TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

「注目の現代作家と画廊散歩」
「我がルオー・サロン」
「心に響いた名画・名品」
「アート市民たち(コレクター他)」

抽象絵画は感性と論理のせめぎ合い

2013年06月20日 | 気になる展覧会探訪
 及川伸一氏の個展。あいにくの雨ではあったが、ご案内を頂戴しながら失礼することが多いので、思い切って出かけた。会場は日本橋のギャラリー砂翁。展覧会名はAndante、アンダンテとは?ふと中学時代に勉強した音楽の速度、“ラルゴ・アダージョ・アンダンテ”を思い出した(笑)。そう、“ゆるやかに”の意味。及川さんは穏やかなお人柄、作品もゆっくり、楽しみながら描いているに違いない。

 出品作品はリーウーハン作品を彷彿とさせるいい絵である。及川さん、一皮剥けたのではないだろうか。・・という訳で、暫し美術談義。

 最近アメリカのアーティストはコンセプトを明確にし、プレゼンテーションにも力を入れるらしい。いささか行き過ぎな気はするが、及川さんにも作品への思いを文章にすることを薦める。私が好きな絵のジャンルは現代美術。とりわけ何か考えさせる絵だ。抽象作品は、まさに感性と論理のせめぎ合いの世界だが、私を思索の世界に引きずり込むような作品が好きだ。 

 そんなことを語り合う楽しきひとときであった。益々のご活躍を祈りたい。(TAO・TY)

作家及川伸一氏と出品作品

三浦康栄展@ギャラリー銀座一丁目

2013年06月13日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 
 この個展では、どの作品も背景は具体的に描写されていません。ザラザラとしたニュアンスを持つグラデーションが、穏やかにメインの絵を包み込んで引き立てています。ザラザラした風合いはキャンバスの粗さにもよるそうです。キャンバスの目にも粗いもの細やかなものなど、いろいろあるということを初めて知りました。同じ色を塗っても、同じ絵を書いてもキャンバスの目によって表情が変わる。作家の方にとってはキャンバス選びも大切なのですね。そんな背景色を携えて描かれている半分は、黄色い小薔薇や柘榴や玉葱などの静物。そして、もう半分は裸婦でした。8点ほどの裸婦像がありましたが、1人の女性を8通り描いたのではなく8人8態。三浦さんが個展で裸婦を発表するのは初めてなのだそうです。見に来た友人たちからは、裸婦に対してのダメ出し意見があったようです。「カタい!」「カタい!」と言われちゃったと苦笑されました。
 裸婦の絵は、何人もが一斉にスケッチをするデッサン会のようなところで、初めて会ったモデルを短い時間でささささっと描いたそうです。その後はモデルなしでキャンバスに向き合う。作品を作り出す時間の中で、モデルと共有する時間はとても短いといえます。日常生活の中でも、初対面、短い時間だけではお互いを理解し合うことは誰だって難しいもの。人間関係はカタいままになるはず。そういった限定された時間による関係性のようなものが、そのままキャンバスに表現されたのではと推測してしまいました。それにしても、「カタい!」という言葉は、有り難くない言葉として一概に捉えていいものなのでしょうか。刹那的なモデルとの関係性がカタさに表れているという意味では、絵はただしく関係性を表現できているといえるのではないでしょうか。
 三浦さんは新潟のご出身です。この日、同級生の方が長岡から個展を見にいらっしゃいました。前回の個展の際にもはるばるいらしたそうです。お二人は学校は一緒だったけれども一度も同じクラスにならなかったとか。それでも何十年も続く長年の親しい間柄。ギャラリーの椅子に座って、お祝いに差し入れてくださったお酒で乾杯。しばらく歓談した後、同級生の方はまた長岡へ。何気ない時間でしたが、いい再会を目の当たりにさせていただきました。フランクで気さくな雰囲気。……この同級生の方をモデルに描けばカタい!だなんて言われないかもしれませんね。けれども、同級生の方は男性。裸婦像とはいかないわけです。裸夫像ならば?(山本理絵)