TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

「注目の現代作家と画廊散歩」
「我がルオー・サロン」
「心に響いた名画・名品」
「アート市民たち(コレクター他)」

フランス人の落語と日本人のシャンソン、ワインを飲みながら楽しむ

2016年10月23日 | 心に沁みる音楽
友人のTさんに誘われ、シャンソンを聴きに行く。
3人の女性ヴォーカリストが出演したが、ご友人の村田ナオミさんは声量もあり、特に素晴らしかった。経歴に外語大出身・高等学校の語学教師とあったが、フランス語の発音も滑らかで、納得である。曲目は「幸福を売る男」や「初恋のニコラ」など、ワインを飲みながら楽しんだ。


歌手、村田ナオミさん



実はこのコンサートは落語とシャンソンのコラボ、しかもフランス人の落語など初めてであったので実に愉快であった。名前はシリル・コピーニ、❝尻流複写二❞というそうな。1997年以降九州日仏学館に勤務していたが、その後上京、本格的に落語を学んだとのこと。現在も落語の海外普及などの活動を続けているのだそうだ。大阪便も博多弁も堪能で、創作落語も面白く笑い転げてしまった。


村田さんお友達Tさん

パブリックアート散策・・六本木ミッドタウンの「安田侃」彫刻と遊ぶ

2016年10月17日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
このブログに時々記事掲載をしていただいている友人のRieさんと六本木の新国立美術館に出かけた。待ち合わせはいつものスタバ、場所柄外国人や業界の人っぽい格好の男女が多い。さすが六本木だ。暫らくの時間、珈琲を飲みながら彼女が取り組んでいる❝メタ認知❞についての文章のことなど雑談した後、散歩。いい天気だ。水の流れるスクエアーを覘きながらそぞろ歩きしていると、見たことある彫刻が目にとまる。えーと、そうだ、安田侃の作品だ。

 
作品名・・「妙夢」ブロンズ製


 「あっ、そこのおじょうちゃん、彫刻と遊ばないでね。」


 「おっさん、僕の彫刻、そんなに押さないでよ。」

パブリックアートとは公共彫刻のことで野外彫刻とも言う。見落とし勝ちだが、よく見るとビルのホールや広場にいい作品が設置されている。美術館で作品と一対一で向き合うのとはまた違った味わいである。
安田侃は北海道見唄生まれ、東京芸大を終了した後イタリアに渡り、ピエトラカンテで彫刻を学んだ経歴を持つ。大理石やブロンズを用いた作品は有機的な曲線が美しい。

奥田良悦展、蟻の愛は人間の愛より深い・・ギャラリー惣

2016年10月14日 | 気になる展覧会探訪
銀座のギャラリー惣で、友人でもある奥田良悦さんの展覧会を開催中である。
奥田さんは一貫して蟻をテーマに描き続けている。顕微鏡で覗いたかのような蟻を拡大した作品であるが、擬人化された蟻の動きが面白い。しかし最近は蟻が2匹ないし集団で登場、巣のなかで語り合っているかのような作品が増えて来た。その語らいは愛であると作家は言うのである。そうか、❝蟻の愛は人間の愛より深い❞のか。いや、それほど奥田さんの蟻への思いが深いのだ。




作品鑑賞のあと作家の横田海さん・奥田さんを囲んで、やはり作家の横島庄司氏や美術愛好家Mさんと居酒屋へ。こうして時々画家や美術愛好家と一献交わすのだが、楽しいものだ。我々酔っ払いは「絵のテーマとして蟻は難しいよなー」等と勝手なことを言いながら、蟻の愛について語り合う。楽しき秋の夕べであった。
横田海氏  横島庄司氏

心に響く香月泰男、丸木伊里・俊、川田喜久治作品・・平塚市美術館

2016年10月07日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
深い感動に包まれるひとときであった。平塚市美術館の香月泰男、丸木伊里・俊、川田喜久治展、是非観たいと思っていた展覧会であり、無理して出かけてよかった。

香月泰男は知る人ぞ知る素晴らしい画家である。東京美術学校を卒業、国画会・新文展に出品した後に応召、シベリア抑留を経て復員となった。香月と言えばシベリア・シリーズがよく知られているが、帰国後にシベリア抑留中の記憶をもとに描いた作品である。酷寒の中での飢餓や強制労働などの極限状態の日常を描いているが、黒や褐色による暗鬱な色調の画面が見る者を強く感動させる。左・作品「点呼(左)」、右・作品「青の太陽」


・・作品「点呼」・・横長のカンバス二枚組の一枚、貨物船に乗船するためのシベリアでの最後の点呼風景である。作家は「これさえ通過すれば、もう誰からも拘束されることのない自分の身体になるのだと・・。作業衣の中のやせた身体に感謝せずにはいられなかった。多くの友が故国を見ずしてシベリアの露と消えていったのに・・・。」と記している。

・・作品「青の太陽」・・この絵のモチーフは銃を両手で捧げての匍匐(ほふく)前進訓練の時見つけたアリの巣である。自分が穿った穴へ自由に出入りしているアリを見詰めながら、アリになって穴の底から青空を見て暮らしたい。・・そんな思いを描いた作品であろう。普通に生きていることを感謝したくなる絵である。



・・作品「原爆の図」のことは知っていたが、作家の名前も作品も初めてであった。凄い作品である。上記画像はその一部であるが、少年と少女の絵には言葉を失う。作家丸木俊は「900人程の人間像を描きました。たくさん描いたものだなと思いました。けれど広島でなくなった人々は26万人なのです」と語っている。こういう作品作りに生涯をささげた作家がいるのである。



・・上記作品「原爆ドーム・太田川」など、川田喜久治の写真もよかった。「原爆ドーム天井・しみ」や「特攻隊員の写真」等、圧倒的迫力を持って観る者に迫る。モノクロの写真を通して、日本の戦争の歴史の不条理を見詰めている。

香月泰男の作品は今までに何回か観ていたのだが、やはりよかった。それに丸木伊里・俊や川田喜久治を知ったこと、いい一日であった。それぞれの戦争や平和への思いが深い感動をもって伝わる展覧会であった。