篠沢潤子さん
篠沢潤子さんは、いつもニコニコしていてキュート。作品を前に「これはね、」と笑顔で語ってくれます。長年ずうっと書道を続けてこられてきて、今は油彩へ。作品のところどころに、平仮名やアラビア文字のようなさらさらっなめらかに流れる筆運びが感じられるのはそのためでしょうか。心のリズムもそこにのっかっている気配。実際、書道の筆を使って描いてある部分があるとのこと。普通の筆とはかすれ具合も違うのだそうです。かすれの競演、見てみたい! それにしても、和紙の上ではなくて、キャンバスの上までをも書道の筆が走ることがあるだなんて。書道の筆の活動範囲を限定させていた思い込みを戒めておかなくては。
もうひとつ、色は塗るもの、重ねていくものだというシロウトの思い込みからも、篠沢さんは解き放ってくれました。塗って、硬めて、それから削る、そうして導かれる色の引き算もあるんですね。しかも篠沢さんの引き算は、引いて、引いて、引いて……。ついにキャンバスまでほんのり削ってしまうというマイナスの世界に突入する引き算。「ここなの」と、マイナス世界を教えていただきました。わわわわわ!と感激。次に引き算をすることは決まっているのに、敢えてわざわざプラスの足し算を重ねる経緯を経てからの引き算というのは、単純な引き算とは大違い。「数字」の足し算引き算と「色」の足し算引き算では、結果も、目的も、込められた意味も全く別のものなのです。
今回、黄の背景色を持つ作品が特に印象に残りました。朗らかで温かみのある黄色です。篠沢さんは、眼を患われて手術も経験されたそうで、黄色い絵の具がグレーに見えたこともあったとお話くださいました。黄色をもういちど見つめずにはいられません。
※Oギャラリー(東京都中央区銀座1-4-9代一タムラビル3階)