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TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

「注目の現代作家と画廊散歩」
「我がルオー・サロン」
「心に響いた名画・名品」
「アート市民たち(コレクター他)」

ロンドン在住の現代美術画家猪瀬直哉氏と銀座でランチ

2018年01月25日 | モダンアート

ここ数年間に出会った現代美術の中で、猪瀬氏の作品には特に魅かれるものがある。先日、DOMANI展で久しぶりにお会いしたのだが、ゆっくり語り合おうということになり、銀座三笠会館でランチした。なかなかの好青年である。映画がお好きとのことで意気投合、野球の映画など印象に残った作品について盛り上がった。特にスターウォーズなどSF 映画が好きとのこと、「2001年宇宙の旅」に出てくるモノリスなどは作品作りのヒントにもなっているらしい。



英国ロンドンでの暮らしについては、人種におけるヒエラルキーを意識することが多いとのこと。猪瀬氏の作品は風景画にしても単なる写実の世界ではなく、現代における不安感が漂うが、こういった時代への感性が作品に反映しているのであろう。今回のDOMANI出品作も「イントレランス」や「国立新宿自然公園」などメッセージ性に富む作品が印象的であった。
暫らくロンドンで作家活動を続けるとのことであるが、今後の活躍が楽しみな作家である。



「DOMANI」プレスリリース展、レディ二人と鑑賞

2018年01月12日 | モダンアート

新国立美術館でDOMANI明日展を開催中である。文化庁は人材育成のために海外研修をすすめているが、これは海外で活躍中のアーティストの作品発表会である。その一人、ロンドン在住の猪瀬直哉氏からプレスリリース前夜祭の招待券が送られて来たので、友人二人を誘って出かけて来た。現代美術を観る機会は余り無いとのこと、作家と会話したり、楽しそうに鑑賞していた。


作家猪瀬直哉氏と作品ポリリスを囲んで

どの作家の作品も意欲的で、いい展覧会であったが、やはり猪瀬氏の作品が見応えあった。作家は図録の中で、「私は自分の回りに起こる問題や、様々な社会問題、環境問題を題材に絵画を描いている。・・基本的には私は自分のことをメッセンジャーのように思っている。」と語っているが、私は元々、観る者を思索の世界に誘うような作品が好きなので、猪瀬氏の作品に魅かれるのだと思う。作品「ポリリス」や「イントレランス」など、いずれも現代の不安感を漂わせ観る者を魅了する。


展覧会終了後はジャズ歌手のYuさん、リラクサロンのSさんと、ミッドタウンの「ダイニング酢重」で旨い日本酒を飲みながら楽しいひとときを過ごす。


岡村桂三郎&岩隈力也「山水逍遥」展・・コバヤシ画廊

2017年07月12日 | モダンアート
銀座のコバヤシ画廊から岡村桂三郎と岩隈力也の「山水逍遥」展のご案内が来た。この画廊とビジネスパートナーSさんのサロンは直ぐ近くだ。そんな訳で誘って二人で観に行く。



今回の岡村作品は和紙に墨と黒い鉛筆で描いたドローイングである。いつもと違ってユーモアが滲んだ作品である。作家の想像上の動物であろうが、その舌の上を象が並んで歩いて行く図や女性が魚の口をこじ開けて出てくる図など、面白い。ギャラリストが天照大御神ではないかと言っていたが、さて・・・。







僕の好きなこの一点・・アルベルト・ジャコメッティの人物彫刻

2017年06月13日 | モダンアート

ニューヨークを旅すると、必ずMOMA(ニューヨーク近代美術館)でひとときを過ごす。ここには近現代の貴重な作品がたくさんあるが、私の足はジャクソン・ポロック、バーネット・ニューマン、マーク・ロスコ、ジャコメッティなどの作品の前で立ち止まってしまう。とりわけジャコメッティの人物彫刻が好きである。

