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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

星野道夫「森に還る日」

2008-07-31 | エッセイ
アラスカを見つめ続けた星野道夫が遺した膨大な写真と文章を新編集したMichio's Northern Dreamsシリーズ4作目の文庫版。深い森の中にいると川の流れをじっと見つめているような、不思議な心の安定感が得られるのはなぜだろう。ひと粒の雨が、川の流れとなりやがて大海に注いでゆくように、私たちもまた、無窮の時の流れの中では、ひと粒の雨のような一生を生きているに過ぎない。川の流れに綿々とつなが . . . 本文を読む

森博嗣「工学部・水柿助教授の解脱」

2008-07-30 | 小説
この本を小説といって良いのだろうか??一応、水柿助教授シリーズ完結編。 日常・逡巡・離脱…の筈が解脱。まあどこから読んでも、ばかばかしく、次々に些細な方向、否、多方面に話が逸れていくのが特徴であり、読者を、訳のわからない迷路に誘い込むのを目的とする、なんとも不思議な本である。 でも、私は、思ったよ。この、水柿君と妻須摩子さんの理想的な生活に…。 来る、夫婦二人の生活の活路を…。お互いにやりた . . . 本文を読む

大江健三郎「芽むしり 仔撃ち」

2008-07-29 | 小説
絶望的な“閉ざされた”状況にあって、疎外された少年たちが築き上げる奇妙な連帯感。知的な抒情と劇的な展開に、監禁された状況下の人間存在という戦後的主題を鮮やかに定着させた。   ノーベル文学賞受賞大江健三郎さんの本を初めて読みました。20代の初期作品。 1994年復刻版を図書館から借りましたが。今まさにこの本がページをめくられた形跡なし、新品のページをめくるドキドキ感を味わいながら… . . . 本文を読む

八束澄子「わたしの、好きな人」

2008-07-28 | 小説
少女が心をよせたのは、おとなの、男の人……。肩車からながめた夕焼け空。夜の駐車場で見つめた月。わたしのそばには、いつもあなたがいてくれた。   ホームドラマの決定版!みたいな、ほんわかしたお話。 生まれてすぐに家を出て行った母。 小さな町工場を経営する父と、母と入れ替えにふらっと住み着いたさやかの初恋の人杉田と意地悪な兄。 男3人に育てられ、天真爛漫に育ちでも、ちょっと、ハ . . . 本文を読む

桜庭一樹「私の男」

2008-07-27 | 小説
第138回直木賞受賞作 問題作だったため…。受賞にもれた、楊逸さんのワンちゃんは、真っ先に読んだが…。 ちょっと抵抗があり、敬遠していましたが、この一年で桜庭作品5作を読んで、そろそろ大丈夫そうかなあと、やっと、手に取りました。 欠損家族…って言葉。今、死語なんじゃないかと思うけど。「欠損のない人間なんていませんよ」淳伍の言葉に納得。 桜庭さんは、島根出身なんだけど…。 疑惑の舞台は、北 . . . 本文を読む

戸田奈津子「スターと私の英会話!」

2008-07-26 | エッセイ
“映画で英会話”の決定版『男と女のスリリング』パート2。字幕翻訳の第一人者がそっと教える、スターのとっておきエピソードとイキイキ英会話のヒント。「神戸ビーフ!」と箸でお皿を叩いて催促するトム・クルーズ。部屋にこもってギターを爪弾くブラッド・ピット。字幕翻訳の第一人者がそっと教えてくれるスターのとっておきエピソードと、イキイキ英会話のヒント集。話題の映画86本を、主演スターごとに収録した“映画で英語 . . . 本文を読む

荻原浩「ハードボイルド・エッグ」

2008-07-25 | 小説
たっぷり笑える。1回泣ける。ワンダフルなミステリー。 中学の頃に読んだレイモンド・チャンドラー小説の主人公フィリップ・マーロウのようなクールな探偵になることを心に決め、とうとう脱サラして事務所を開いた最上俊平。だが、来る依頼は動物の捜索ばかり。おまけにとんでもない婆さんを秘書に雇うはめになり…。   出だしから、笑える。荻原さんは、いいなあ。 人生は、かっこいいものじゃない。いつも . . . 本文を読む

恩田陸「三月は深き紅の淵を」

2008-07-23 | 小説
その本はたった一人にだけ、たった一晩だけしか他人に貸してはなりません。かつて一度でも、むさぼるように本を読む幸せを味わったことのある人に。表題の本を巡る4つの珠玉のミステリー。 恩田陸初期の作品。それぞれに恩田さんの魅力満載の宝石箱のような作品です。 ・1章「待っている人々」~鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に二泊三日の招待を受けた。彼を待ち受けていた人物たちから聞かされたの . . . 本文を読む

