TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

「注目の現代作家と画廊散歩」
「我がルオー・サロン」
「心に響いた名画・名品」
「アート市民たち(コレクター他)」

日本伝統工芸展などで活躍の陶芸家神谷紀雄氏

2006年04月21日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 4月21日から銀座和光で神谷紀雄展が開催されている。何年か前、千葉のアトリエでの桜の花見会にお招きいただいたことがあるが、久し振りにお会いすることができた。神谷紀雄氏は栃木県益子のご出身で、日本伝統工芸展などで作品発表をしておられるが、現在千葉でご活躍で陶葉会代表でもある。

 作品は椿や梅、葡萄や秋海棠などを鉄絵銅彩で描いた壺や皿など。多分長屋門のあるご自宅の庭に咲く植物をテーマにしているのだと思うが、特に葡萄色や深い緑の色が美しい。茶碗や陶匣など小品も温かみのある作品で、神谷氏のお人柄が滲んでいる。(山下透)



手塚雄二花月草星展・・伝統的な花鳥風月とは違う深い精神性

2006年04月20日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 私が代表を務めるアートNPO推進ネットワークは、手塚雄二展の支援というか、展覧会に先立つ講演会の主催を引き受けるなど若干のお手伝いすることとなった。

 私のコレクション暦も30年近いが、現代美術中心であり、日本画作家の作品も所蔵しているとはいうものの、いわゆる伝統的な花鳥風月の日本画には余り関心を持ってこなかった。しかし、今回手塚雄二作品をじっくり見させていただき、何か新しい発見をしたような心境である。


(写真左は手塚雄二ご夫妻とアートMPOボランティアメンバー、右は1988年作品)

 展示作品は1980年の卒業制作作品「夢模様」から「花不動」~「星の河」などの新作までの約60点とのこと。
 日本画のいわゆる花鳥風月の世界を想像していたが、少し違うと思った。美しいものをただ写し取るというのではなく、目に見えないもの、何かもっと深いものを表現しようとしているように見えた。多分目に映る美しさではなく、作家の内面の精神的なものを描こうとしているのだろう。色彩も繊細で深さがあり、知らず知らず引き込まれてしまった。

 手塚雄二氏とは初対面であったか、真面目で実直そうなお人柄も好印象であったし、作品も想像以上に良かったので、いささかお手伝いできたこと嬉しく思う次第である。(山下透)

透明感ある独特なマチエールが印象的な早川俊二展

2006年04月15日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 4月11日(火)より伊藤厚美氏のアスクエア神田で見応えある展覧会が開催されている。初日に伺ったのに、大半の作品に赤札がついていたのに驚く。作家はパリ在住作家早川俊二だ。
 描かれているのはコーヒーポット、オリーブ油差しなど日常生活のなかの身近なもの、梨などの果実、そして女性像である。 特に、深い観察眼と確かな描写力を感じさせる静物作品はどれも存在感があって心に残る。そして何より印象深いのは、ポンペイの壁画を思わせるような独特のマチエールだ。こんなに堅固で、しかも透明感のある絵肌の作品には余りお目にかかったことがない。技術は勿論だが、絵の具を自らの手で作るといったたゆまぬ研究と努力に裏打ちされた成果なのであろう。

 作家とは2004年と今回お話する機会があったが、芸術についての明快な考察、絵画制作に向かう自らの姿勢や技術などについての強い自負を感じさせる。パリに渡って30年、独自の絵の具作りも含め西洋絵画を超えようと研鑽を重ねる生き方は、まさに求道者そのものである。ふと、神に近づかんがためにひたすら絵を描いたのではないかと思われるゴッホを思い出す。
 作家は20世紀美術は死に瀕しているという。現代美術への見方は小生と同じではないが、是非その信ずる道を突き進み、多分目指しているであろうセザンヌの世界をを極めていただきたい。
 祈!ご活躍。(山下透)




閑々居北條和子氏熱い想いの『馬場伸子花の譜』展

2006年04月15日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 北條和子さんとは長いお付き合いになる。亡き妻と二人鎌倉のお宅のお茶会に誘われたり、一緒に庭の竹の子を掘ったりと思い出がたくさんある。その北條さんが画廊『閑々居』で扱っているのは日本画である。それも所謂伝統的な花鳥風月の世界ではなく、現代に生きる新しい日本画だ。作家も斉藤典彦、間島秀徳、武田訓左、菊池武彦など、質の高いいい作家ばかりだ。普通の人にはちょっと難解な絵が多いが、それだけに画廊主としての眼と見識を感じさせる。

 その北條さんが熱い想いで育てようとしている作家がいる。馬場伸子だ。4月13日から始まった花の譜展の、藤の屏風や染井吉野、山桜などの作品はなかなかのものだ。作風は目の前にある美しいものをそのまま写し取ろうとする伝統的日本画である。小生など好みが現代美術であるから、うっかりすると見過ごしてしまいかねない世界だが、よく見ると相当な技術なのだろう、花びら一枚一枚が見る者を惹きつける。

 最近の若い作家の現代美術を見ていると、ただ感性に流されたようなものが多く、がツンとくる作品が少ない。やはり基本に忠実に描くということがまず重要であって、そのことを極めるなかに自分の内なる世界が生まれるのだと思う。そういう意味で成長が楽しみな作家である。北條さんの益々のご活躍をお祈りしたい。(山下透)


熊谷守一の曾孫、藤山10代目熊谷和彦さんのこと

2006年04月13日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 熊谷和彦君は損保時代の小生より幾つか若い同僚である。営業畑で活躍してきた後、現在システム関連部門に籍を置いている。この4月、久し振りに会い、話しする機会があった。
 実は彼は熊谷守一の曾孫である。現代作家の多くに影響を与え、美術愛好家の大半がその素晴らしさを認める大きな存在である。作品『やき場の帰り』など、傑作というか作者の魂を感じる絵だ。

 熊谷和彦君が仕事以外のもう一つの名刺をくれたが、肩書きが『屋号藤山10代目』となっている。藤山というのは熊谷家の屋号だ。岐阜県中津川市付知(つけち)の名家である。和彦君は熊谷守一の3代後、つまり本家10代目の当主だ。現在熊谷守一記念館はお嬢さんで画家の枢かやさんが守っているが、和彦君も熊谷守一のことを知る数少ない一人だ。彼は「熊谷守一の世界のよき伝承者になりたい」と語ってくれた。(山下透)