ジャコメッティは独特な世界を確立した現代彫刻家である。 針金のように細い人間像は一見現代の不安感を漂わせているかのように見える。何と力強い表現であろうか。どの作品もリアリティーをもって見るものに迫る。ジャコメッティはある時、遠ざかる人間の後ろ姿を見ていて、小さくなっても変わらない人間の本質に気がついたのだという。そして、目に映るものを見える儘に表現することを追求しつづけ、削りに削っても残る人間像の世界にたどり着いたのである。

ジャコメッティの影響を受けた現代作家は多い。実存主義作家サルトルもその一人で、人間の本質に迫る世界を高く評価した。その名前と作品は20世紀美術史に燦然と輝き続けるであろう。



天目・高麗茶碗など名品が並ぶ茶の湯展・・東京国立博物館

2017年05月27日 | モダンアート
東博の「茶の湯展」、会期終了間際に覘いてきた。茶の湯にかかる美術の変遷を室町時代から近代に至る伝世の名品を通して観ようという企画で、見応えある展覧会であった。


現代美術にのめり込む以前より陶磁器が好きで、若い頃は美濃や九谷等の陶芸家の窯場を訪ねたり、自分でも志野・織部の焼きもの作りをやっていた。特に中国宋時代の青磁や朝鮮の高麗茶碗が好きで、大阪の東洋陶磁器博物館には何度も足を運んでいる。ここの名品も今回展示されると聞いて出かけたのだが、おおいに満足した。



天目茶碗とは不思議な名前だ。かつて中国浙江省の天目山に留学した禅僧が日本にもたらしたことに由来する。私は10数年前、友人達と香港の骨董街を歩き回り、天目茶碗の骨董を買って来たことがある。この天目茶碗、当時の中国では余り評価されなかったこともあり、日本には油滴天目などの名品が残っている。



高麗茶碗とは16世紀から18世紀にかけて朝鮮半島で焼かれた茶碗。宋風の喫茶法が伝わって以来、天目や青磁など唐物茶碗が長く用いられてきたが、詫びの茶風が広がるに従い、たおやかで独特な表情を持つ高麗茶碗が親しまれるようになった。

岡村桂三郎、日本画の領域を超えたモダンアート・・コバヤシ画廊

2017年03月04日 | モダンアート
バーナーで焼き焦がした杉板を洗い落として下地を作り、その下地の表面を削りながら日本画材料用いて描く。描かれるテーマは龍や象や獏など中国の想像上の動物たちだ。しかもこれらの動物たちは胴体に幾つかの目を持つなど、年毎に作家のイマジネーションの広がりから形を進化させている。近年作家は、これらの架空の動物たちを描いた杉板を巨大な屏風に仕立てて発表しているが、テーマも焦がした屏風での表現も日本画の領域を超えている。

これら作品を見ながら、ふと以前画集で見た「ラスコーの洞窟壁画」を思い出した。壁画は赤土や木炭を獣脂や樹脂や血で溶解して作ったと思われる顔料で馬や山羊・野牛などが描かれていた。旧石器時代のクロマニヨン人が描いたものと記憶しているが、ひたむきに黙々と杉板を削り絵の具を付着する作家の姿とオーバーラップしてしまった。岡村桂三郎が描くのは東洋の神話から想を得たアニミズム的世界には違いないが、作家の意図するのはこの制作過程にこそあると思うのだ。まさに現代アートそのものである。



 
   指先・・ ここに目があるね(笑)


岡村桂三郎展 @小林画廊

2017年03月04日 | モダンアート

 狼のようで狼じゃなく、象のようで象じゃなく、胴体から眼光が覗いていたり。動物図鑑には決して見られない、架空の生き物たちの姿を捉えた作品たちは、どれも神出鬼没な雰囲気です。普通のキャンバスの上には降臨しそうにない気配。描かれているのは、風や雨や垢や煙や太陽の歳月をしみこませたような重厚な板の上です。生き物たちは、壁いっぱい天井いっぱいのサイズさえも窮屈に感じているようで、板に身体全体が収まっている生き物は皆無。みんな自由に身体をうねらせてはみ出し放題。きっと、たまたま板の上を通り過ぎた瞬間を岡村さんに見つけらてしまったのでしょう。どこからやってきてどこへ行くのか、何を見つめて何を想うのか。板からはみ出した生き物たちの野性は、現代の人間の規格外。だからこそ、見つめていると、少しずつ私たちの野性を取り戻させてくれる気がします。(山本理絵)


