TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

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岡村桂三郎、日本画の領域を超えたモダンアート・・コバヤシ画廊

2017年03月04日 | モダンアート
バーナーで焼き焦がした杉板を洗い落として下地を作り、その下地の表面を削りながら日本画材料用いて描く。描かれるテーマは龍や象や獏など中国の想像上の動物たちだ。しかもこれらの動物たちは胴体に幾つかの目を持つなど、年毎に作家のイマジネーションの広がりから形を進化させている。近年作家は、これらの架空の動物たちを描いた杉板を巨大な屏風に仕立てて発表しているが、テーマも焦がした屏風での表現も日本画の領域を超えている。

これら作品を見ながら、ふと以前画集で見た「ラスコーの洞窟壁画」を思い出した。壁画は赤土や木炭を獣脂や樹脂や血で溶解して作ったと思われる顔料で馬や山羊・野牛などが描かれていた。旧石器時代のクロマニヨン人が描いたものと記憶しているが、ひたむきに黙々と杉板を削り絵の具を付着する作家の姿とオーバーラップしてしまった。岡村桂三郎が描くのは東洋の神話から想を得たアニミズム的世界には違いないが、作家の意図するのはこの制作過程にこそあると思うのだ。まさに現代アートそのものである。



 
   指先・・ ここに目があるね(笑)


岡村桂三郎展 @小林画廊

2017年03月04日 | モダンアート

 狼のようで狼じゃなく、象のようで象じゃなく、胴体から眼光が覗いていたり。動物図鑑には決して見られない、架空の生き物たちの姿を捉えた作品たちは、どれも神出鬼没な雰囲気です。普通のキャンバスの上には降臨しそうにない気配。描かれているのは、風や雨や垢や煙や太陽の歳月をしみこませたような重厚な板の上です。生き物たちは、壁いっぱい天井いっぱいのサイズさえも窮屈に感じているようで、板に身体全体が収まっている生き物は皆無。みんな自由に身体をうねらせてはみ出し放題。きっと、たまたま板の上を通り過ぎた瞬間を岡村さんに見つけらてしまったのでしょう。どこからやってきてどこへ行くのか、何を見つめて何を想うのか。板からはみ出した生き物たちの野性は、現代の人間の規格外。だからこそ、見つめていると、少しずつ私たちの野性を取り戻させてくれる気がします。(山本理絵)