TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

「注目の現代作家と画廊散歩」
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「アート市民たち(コレクター他)」

早川俊二長野展に駆けつける、読売新聞芥川喜好氏の講演も盛況

2015年06月14日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
パリで活躍する画家早川俊二の長野展が始まった。会場は長野市の北野カルチュラルセンター。この展覧会がユニークで意義深いのはプロの画廊や美術館ではなく、出身地の友人たちの力で実現したことだ。私もアートNPOの旗を揚げて活動した時期があり、そういう観点から新潟展実現に向けての支援をしている。そんな訳で昨日、数人の友人たちと応援に駆けつけた。展示作品は1階から3階まで65点、描かれた人物や静物が空間と溶け合って見るものを惹きつける。


中央は画家早川俊二ご夫妻、左端全国実行委員会副事務局長奥田氏


日本での巡回展のため新たに制作された新作の一部

この日、読売新聞編集委員でもある美術評論家芥川喜好氏の講演会があった。芥川氏はかつて早川氏の作品について「・・静物画とは随分違うもののように思う。さわさわと空気の粒子が手に触れんばかりに粒立って視界を浸している。その中に影のように壺はあらわれる。むしろ、空気の粒子がそこだけ壺のかたちに凝集して周囲と連続して・・」と記していたが、この日は「なぜパリにいるのか、なぜこのような絵を描くのか、なぜ自由なのか」などの切り口から講演、早川氏のことを稀有で驚異の画家と絶賛。講演内容も「自分の力の内にあって、自分の自由になるものに全力を注ぐこと」など哲学的で味わい深かった。

講演する美術評論家芥川喜好氏

この展覧会を企画し、ここまで引っ張ってきた事務局長の宮澤氏とも歓談したが、この展覧会を本気でやる気になったのは、彼の母上が「早川さんのお母様に展覧会お見せできたら嬉しいよね」と語るのを聞いた時であったという。いいお話であった。展覧会のご成功を祈りたい。

左・・長野展実行委員会事務局長宮澤栄一氏


珈琲タイム、東京から駆け付けた友人達と善光寺界隈名物のメロンパンを

久しぶりの画廊散策、ギャラリー椿「高松ヨク展」と不忍画廊「中佐藤滋展」、とても良かった

2015年06月10日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
私はギャラリー巡りの達人たちのように一日にたくさんの画廊を歩くことはない。何軒か覘いたらゆっくり珈琲かワインを飲むのを楽しみにしている。昨日はギャラリー椿の高松ヨク展と不忍画廊の中佐藤滋展に絞って出かけたのだが、予感が的中、いずれもいい展覧会であった。

高松ヨクは初めての作家であったが、とても惹きつけられた。作品「クリストゥスの少女」はルネッサンス期の中世の絵画を見るかのようであった。「幻想モナリザ」もそうだが、模写した作品の上からオリジナルな部分を描き加えてある。相当技術的な研究を経てのことであろうが、どれも薄塗りを重ねた繊細な作品であった。しかし、この作家の本領は幻想的世界というか、シュールレアリズムにありそうだ。創造力が豊かなのであろうか、描かれたテーマも場景も様々で面白い。しかも、どの作品もシュールでありながら美しい。夜半に、書斎でこんな絵を眺めながらブランデーでも飲んでみたいものだ。



中佐藤滋は元々好きな作家である。10年以上前に1点購入したことがあるが、テーブルの上の電燈の傘や自転車などが過ぎ去りし日への郷愁をそそる。「サマータイム・ブルース」と題する今回の展覧会には、40年以上前の初期油彩や昭和会賞に挑戦した抽象的雰囲気の作品も並んで、見応えある。自画像らしき作品はどれもユーモアにも溢れ、楽しい。しかし、私が特に気に入ったのはここに画像を掲示したモノクロの作品だ。中央のモノトーンに描かれたテーマと、引っ掻いたようなマチエールの余白の部分とがバランスよく響き合って、心地いい。それにしても不忍画廊の展覧会はただ作品を見せるというだけでなく、工夫があって面白い。

三浦 康栄展@ギャラリー銀座一丁目

2015年06月09日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩


静物画のほか、壁の一面には裸婦、別の一面には洋服を着た女性、別の一面にはモノクロの裸婦。どの作品にも背景描写はありません。けれども、背景はいらないと感じさせるような雰囲気が漂っているように思いました。それはきっと、描かれている女性そのものの内面が漲っているからではないでしょうか。状況や暗喩の手を借りる必要など一切不要。そういうものに頼らなくとも、女性そのものの存在感だけで、もう充分。余計な情報にあふれている今、惑わされずに本当に大切なものを見失ってはいけないことをも、あらためて思い出させてくれます。色も削ぎ落された、墨だけの作品には、いっそうそれを感じます。そして、背景描写のない背景に向かって、女性の内面が波を投げかけていることも、背景には表れているように思いました。次回も楽しみです。(山本理絵)