山田正亮の絵画 @国立近代美術館(~2月12日)

2017年02月05日 | モダンアート
 ストライプの作品で有名な作家だそうですが、ストライプといってもストライプじゃありません。ストライプという言葉の定義を超越しています。「ストライプという5文字で、とりあえず代替させていただきました」といったところではないでしょうか。ですから、ストライプという表現を真に受けて館内に入ると、未知の世界に圧倒されてしまうかもしれません。色や幅や順や数の個性と連続性。単純なはずの線が成す集合体に、魅せつけられるのは何故でしょうか。



 この展覧会は、作家の描いた順で展示。ストライプ前から後へと続いていく作品の変化と通底に、作家自身の人生や思想と重ねて眺めるのもまた一興です。最晩年には線が消えてゆきます。(山本理絵)

猪瀬直哉作品「Wait for me」の哲学的世界

2016年01月27日 | モダンアート
「みんなのギャラリー」の敦賀信弥氏の企画展、緊張感のあるいい展覧会であった。この中に一点気になる作品があり、再度観に行った。二度も観に行くなど珍しいことだ。 作品は猪瀬直哉の「Wait for me」 である。作品タイトルもいい。この哲学的作品、書斎の壁に架けて、静かに鑑賞してみたいものだ。私を思索の世界に引きずり込むに違いない。
作家はロンドンで修行中、北方ロマン主義の影響を受けているとのこと。そうかも知れない。ネットで見た作家の作品は、ターナーの難破船や深く急峻な山岳風景、或いはフリードリヒの人を寄せ付けない山岳風景の如き荘厳な世界であった。才能があるのであろう、楽しみな作家である。

この作品の構図はいたってシンプル、手前にプールがあり、その先にはよく伐り込まれた生垣が、そしてはるか前方には山並みが描かれている。色彩的には、プールはエメラルド・ブルー、草原はグリーン、山並みと空はブルーホワイトと全体的に明るいイメージだが、どこか哲学的雰囲気が漂う。ただの写実の世界ではない。


この絵に何を見るか、どう見るか・・・。
私には、プールの脇に立ち、はるか彼方の嶮しそうな山を見上げる作家、いや私自身の姿が見える。プールは現代という時代を表現している。一見平穏かつ平和に見えるが、貧富の差や老後不安、周辺諸国との緊張など課題山積だ。しかも生垣を境界にしたその先の世界も未来も、未知のままだ。我々は如何に生きるべきか。不安ではあるが、ここに佇んでいる訳にはいかない。

❝私は今、まさに、平穏なプールサイドを離れて、旅立とうとしている。遙か彼方の青い空は明るい世界を思わせるが、急峻な山岳の向こうは混沌とした不安と闘いの世界かも知れない。全て未知だ。・・だが勇気と希望を持って出発しよう。そう、「Wait for me!俺も行くから待っててくれ!」❞。

旅の途中、三重県立美術館で「1940年代日本美術展」を観る

2015年09月06日 | モダンアート
心に残る友人S・Kさんを訪ねる旅の続きである。



津は初めての街、しかもKさんとの待ち合わせまで時間がある。そう言えば三重にはどんな画家がいただろうかと、津駅界隈を散策しながら三重県立美術館に向かう。駅から歩いて15分程の位置にある落ち着いた美術館だ。丁度「戦後70年記念20世紀日本美術展」なる企画展をやっていた。1910年代から30年代の日本美術を10年単位で総括しようという試みで、今回は1940年代の作品展であった。通常の日本美術史なら1945年を境に戦前と戦後の作品を区分けするであろうが、敢えて俯瞰して観せるという意欲的な展覧会であるようだ。作家たちの戦争体験やこの時代へのさまざまな思いが透けて見え、興味深かった。取り上げた作家たちも梅原龍三郎や横山大観から香月泰男、靉光、松本俊介などで滅多に観られない貴重な作品も多く、見どころあるものであった。



