どうして完全無欠のコンピューターHALが狂ったのか??、黒石板(モノリス)は
何のために出現したのか??、ボーマンが導かれた中世の部屋は何処だったのか??、
ラストシーンで宇宙に大きく映し出される赤ん坊(スペースチャイルド)は何を
意味しているのか??‥‥、そのいずれかの謎の一つに引っかかると、その後の
展開がドミノ倒しのように、総崩れで混乱してしまうのだ。
 前置きが長くなってしまった、本題に移ろう。では、手始めに何故、これまで
一度もミスを犯したことのない最新型コンピューターHALが狂ってしまったのか??、
実は、その謎はこの映画を観た人が最初に乗り越えなくちゃいけない難問であり、
逆にそれさえクリア出来れば、この映画の主題の80パーセント以上は理解出来た
ものだと、ボクは思っている。だからこそ、この謎に限り、キューブリックはそれを
解くための大ヒントを与えてくれているのにお気付きだろうか。それは、ボーマンが
HALの暴走を止める為、コンピューター室に入って回路を切断していく最中、
他のクルーには知らされず、HALにだけ知らされた“極秘フィルムの存在”が
明らかになる。そこでHALは「任務の秘密を(クルーに)漏らしてはならない」という
命令を地上から受けていて、元々記憶されていた「クルーに忠実であること」という、
2つの矛盾した指令の狭間で戸惑い、とうとう精神分裂に陥ってしまったのだ。
つまり、ここでキューブリックが言いたかったものは、機械は正常でも、人間が
間違った操作をすれば、機械は正常に働かず故障を引き起こす。2001年になって、
科学がどんなに進歩したとしても、それを使う側の人類自身が進歩しないことには、
“本当の意味での21世紀”はやって来ないのだと。そして、今、ふと気がつけば、
科学の進歩は、原子爆弾やら、その他無数の殺人兵器やら…、むしろ、人類に
“危険”の方をもたらしている。キューブリックが“40年前に想い描いた未来の
21世紀”は、果たして“今の、こんな世界”だったんだろうか。例えば、400年前、
突如出現したモノリスによって、猿人が“道具を持つこと”を覚えたように…、
今再び現れたモノリスは、我々に今度は“科学の正しい使い方”を教えに来た
ように思えて仕方ない。恐らくや、木星へと到着し、ボーマンが導かれた“中世
ヨーロッパ建築の一室”は、人間の憎しみやエゴや争いの無い…、“平和で調和の
取れた空間”をイメージしたものではあるまいか。その後、ボーマンは急激に老化し、
ついには朽ち果て、“新しい命”へと転生していく。それは、人類の“古い時代の
終焉”を意味しつつ、生まれ変わる人類の“新しい未来”を予感させる。更に、
ラストシーンで宇宙から地球を眺めるスペースチャイルドは、その“新しい未来”の
象徴に違いない。人類の英知は計り知れない。だからこそ、その使い方を誤っては
いけない。エゴや争いの為ではなく、もっと“その外側に目を向けて”利用すべきもの
なのだと。今、人類は“次なる進化の段階(とき)”を迎えている。もう、その“新しい
未来”は目前に迫っているんだ。

追記:聞けば、宇宙を流れるように飛行するディスカバリー号は、人間の“精子”を
   イメージしたものだとか。そのディスカバリー号が、木星の亜空間の“穴”に
   突入し、「未来」という名の“赤ん坊”が生まれてくる。恐らく、この映画が放つ
   “無限の神秘性”は、そんな風に我々が気付かないところで計算され尽された、
   キューブリックの演出力によるものなんだろう。



楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100



最新の画像もっと見る

コメントを投稿