肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、観ました。

2007-04-01 22:51:05 | 映画(ま行)






監督: トミー・リー・ジョーンズ
出演: トミー・リー・ジョーンズ, バリー・ペッパー

 『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、観ました。
テキサスに不法滞在するメキシコ人メルキアデス・エストラーダは、親友ピートと
ある約束を交わしていた。それは「俺が死んだら故郷ヒメネスに埋めてくれ」と
いうもの。メルキアデスは、ある日突然、銃弾に倒れる。約束を守るため、彼の
遺体を掘り起こし、故郷ヒメネスを目指すが…。
 またしても“俳優出身”監督の力作誕生か。自身2度目の監督作にして、この
堂々たる風格と、人生の味わい深さ。また、高度な技術に裏付けされた多彩な
人間模様をいとも簡単に描いてみせる…、こりゃまたぶったまげたゼ、トミー・
リー・ジョーンズ。映画序盤は、時間軸をバラバラに分解した場面のピースが、
パズルのようにはめ込まれ、次第に明らかになってくる事件の全貌…、そこに
行き着くまでの展開は、上質なサスペンス映画のようにスリリングだ。一方、
中盤からは、老いた主人公カーボーイを挟んで、友の屍(しかばね)と、それを
殺した犯人の、奇妙な“ロードムービー”へと進展する。映画は、男同士の約束、
自分が犯した罪への落とし前(責任)、西部へ挽歌など、往年のサム・ペキンパー
作品を彷彿させ、中でも“死体”を引き連れ、旅を続ける件(くだり)は『ガルシアの
首』を連想せずにはいられない。長い旅の過程で、徐々に“腐っていく友”を
感じながら…、それでも友の死に向き合い、出来る限りの事をしてやろうとする
主人公の友情は、“この世で一番神聖なもの”のように感じられた。
 だとしたら、この映画を単に真っすぐな男気と、古風で硬派な生き様を描いた
“男の映画”として片付けて良いのだろうか。いや、確かに、そういう側面を
持った映画であるのは違いないが、ここではもうひとつ、例えばイーストウッドの
『ミスティック・リバー』のように…、アメリカ人から見た“イラク戦争の影”が
見え隠れする。それは他でもない、メルキアデスを撃ち殺した“国境警備隊の
若い男”の存在だ。侵入者を“暴力”で取り締まり、女や子供だからといって
容赦はしない。広い荒野の真ん中で、遠くの銃声が聞こえると、あたかも自分が
狙われているかと“錯覚”し、罪のない善良な男を射殺してしまう。その後、
自分の顔が割れ、主人公に問い詰められると「あれは事故だった。仕方なかった
んだ」と“自らの正当性”を主張する。その姿はまさに、今にして尚、“イラク
戦争の否”を認めようとしないアメリカにダブってみえる。一方、友との約束を
果たすため、その魂を故郷の地に送り届ける“主人公の良心”は、お金とか利害
関係を超えたところで、今我らが本当に成すべきことは何なのか??、そして、
主人公が成す“死した者への弔い”を通じて、大儀のために人命さえ軽んじる
“アメリカのイラク政策”を批判しているようにも受け取れる。ラストシーン、
ついに主人公は、それでも保身と弁解を重ねる若い男を一喝する。死んだ友に
対して「心の底から謝れ」と。。崩れ落ち、泣きながら、初めてやっと、殺した
相手に許しを請(こ)う若い男…、次の瞬間、彼の口から叫ばれた“その台詞”が
この映画のすべて…。そして、それが“これからのアメリカが進むべき行き先”で
あって欲しい‥‥。

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

★楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30★

★楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30★

★楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30★

★楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30★



最新の画像もっと見る

コメントを投稿