美術館の一階にはミュゼ・ポンヴィヴァンなる洒落たレストランがあり、暫らく休憩する。ワインが美味しそうであったが、夕食の鰻とビールのことを考え、珈琲で我慢することにする。レストラン前の庭園の緑と配置された立体作品が美しく、これらを眺めながらの贅沢なひとときであった。



実は小生、三重県のことも津のことも知らないことばかりだ。旅立つ前に、津出身の東京の友人Rieさんから伊勢神宮や名物のことなど色々聞いてきたのだが、県出身の著名人について知りたくなりネット検索したら、私が好きな人物の名前が出てきた。映画監督では「ビルマの竪琴」の市川崑、絵画では独学独歩の抽象画家浅野弥衛、小説家では「蛍の河」の伊藤桂一、明治の教育家で攻玉社を創立した近藤真琴などだ。そんな人物のことに思いをめぐらしながら、暫らくの時間、静かに珈琲を啜った。これぞ、一人旅の醍醐味である。

そんなことを考えながらぼんやり珈琲を啜っていたら、友人S・Kさんが車で迎えに来てくれた。20数年ぶりの再会だ、懐かしいね。



若い頃、現代美術を指南してくれた鳥羽の友人との一期一会

2015年09月04日 | モダンアート
私の❝死ぬまでにしたい三つのこと❞の一つは「心に残る友人を訪ねる一期一会の旅」である。30代半ばの頃、現代アートの何たるかを指南してくれた若き友人S・Kさんがいた。東京・青山の画廊で知り合い、国際的アーティストの河原温や杉本博司、ジャン・シャルル・ブレやマックス・ノイマンなど多くの現代アートの作家たちについて教えられた。年齢はひと回りくらい若かったが、私の現代アートの師匠と言っていい青年だ。その頃パリで活躍していた画家今村幸生氏のマネージャー的存在でもあった。

三重県立美術館にて、K氏と

20数年前のことだが、S・Kさんから誘われ、亡き妻と二人、車で鳥羽を訪ねたことがある。病ゆえ出かけることの少なかった女房孝行の旅でもあった。鳥羽のご自宅でご両親とお会いし、松坂牛をご馳走になり、翌日は友人の画家天花寺又一郎氏と二人で伊勢神宮や志摩を案内してくれた。妻と私は伊勢神宮は初めてだったこともありいたく感動、特に妻が夫婦岩を見て嬉しそうにしていたこと、美しい白浜の海岸で遊んだこと、赤福本店でお茶を飲んだことなど忘れられない。


三重画廊山本氏も交え


 中央画家天花寺氏、右端S・K氏

そんな訳で、この旅のことは良き思い出として心に残ったが、その後彼が東京から鳥羽に拠点を移し、私も働き盛りの年齢となり、長いことお会いすることは無かった。ただ、ニューヨークのMOMAなどで河原温や杉本博司の作品を観る度にこの時のことを思い出し、いずれ仕事人生をリタイアしたら鳥羽を訪ねたいと思っていた。そんなところへ天花寺又一郎氏から津での展覧会の案内が到着、ふと出かけたくなったという次第である。



こうして、S・Kさんとは20数年ぶりに再会したのであるが、今や、津から鳥羽にかけて幾つかのマンションを経営する立派な実業家になっていた。三重県立美術館の喫茶室でその後の人生、新たな事業への進出のことなどを拝聴、暫し歓談した。天花寺又一郎氏との再会も嬉しかった。三重画廊で宇宙を感じさせるちょっと哲学的作品を拝見しながら旧交を温めた。絵画鑑賞の後、3人で津名物のうな丼を食べに行き、二次会はKさんとコメダ珈琲店で近況などを語り合った。不動産事業も順調、可愛いお子様も三人いらっしゃるとのこと。心に残る嬉しい旅であった。


