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降って来るもの

写真と散文とぽえむ

恙なき日々で・・

2018-04-12 06:20:06 | 随想

                      恙なき日々で・・

 

 新しい暮らしの始まりを告げる目覚めは午前四時過ぎにやって来た。新居での第一日目の今日は、”朝は必ず遣って来る!”の前提に支えられて明けようとする早朝に迎え、何一つ慣れのないぎこちない朝を始める。

 昨日、夕方から50%の確率で雨が降り出す!の関西の気象予報を夫婦の念力で蹴飛ばし、約束の14時から時間通りに開始された「引っ越しの堺」の屋移りは、キビキビと当にプロ仕様で動く若者二人の小気味よさと、爽やかさで好印象を振り撒く仕事ぶりで滞りなく18:30に終了。

 僕は旧居に留まって最後の荷物が積み込まれるのを見届け見送った。部屋に戻ると冷蔵庫がなくなった空間や、書棚が運び出されて所在なく佇む一角を見ながら、此の場所に居た年月の彼是を走馬燈のように廻らす。いや、様々の日々の出来事が走馬灯のように廻った。切なくて愛しくて僕は掃除機を手に念入りに其処に残されている思い出を吸い取る。僕の記憶に改めて刻印するかのように一心不乱で。

 壁に掛った家族のここから生まれた36年間の膨大な場面は、其の儘で(多分同じように新居には同行しないので)暫くここに置かれる。子供たちは赤子から成人へそれぞれの成長過程をたどり、結婚式から孫の誕生まで記録されている。女房の還暦祝いの集合写真まで(それから後に6番目の「蒼唯」と7番目の「新」が生まれた)永遠の笑顔を見せて其処に居る事になるのだが、此れからはどの様に”終活”を進めてゆくのかが大きな、切ない課題として残されてゆきそうな気配がする。

 家族六人の初めての夕食はお祝いを兼ねて「スキヤキ」に。準備ができたから帰って来て!の女房のメールで我に返り、薄暗くなり始めた徒歩五分の道を感慨深く新居へ向かって歩いた。息子たちは人生の後半生を此処からスタートさせる。二人の孫は此の新居がスタート台になる。そうして僕と女房は、とりわけ僕にとっては残りの人生を過ごす終の棲家になる。

 次々に替わる環境の中で人は目まぐるしく変貌してイノチを全うし、軈て約束の元のjinenに戻ってゆくのだ。夜明けとともに始まる第一日目は、恐らく希望に満ちた満帆の順風を孕んでの船出になる。今日だけはその祝い風を受けて家族六人それぞれの一歩を記そう。何時でも両手を合わせる六地蔵さんを心に浮かべて”恙なき人生を・・”と祈りながら。

                           2018 04/12 06:20 まんぼ

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