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角田光代「紙の月」

2013-01-20 | 小説

わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が約1億円を横領した。梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。梨花は果たして逃げ切れるのか?―--自分にあまり興味を抱かない会社員の夫と安定した生活を送っていた、正義感の強い平凡な主婦。年下の大学生・光太と出会ったことから、金銭感覚と日常が少しずつ少しずつ歪んでいき、「私には、ほしいものは、みな手に入る」と思いはじめる。夫とつましい生活をしながら、一方光太とはホテルのスイートに連泊し、高級寿司店で食事をし、高価な買い物をし・・・・・・。そしてついには顧客のお金に手をつけてゆく

梨花以外にも、元彼の妻。高校の同級生。お料理教室で知り合った友人(離婚経験者)とその娘。独居老人の家族関係。

など周辺の人々の金銭感覚なども含め。この小説には、一人ひとりの人間のお金にまつわる考え方。あるいは、ごくごく普通に暮らしていた人間が、一歩間違えば、人生を狂わす力があるお金という紙幣について多様に描かれています。

梨花と夫の関係も、特に波風があるわけではないのに、お互いの気持ちを伝える努力をしない関係をずっと続けている。そんな、夫婦関係もあるのかなと、思い巡らす。

子供がいても、いなくても…。夫婦。友人。そして若い恋人とも。二人の関係性という上で、どの人間も、お互いの気持ちがすれ違っているが、それを話し合うと言うことがなく…日常が過ぎていき、気づいた頃は時すでに遅し…の感がある。

角田さんの小説は、読みやすく、しかもこの事件の結末は描かれない。読者一人ひとりの胸に今後の行方がかかっているのだが。

なんでも、スッキリしたいと思う私は、様々な改善ほうほうで、一人ひとりの人物の未来を考えたくなる。

それにしても、不安定な社会に。不穏な小説は気が滅入るな。

元気の出るお話を読まなきゃ

 

 



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