 津で一番人気の鰻店、新玉亭


・・こうして今年、死ぬまでにしたいことの一つ、Kさんと会う一期一会の旅が実現したのであった。
コメント

NY便り(東京発)・・MOMA(NY近代美術館)はモダンアートの殿堂だ

2015年05月23日 | モダンアート
MOMAの誕生は1929年、モダンアート・同時代の美術は過去の美術と同様に重要かつ不可欠なものであるという理念のもとに設立された。研究テーマも絵画や彫刻だけでなく、映画や写真、建築とデザイン、版画と挿画本などを対象に、20世紀以降の現代美術の発展と普及に貢献して来た。

 ピカソ

 ゴッホ

現在、MOMAのコレクションはポスト印象派及びモダンアートを中心に15万点をはるかに超える。収蔵作品は、ピカソの「アヴィニヨンの娘たち」やゴッホの「星月夜」をはじめ、セザンヌの「水浴の男」やモネの「睡蓮」、シャガールの「誕生日」やワイエスの「クリスティーナの世界」など、名品中の名品が揃っている。しかもモダンアートについてはカンディンスキーやモンドリアンから始まり、ジャクソン・ポロックやアンディー・ウォーホル、ジャスパー・ジョーン、マーク・ロスコなどの一級品を中心におびただしい数に及ぶ。

マチス

私はこれらの主要作品を観た後、特に好きなジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングや、観る者を包み込むようなマーク・ロスコ、針金のような細い人物彫刻のジャコメッティー、赤一色の静かなバーネット・ニューマン、フランク・ステラのストライプ、その他フランシス・ベーコン、ウイレム・デ・クーニング、サイ・トゥオンブリ、アド・ラインハート、ブライス・マーデンなどをじっくり眺める。これらの作品は私を哲学的思考の世界に引きずり込む。至福のひとときである。
 
アンディウォーホル

 
マークロスコ

 
バーネットニューマン

MOMAには河原温や杉本博司など日本人の作品も収蔵されているが、この日は草間彌生の作品が展示されていた。おおー、こんなにあると圧倒されるよ(笑)。

 草間彌生

私の美術館の楽しみは作品鑑賞だけでなく、カフェでワインや珈琲をゆっくり楽しむことにもある。彫刻庭園の脇には本格フレンチ「ザ・モダン」があり、彫刻を眺めながらのディナーは最高である。孫たちが一緒の日はカジュアルなカフェでのランチがいい。この日は上階の気さくなレストランで、生ハムのサラダとビールでランチを楽しんだ。

NY便り(東京発)・・ニューヨーク近代美術館が好きだ、彫刻庭園で寛ぐ贅沢

2015年05月20日 | モダンアート
娘家族と息子家族が暫らく暮らしていたこともあって、ニューヨークには何回か旅している。NYで一番好きな美術館はニューヨーク近代美術館(愛称MOMA)だ。マンハッタンのほぼ中央に位置し、谷口吉生のシンプルなデザインが都会の雰囲気に溶け込むように建っている。


MOMAはモダンアートの殿堂である。収蔵作品はポスト印象派以降の近現代美術である。私は30代半ばに現代美術を観て美術が好きになったが、当時本格的な作品を見る機会は少なかった。MOMAにはそんな名品たちが信じられない程たくさん展示されている。



私はこの美術館に行くと、彫刻庭園で暫しの時間漂うように過ごす。最高のひとときである。
ここにはジャコメッティやバーネットニューマンなど、私が好きな彫刻が幾つもあり、ベンチに座って日向ぼっこする。都会の中にありながら、その喧噪を離れて暫しの時間を過ごす。なんという贅沢であろうか。


ジャコメッティー


ヘンリー・ムーア


バーネット・ニューマン


心に残るギャラリスト・・②海画廊・軽井沢現代美術館の故谷川憲正氏のこと

2015年05月01日 | モダンアート
尊敬する画商谷川憲正さんが亡くなって1年以上経つ。
海画廊のことは以前より知ってはいたが、初心者向き版画を扱う画廊と思い込んでいたので、初めて覘いたのはコレクションを始めて20年くらい経ってからのことであった。しかし、そのお人柄や単に絵を商うだけでない生き方、絵の初心者に優しいコンセプトを知ってから時々立ち寄るようになった。お寄りすると近くの冨山房ビルの喫茶室フォリオにお誘いいただき、珈琲を飲みながら美術談義に耽ったものである。取り扱っている作品も三省堂フロアの画廊での展示以外にレベルの高い収蔵品があり、オークションなど海外取引にも力を入れている。私も流政之の彫刻やアレキサンダー・カルダー、山田正亮などの作品を頂戴した。

