TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

「注目の現代作家と画廊散歩」
「我がルオー・サロン」
「心に響いた名画・名品」
「アート市民たち(コレクター他)」

日立ハイテク美術会展 @ギャラリーくぼた

2013年08月29日 | 気になる展覧会探訪
 春陽会に属している奥田良悦さんが、ずっと描き続けていらっしゃるというアリの「ド」アップの絵が見たい! という思いを晴らすことは、今回のグループ展では叶いませんでした。奥田さんは今回、アリを封印。抽象画ばかり4点を発表されたのでした。
 箔を貼って化学反応による変色を試みた奥田さんの作品からは、勢いや重厚感がずっしり。会場の中でも堂々とした風格を放っていました。眺め続けているとちょっとずつ動き出しそうな、静かな生命力の気配も感じます。色合いには思わずじーっと見つめてしまう味わいが。
 その色は、箔の化学反応によって創り出されたものだそうです。狙ったところで色を固定させるため、化学反応がそれ以上進まないように止めさせる薬品の調整は、奥田さんの奥義だとか。さすが元・技術者です。
 とはいえ、やっぱり奥田さんが追求してきた従来のアリ作品を見たくてたまりません。でも、この抽象画に感じられる生命力の気配に、ふと思ったのでした。もしかしたら、これは一見抽象画、そのじつ、アリの細胞の「ド」アップ具象画なのではないでしょうか。次回は、細胞レベルまでアップにはしないアリの表情が分かる作品が展示されることを、楽しみにしています。(山本理絵)

                       (真ん中が奥田良悦さん)

早川俊二 『オリーブ油差し、陶器の瓶、木匙』

2013年08月29日 | T・Yアートコレクション
画家は若い頃パリに渡り国立美術学校でデッサンから学び直した後、30数年に亘ってこの地に留まり作家活動を続けている。
その作品の魅力は自ら作り上げた独自の絵の具による堅牢で重厚なマチエールにある。
描かれているのは機械油差しや珈琲挽き、リンゴや梨など身近なもの、或いは女性像などであるが、これら描かれた対象物と取り巻く空間が一体となって不思議な世界を築きあげている。

この作品はオリーブ油差しや陶器の瓶が描かれているが、繊細で深みのある空間描写が美しい。画家が描こうとしているのは、この余白であり、空間に違いない。

舞踏家田中泯とフランシス・ベーコンの現代美術

2013年08月18日 | モダンアート
先日、現代舞踏家田中泯のトークショーを観ながら、「画家ベーコンを踊る」と題したテレビ番組のことを思い出した。
フランシス・ベーコンは英国を代表する現代美術の画家である。作品は難解である。どちらかというと気味悪い顔や、暗く、重く、不安な作品が多い。絵に表面的な美を求める人には不向きかも知れないが、20世紀を代表する画家と評されている。


 
 番組では、田中泯はベーコンの絵と向き合いながら、絵がわかるとかいうことではなく、引き取ったということだと語っていた。そして作品を前に素裸で踊るのだが、次第に気持ちが高揚し、叫び、泣いていた。ベーコンとの最初の出会いは30年前、師の土方巽から絵を見せられた時であったという。



 ベーコン没後20年の今年、東京国立近代美術館から始まったフランシスベーコン展は現在豊田市立美術館を巡回中である。ベーコンは人間を描いている。不安を描いている。戦争体験で多くの死を目にして来たことが意識の根源にあるのだろうか。その絵には迫ってくるような存在感がある。観る者の心に突き刺さってくる絵である。しかし、描かれている世界は悲劇的だが、僕はそこに微かな希望を感じる。
 





米国ハドソンヴァレーで観たシャガールのステンドグラス

2013年08月01日 | モダンアート
フェイスブックに、知人のご家族Sa.Tさんがフランスの地方都市ロレーヌの大聖堂とシャガールのステンドグラスの写真を掲載された。特にステンドグラスが素晴らしいとのメッセージを見て、2年前にアメリカで見たシャガールのステンドグラスのことを思い出した。



 ニューヨーク、マンハッタンの北に位置するハドソンヴァレーは、緑が美しい渓谷である。ここにはかつてロックフェラー家が3代にわたって暮らした豪邸があり、その敷地の一角にユニオンチャーチという教会がある。小さいが美しい教会だ。この教会の礼拝堂に足を踏み入れると、正面と後方にマチスとシャガールのステンドグラスがあり、外からの光に輝いていた。
特にシャガールのステンドグラスはブルーの色が美しい。シャガールのステンドグラスの一部


礼拝堂内部とシャガールのステンドグラス