今回も、当塾メルマガで紹介されました、入試に出題された本シリーズの第3回です。よろしければ、第1回、第2回 の記事もご覧下さい。いろいろな先生方が書いておられます。
今回は6冊です。バラエティーに富んだものが集まりました。
■ 『寝ながら学べる構造主義』 内田樹 (文藝春秋 725円)
寝ながら学べる構造主義 文藝春秋 詳 細 |
哲学的な文章は、中学生に留まらず高校生でも日常生活や普段の読書からかけ離れた近付き難い印象を与えるかもしれませんが、あらかじめ専門的な知識や考え方を身に付けていなければ手に負えないという訳では必ずしもなく、与えられた文章をきちんと追えるか、そのなかで考えられるかということに課題は集約されるようです。2004年度、都立新宿高校の入試問題になった本書も、何となしに用いている「ものの名前」がもつ構造を一歩踏み込んで考えてみようというものであり、決して突飛な事柄を扱ったものではありません。流行りの哲学をものにしようなどと大上段に構えることなく、気安いタイトルがついた本書は、私達の身の回りの出来事について考えるきっかけを与えてくれると言えるでしょう。
■ 『夏の庭』 湯本香樹実 (新潮文庫 420円)
夏の庭―The Friends 新潮社 詳 細 |
過去5年間で16回も出題された作品。城北埼玉や世田谷学園で出題されました。近所の老人が死ぬところを目撃するために、見張りを続ける少年達。その無邪気な好奇心や冒険心、そして子どもから大人への成長というテーマは、懐かしさを感じさせます。映画にもなった作品で、ストーリー的にはスティーブン=キングの『スタンド=バイ=ミー』に似ていて、少年期の底抜けの明るさ、奇妙によぎる不安などを絶妙に描いていると思いました。
■ 『読書力』 齋藤孝 (岩波書店 735円)
読書力 岩波書店 詳 細 |
声に出して読みたい日本語」「理想の国語教科書」「三色ボールペンで読む日本語」など次々とヒットしている著者の読書に関する考えをまとめたものです。なぜ本を読まなければならないのか、ということから始まって、読書力の鍛える基準を“3~4年間で文庫100冊、新書50冊”としています。人々が新聞や本を読まなくなったといわれて久しいのですが、かつての日本の強みは読書力によって支えられてきたとまで言い切っています。また、せっかく読むのだから、なるべく本の内容が自分のプラスになるように活かす方法をいろいろと紹介しています。
■『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 森絵都 (角川文庫 460円)
アーモンド入りチョコレートのワルツ 角川書店 詳 細 |
クラシックのピアノ曲を背景にした3作品が収められています。入試で出題されたのは『少年は眠る』という作品です。夏休みに年齢の違う親戚の子供たちが別荘に集まり、2週間をともに過ごします。そこでの出来事を綴った物語です。リーダー格の少年は、日々の日課を強引に決め、その他の子供たちはそれに従うしかありません。しかし、その強引さに主人公やその他の子供たちは疑問や不満を持ち始め、ついに…。その他の2作品に関しても中学生を主人公にした、素晴らしい作品です。来年も出題される可能性は大きいのではないでしょうか。
■ 『海の物語』 灰谷健次郎 (角川文庫 599円)
海の物語 角川書店 詳 細 |
主人公は漁師の父親と二人で暮らす少年健太。健太は将来父のような漁師になることを夢見ており、船に乗り込み父親の手伝いをしています。そんな健太と交流があるのは都会からの転校生可南子と担任の紀子先生。これらの設定は一歩間違えば陳腐な設定になりがちにも思えますが、彼女らの存在が非常に効果的に個性的に描かれていますので、全く陳腐さは感じられません。むしろ必要不可欠で当然の存在のように思えます。登場する大人達は生活していく上での現実的な問題をきれい事ではなく大人の視点で考えていきます。子どもはそんな大人達の考えをそのまま受け入れることはできず、それに対抗し子どもたちの正義を貫こうとします。考えの異なる大人と子どもが同じ体験をしていく中でお互いの理解を深めるというのが灰谷健次郎の作品の指針であり、本作品では漁船に乗りこみ、漁業を通じてその理解を深めていきます。また漁業問題や海洋汚染問題が大人と子どもの共通テーマとして分かりやすく提示されています。質の良い邦画を見た後のようなほのぼのとした気持ちになり、きれいな海を守ろうという気持ちにさせられる非常に上質な小説です。(横浜隼人高校平成16年度入試出題)
■『この本が世界に存在することに』 角田光代 (メディアファクトリー1470円)
この本が、世界に存在することに メディアファクトリー 詳 細 |
泣きたくなるほどいとおしいと紹介されていた一冊で読んでみようと思いました。“本”をテーマとした9つの短編物語集です。その中の“さがしもの”は、余命があと少しの祖母から、本を探すように言われた主人公の話。“彼と私の本棚”では、恋人と一緒に住むことで、同じ本を読み、それによって互いに共有していた同じ光景。それが別れにより無理やり切り離される・・・。どの小説も本への愛情がこもった一冊でした。(東京都立日比谷高等学校出題)
■■ ランキング ■■
お読みいただいてありがとうございます。少しでも参考になりましたら、応援のクリックをいただけるとうれしいです。
人気blogランキングへ 2位です。
にほんブログ村 本ブログ 現在1位です。
で、ごくたまに、こういう類の作品も読むのですが、自分が大人だからか、今の社会の風潮に納得いっていない部分があるからか、何となく違和感を持つものもあるんですよね。その度に、歳を感じたり、世の中から取り残された気分になったりしています。(笑)
もちろん好きになる作品もあるので、時間があったらたくさん読んで、自分の好みの作家を見つけたいなぁ。湯本さんの本は読んだことがないので読んでみたいです。
(子供が春休みなので、なかなかコメントできずにすみません。)
でも、大人になったら少しは素直になってきた今日この頃?人の話も聞くものだ、という事がわかってきました。「夏の庭」、子供達が「入試に良く出るんだってよ。」と言ってました。
入試によく出る本、大変参考になりました。
「夏の庭」はずっと読んでみたいと思っていましたので、さっそく買ってみます。
うん、きっとそうだ、学校から薦められるのはみんな難しそうだったり、超まじめなお話だったような気がして来ました。
ところで、そちらは春休みですか。どうぞエンジョイして下さいね!
何を隠そう私も、同じがいやという子どもだったので、今苦労しております。
やっぱ、同じだわ~の、ハハでした。
ぜひこれからも時おりお付き合いくださいね。ありがとうございました。