TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

「注目の現代作家と画廊散歩」
「我がルオー・サロン」
「心に響いた名画・名品」
「アート市民たち(コレクター他)」

故磯良卓司氏の句『天涯無頼泰山木の雨にゐる・・島達』のこと

2007年06月10日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 ギャラリー汲美の磯良卓司氏が亡くなった。島達とは磯良さんのペンネームである。そして、この句は2005年横田海展覧会の案内DMに掲載された磯良氏の文章のタイトルである。
磯良さんは画商というより知的な雰囲気の文学青年といった感じの画廊主で、自らアート作品を制作したり、句を作ったりと、クリエイティブな方であった。
 この句は、「雨の中、泰山木の下にただ男が佇んでいるという心象風景を詠んだもの」とのことだが、句にも文章にも磯良氏の感性が滲んでいる。磯良さんの文章は味があり、いつも心に残った。
このところ、生きること死ぬことを考えさせられることが多い。磯良さんのご冥福を祈りたい。


(5月28日最後の展覧会会場に飾られた磯良氏の遺影)

アートNPO会員でもある新井侑竹さんの墨アート『淙々展』

2007年06月10日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 5月21日より、アートNPO会員でもある新井侑竹さんの墨による『淙々展』が銀座の画廊で開催された。
新井さんはもともと著名書家である故桑原翆邦氏に師事し書を極めつつあったが、数年前より墨アートに挑戦している。
 我々が見ている現代美術に影響されたと語ってくれたが、趣味の山歩きのなかで感じるところが大きかったようだ。二年前のアートトップ誌に「書の線で自然の気配をあらわしてみたいという憧れにも似た想いを深くした」と語っている。今回の『淙々展』出品作も伸び伸びした力強いものばかりで、新井さんの意欲が伺われる。書から墨アートへの.転進は簡単なことではないだろうが、是非頑張っていただきたい。
 22日のオープニングパーティーには、アートNPOの仲間たちの他、元岩波書店の役員穪寝(ねじめ)尚武氏など新井さんの知人友人が出席、新井さんのお料理に楽しい時を過ごした。(山下)


左から二人目新井侑竹さん、その両脇が穪寝ご夫妻

薬師寺長老松久保秀胤氏による唯識哲学とボナノッテ講演

2007年06月02日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 6月2日、奈良薬師寺の前管主松久保秀胤氏によるボナノッテ講演会がイタリア文化会館で開催された。薬師寺は2003年の大講堂落慶の際、イタリア彫刻家チェッコ・ボナノッテの彫刻展『生命の劇場』を開催した。仏教の寺がキリスト教精神を背景としたイタリア人彫刻家の作品を展示するというのは画期的なことで、これを企画したのが松久保胤氏であった。
 ところで、小生、『唯識』なる言葉も知らなかったのであるが、仏教の深層心理学のことのようだ。直訳すると「ただ、対象を認識する心だけ」ということになる。「物は心を離れて存在するのではなく、物を認識する心があるから、物があると思うだけ・・」という意味のようだが、理解不十分なので中途半端な解説はしない。
 ただ、唯識を教義としている奈良薬師寺の管主自らがイタリア現代作家の彫刻作品のなかに、共鳴する精神を見出したというのは意味深い。キリスト教も、仏教も、イスラム教も、それぞれ違う教義の宗教であるのは当然だが、その精神には相通じるものがあるということなのだろう。こういうことを通して違う宗教や文化が触れ合うことの意味をあらためて考えさせられる。(山下)


     長老松久保秀胤氏    ボナノッテ氏とバチカン美術館大扉映像