我が「ルオーサロン」にもお寄りいただき、美術談義

谷川さんは元々美術雑誌の編集者で、執筆文章も知的で味わい深いものであった。その夢は大きく、コレクション作品を展示する美術館を作ることだという。この美術館のことを熱っぽく語る谷川さんの嬉しそうな顔が忘れられない。しかも、単なる夢物語でなく既に軽井沢にある某鉄道会社の寮であった物件の購入を検討中であるとのこと。こうしてこの計画は着々と進められ、海外で評価の高い作家、草間彌生や奈良美智、荒川修作などの作品を展示する「軽井沢現代美術館」として実現した。
軽井沢現代美術館展示風景

谷川さんの画廊経営コンセプトは、絵を購入する人の立場に寄り添ったものである。それも資産家やプロ化したコレクター向けではなく、絵を買ったことがない初心者に絵を所有する喜びを与えようというもので、まずは絵に接してもらうためリーズナブルな価格で入門的な作品を提供する。そして、この絵に満足したら下取りの相談にも応じながら中級レベルのものを薦めるといった具合であった。当時私は市民派アート活動を進めていたが、この活動と❝版画に市民権を❞という画廊コンセプトには共通するものがあると評価していただき、我々の小冊子『アート市民たち』にも素晴らしい文章を寄稿いただいた。

そんな訳で、突然のご逝去はとても残念である。ただ嬉しいことに、谷川さんが築き挙げた軽井沢現代美術館については、奥様が引き継いで行かれるとのこと。嬉しい限りである。多くの困難があるとは思うが、谷川さんの夢と意志をより大きなものに発展させていただきたい。

NY便り(東京発)・・グッゲンハイム美術館で河原温特集を観る

2015年04月11日 | モダンアート
NYのグッゲンハイム美術館はカンジンスキーなどで知られる美術館である。マンハッタン中心部からは少し遠いが、この日、グランドセントラル駅を起点にマディソン街及び5番街の街並みを眺めながら歩いて美術館に向かう。両脇にはブランド店が軒を連ね、ガゴシアンGなど著名なギャラリーもある。
美術館に着くまで知らなかったのだが、偶々河原温特集をやっていた。なんという幸運であろうか。

河原温は時間や存在を扱った「コンセプチュアル・アート(概念芸術)」の第一人者として国際的に高い評価を受けている現代美術家である。1年前に81歳で亡くなったが、この展覧会はその死に敬意を表しての企画であろうか。


河原温作品・MOMAにて


 日付絵画と同日の新聞


葉書シリーズ

河原温は60年代半ばにニューヨークに拠点を移して活動して来た。ただ、メディアに登場することもなく、私生活がほとんど不明の芸術家として知られている。渡米後の作品は時間や空間をテーマにした観念的なものといえる。1966年から描き続けられてきた日付絵画「TODAYシリーズ」はキャンバスにその日の日付だけを丹念に描くというもの。その他「Iam Still Allive」という文面の電報を世界各地から発信するシリーズや絵葉書にその日起床した時間を記して特定の知人に郵送する「I Got Up」など幾つかのシリーズがある。
グッゲンハイム美術館の内部は大きな吹き抜けになっており、円を描くようにゆったりしたスロープがあり、この壁に河原温作品は飾られていた。作品を見ながら、こういう独自の世界を築き上げた河原温という作家に改めて脱帽してしまった。


河原温の画集を観ながら

セントラルパークを眺めながら特製ジュースと珈琲

私は30代半ばに三重県鳥羽を拠点にアート活動をしていた青年から現代美術を学んだが、河原温や杉本博司のことを語ってくれたことを懐かしく思い出した。