TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

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野坂徹夫コラージュ展@ギャラリーゴトウ

2013年01月17日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 何を使ったコラージュなのか、案内葉書には書いてありませんでした。その正体が分かったのは、作品たちの前に立った時。近づくと、なんともいえないほんわかとしたものが伝わってきました。コラージュされていたのはたくさんの日本の「古布」だったのです。
「古布」といえば、洋服や雑貨に使われている姿をよく目にします。この場合はリフォームで生まれ変わっても、人の身体に纏われているところは以前と変わりありません。けれども、野坂さんの場合は違います。「古布」たちを、長年慣れ親しんだ人の身体から、ちょっとおいとまさせてあげたのでした。チョキチョキとハサミを入れて、おめかしさせて、心機一転。それぞれ、別の形での別の役割を担ってきた「古布」たちを、キャンバスという新鮮な舞台へと呼び寄せてキャスティング。人の身体から開放されたことで、「古布」たちに潜在していた存在感が開放されたかのように見えてきます。
 藍色、茜色、柿渋色、藁色。「古布」たちに見られる色は、おおまかに分けると素朴な4種。けれども一口に藍色といっても似て非なる色合いや風合いが個々にあります。そして、人の体温のようなものもそれぞれが携えています。理由は、生い立ちにあるのではないでしょうか。植物や繭から糸を紡いで、染料につけたり乾かしたりしながら色をつけ、パッタンパッタンと織っていくという、何人もの人の手によるゆったりとした工程。さらに、布として何人かの人の身体をに触れてきたという生き様。そういったさまざまな経歴と個性を持つ「古布」たちのキャスティングは容易ではないはず。細やかな心遣いが要求されるものなのではないでしょうか。
 人に纏われるという脇役から、人に見つめられるという主役へとエスコートされた「古布」たち。野坂さんによってキャスティングされた舞台の上で、少しはにかみながらもみんな堂々と鑑賞する人たちを見つめ返しているように見えました。
 野坂さんは、この日の朝、青森からの新幹線の車中で詩をつくられたとのこと。その詩は、フランスでもご活躍されている姫田大さんが奏でるフルートに合わせて、会場で披露されました。ゆったりと置かれた言葉と言葉の間(ま)や響きや余韻には、「古布」たちが向き合って来た長年の旅路への敬意が込められているようでした。



「古い布」 野坂徹夫
経糸、緯糸、直角に交差し
織りかさねられる
くりかえしくりかえし
幾千ものとき
いまここ
集められた布の地位さな声を聴く
(後略)

 ところで、野坂さんは作家としてだけでなく、「国際芸術センター青森」の館長も務められることになったそうです。「古布」たちと同じように、新しい舞台でも新たな存在感を示してくださるに違いありません。芸術創造の体験や鑑賞の機会を提供してくれたり、アーティストと市民の交流を図るための場なのだそうです。青森を訪れる際にはぜひ。(http://www.acac-aomori.jp/)(山本理絵)

※ギャラリーゴトウ(東京都中央区銀座1-7-5 銀座中央通ビル7階)http://www.gallery-goto.com/


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