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吉田健一「酒肴酒」

2009-09-14 | エッセイ

食べること、飲むことの喜びをゆったりと味わう―。うまい酒、うまい料理。文章そのものに酔い、読むことを味わう。“食”の幸せが溢れる名著。

吉田 健一
1912年東京生まれ。幼少のころから、外交官の父・吉田茂(のち首相)の任地に従ってイギリス、フランス、中国などで育つ。その後、ケンブリッジ大学に学ぶ。文芸批評、ヴァレリー、ロレンスなど、英仏にわたる翻訳、また随筆、小説などで多彩に活躍。1977年没

昭和60年初版ですから、この本に書かれているグルメに関しては、歴史を感じます。

だけど、吉田さんの酒と肴に関する、哲学を感じる本なのです。ここまで純粋に酒を(様々な種類)論じ、そこには、美女の出現もなく、何かしら風景などの背景もなく、ひたすら酒を論じるのである。そして、肴も同じく。特に、金沢、新潟方面はお気に入りのようだが、時折、九州、京都、神戸、呉…。

~道草をして、旅に出ている気分になるには、飲んだり、食べたりに限るようである。駅の売店でかけ蕎麦を食べていても廻りの眺めは目に入って、弁当売りの声を聞いているだけでも、自分が旅をしていることが感じられる。

あと、吉田さんは、ご自分で料理をしないので、その調理法がどうあるかは書くことができないのは、残念だが。女房コック論で、女房をもらったら、それ以前にも増して出歩くことが肝要っていうのは、宜しいですね。出費を惜しんではならない。と、妻を連れて方々歩くこと。屋台のおでん、焼き鳥から、、一流店の料理まで。大体、食べてうまいものがどんな味がするかを覚えさせる。味覚は働かせることで発達するのであって、とにかく連れてまわって損することはないと…。

この時代の方が、奥様にあれこれ美味しいものを食べに連れていくって、珍しいことだと思う。でも、そうして、毎日の食卓が味と、彩りが豊かになることを彼は十分承知していたのだし、結局は自分に良し、そして奥様にも、家事の解放と美食の喜びのような幸せがあると思うし。まあ、もらうべきは相手も食いしん坊であると都合がよいと。

それは、そうだ、小食で美容を気にして食べない人と、好き嫌いの激しい人とは、飲んでいても食べてもつまらないし、気兼ねすらするので、ゆっくりと味わえないし…。

食べるときは、食べ物の話に。純粋に旬の食材に対峙して、良い時を過ごしたいと思うのだ。

 



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