肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ミスト』、観ました。

2008-05-18 20:48:08 | 映画(ま行)
Mist_1_1a
監督:フランク・ダラボン
出演:トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン、アンドレ・ブラウアー、トビー・ジョーンズ

 『ミスト』、映画館で観ました。
激しい嵐が街を襲った翌日、湖の向こう岸に不穏な霧が発生していた。
デイヴィッドは不安に駆られながら、息子のビリーを連れ、隣人の弁護士
ノートンと街へ買い出しに向かう。3人がスーパーマーケットに入ろうとすると、
店内は大混乱。外では軍人が歩き回り、サイレンが鳴り続ける。すると、
一人の中年男が叫びながら駈け込んで来た。「霧の中に何かがいる!」と。
店外を見ると深い霧が駐車場を覆っていた‥‥。
 その日、オレは映画館で“映画を2本”観た。最初に観たのが『最高の
人生の見つけ方』、、そのタイトルにもあるように“最高の生き方”を問う内容。
実際、観終わって“生きる希望”を胸にして、映画館を後にした。が、くしくも、
その数時間後に観た今作『ミスト』は、何とそれとは対照的な映画だこと(笑)。
それまでの前向きに気持ちが一気に萎(な)えてしまい、希望の絶頂から
絶望のどん底へと突き落とされた。たった一欠(か)けらの希望の後も残さない
バッドエンディング‥‥、ホントにこれには参ったなぁ(苦笑)。新聞の宣伝
コピーには「震撼のラスト15分」とあったけど、ナルホド、こういう事だったのね(笑)。
 まぁ、その結末云々に関しては、改めて“ネタバレ欄”を作ってレビューの
最後に書くとして、ただし、この映画が“驚愕のどんでん返し”だけを売りに
した一介のB級ホラーかと言えば、決してそうじゃない。“密室劇”としての
趣(おもむき)と、じわじわと迫り来る恐怖からパニックに陥る“人間心理”に
絞った本編にも見所がいっぱい。正直、これまでオイラは何故にこんなに
スティーブン・キングの小説だけが次々映画化されるか、そのモテモテぶりに
首を傾げることが多かったのだが、今作に関しては、読んでもないのに(?)
“原作の秀逸さ”を実感する。むしろ、劇場映画というより“密室の舞台劇”として
やっても面白そう。少なくともオイラの中では、歴代スティーブン・キング
原作もののベスト3に入る‥‥、っていうか、(『ショーシャンクの空に』『スタンド・
バイ・ミー』などを除く)純粋なホラーものの中では、案外ベストムービーかも
しんないよ。
 さて、オイラがこの映画を推すのには、一つに、主人公らが置かれた“密室の
シチュエーション”の巧みさと、二つに、怪物の恐怖から徐々に追い詰められ、
常軌を逸していく“人間心理”に重きを置いたドラマ作りだ。まず、ここでは
単に“(密室の)閉ざされた空間”というだけではなく、スーパーの店内を使って
“ガラス張りの密室”を設定した。しかも、それに“深い霧(ミスト)”をリンクさせる
ことで、――外からは丸見えで、内からは何も見えない――、主人公らにとって
圧倒的不利な状況下を作り出した。また、スーパーに集まった人達になんて、
所詮は見ず知らずの他人だから、当然ながら固い結束もある筈もなく、やがて
言い争いが起きてくる。その時、パニックに陥った彼ら群集が“最後にすがり
付くもの”…、それが狂信的な信者が叫ぶ預言だとか迷信だとか、普段なら絶対
耳を貸さないオカルティックな宗教観――、いわゆる、“心の闇に住む魔物”に
蝕される。実は、この映画で一番怖いのは、窓の外にいる怪物なんかじゃなく、
人の内なる部分に潜む“心の闇”の方なんだ。それにしても、“(視界を塞ぐ)
霧”という副産物を使って、人間の“内なる弱さ”を引き出してくるあたりは流石。
改めてスティーブン・キング、恐るべし。
 (ここからはネタバレです。未見の方はご注意下さい。)ただし、最後のどんでん
返しについてはどうだろう??、恐らく、観る人によって意見が分かれるところ。
で、オイラは“蛇足”だと思った。深い霧に包まれた外の世界が、現代の“カオス
(混沌の時代)”を象徴しているとしたら、主人公らを乗せ、霧の彼方へ旅立っていく
一台の車は“ノアの箱舟”だろう。その行く手にあるのは、視界の開けた未来なのか…、
あるいは、このままの地獄が果てしなく続くのか…、観る側に問い掛ける形の
エンディングにした方が、この映画のテーマにもビッタリ合ってたと思うのだが。



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4 コメント

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Unknown (マーク)
2008-06-01 15:17:14
はじめまして、ときどき読ませてもらっています。
『ミスト』はボクも見ました。スティーブン・キングは秀作と駄作の差が激しいので、あまり期待しないで見ました。
触手のようなものが人を襲うシーンを見て、うわぁこれはB級だと思いましたが、その考えは途中で変わりました。
スーパーの中でのストーリーは人間ドラマであり、ここから映画のトーンが変わって行きます。書かれているように“密室の舞台劇”になりますね。
一般的に人間は、心理的な恐怖の方が、怖さを感じるようです。ボクはキングの作品では『ミザリー』が一番だと思っています。あれも怖い。
それから結末ですが、原作の結末は、書かれていたようだったようです。この映画を制作するときにキングに結末を変えると電話したら、キングはその方がずっと良いと言った逸話があります。
返信する
コメント、ありがとうございます。 (きのこスパ)
2008-06-04 23:09:27
> 原作の結末は、書かれていたようだったようです。
> キングに結末を変えると電話したら、
> キングはその方がずっと良いと言った逸話があります。

へぇ~、それは“驚き”です。
‥‥って、何が“驚き”かいうと、
原作の結末が、まだ他にあったってことです。
ボクはてっきり、主人公一行を乗せた車が霧の彼方へ
消えていくところでジ・エンドだと思ってました。
(ただし、それだと『鳥』の結末とややダブるかな(笑))
でもって、キング本人は、原作より映画の結末の方が
優れている、って??、
ますます“原作の結末”ってのが知りたくなりました(笑)。

まぁ、レビューと重複するかもしれませんが、
これが単純なB級ホラーであるなら、映画の結末で
何ら差し支えないと思うのですが、
作品を通してのテーマがキチッと成り立っているんで、
逆にあの結末で全体が見えづらくなっているように
感じました。

あッ、そういえば、キングが自身の小説の映画化で
もっとも気に入らない作品が、キューブリックの『シャイニング』だとか(笑)。
返信する
トリビアだお (やるお)
2008-12-02 11:54:22
>>もっとも気に入らない作品が、キューブリックの『シャイニング』だとか(笑)。

あれは監督との「思想の相違」が原因で、キューブリックが原作と違う結末にしたからキングが怒った。
キングは映画版とは別の結末のテレビ版「シャイニング」をつくったそうですよ
by町山智浩著
返信する
つまり、例えると (きのこスパ)
2008-12-04 20:36:53
ほほぉ~、
『シャイニング』はキングに何の了解もなく
キューブリックが原作の内容を変えてしまったってことですね。
つぅことは日本でいうところ、
『おふくろさん』における
森進一と川内康範の戦いみたいなもんですか。
この手のいざこざは何処にでもあるんですね。
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