北村薫「空飛ぶ馬」

2008-07-22 | 小説
北村薫氏のデビュー作。 五つの物語からなる連作小説。 日常生活の中に潜む、不可解な謎。隠された真相に迫るのは、噺家の円紫師匠と女子大生の名推理。   「織部の霊」~大学教授加茂先生の少年時代の謎に迫る。焼き物。骨董。蔵。書物。…円紫師匠と私の出会いも良い感じです。落語のお噺は「夢の酒」また、これが、いい話なんだわ~。   「 砂糖<st1:rai . . . 本文を読む

光原百合「十八の夏」

2008-07-21 | 小説
四つの花が彩る珠玉の連作ミステリー・第55回日本推理作家協会受賞作(短編部門) 「十八の夏」…恋愛アンソロジーかなんか本でこのお話は既読でした。 朝顔をテーマに、不倫を扱ったお話。桜咲く美しい日本の川の風景からはじまる。不倫相手の息子と女性の交流…。 朝がほや一輪深き淵のいろ…   「ささやかな奇跡」…金木犀の香りが便所の匂いって…。太郎の言葉に…。 ああこのお話。一番好き、 . . . 本文を読む

吉田秋生「蝉時雨のやむ頃」海街diary

2008-07-21 | 漫画
海の見える街、古都・鎌倉を舞台に清新なタッチで描く、家族の喪失と再生のものがたり。 男の部屋で朝を迎えた三姉妹の次女・佳乃(よしの)に父の訃報(ふほう)が届いた。母との離婚で長い間会っていない父の死に、なんの感慨もわかない佳乃は…。鎌倉(かまくら)を舞台に家族の「絆(きずな)」を描いた限りなく切なく、限りなく優しい吉田秋生の新シリーズ!!   3姉妹、ん…。と思いきやもう一人、母親違 . . . 本文を読む

諏訪哲史「アサッテの人」

2008-07-18 | 小説
「ポンパ!」 突如失踪してしまった叔父が発する奇声!アパートに残された、叔父の荷物を引き取りに行った主人公は、そこで叔父の残した日記を見つける。現代において小説を書く試みとは何なのか? その創作の根源にある問いに、自身の言葉を武器に格闘し、練り上げられていく言葉の運動。精緻にはり巡らされた構造と、小説としての言葉の手触りを同居させた、著者の大胆な試み。読書家としても知られる各氏をうならせた、驚異の . . . 本文を読む

森博嗣「Flutter into Life」

2008-07-17 | 小説
永遠の命を持ち、戦い続ける子供たちキルドレ。戦闘機乗りのクリタは、上司クサナギの幼なじみによって、彼女が今や、キルドレでなくなっていると知らされる。 フラッタ・リンツ・ライフ…シリーズ4巻目。 今回の各章冒頭引用文は「海からの贈物」アン・モロウ・リンドバーグです。 主人公は栗田ジンロウ。函南の前任者。 物語も佳境に入り、流れるような文章は、変わらず。草薙と関わった人物像が浮かび上がっていく . . . 本文を読む

森博嗣「Down to Heaven」

2008-07-16 | 小説
戦闘中に負傷して入院、空を飛べず鬱屈した日を過ごす草薙。組織にとって守るべき存在となりつつある自分になじめないままに―そしてある日「少年」に出会う。真っ黒な澄んだ瞳。その中に、空がある。そこへ墜ちていけるような。スカイ・クロラシリーズ第三弾。 戦闘機に乗ることに無上の喜びを感じる草薙。『ナ・バ・テア』に続き、生と死そして成長を見つめる.   各章冒頭引用文は「イワン・イリッチの死 . . . 本文を読む

森博嗣「None But Air」

2008-07-15 | 小説
地上で生き、大空で戦う人間たち。空でしか笑えない「僕」は、飛ぶために生まれてきた子供―大人になってしまった男と、子供のまま永遠を生きる「僕」が紡ぐ物語。「スカイ・クロラ」シリーズ第2弾   この回の主人公は、草薙水素。女司令官のエースパイロット時代が明かされる。 今回の各章冒頭は、「レオナルド・ダ・ヴィンチの手記」より引用です。 一巻の主人公函南優一との思考感覚の類似に注目。 . . . 本文を読む