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映画の王様

映画のことなら何でも書く

『ケープ・フィアー』

2020-10-12 07:47:01 | ブラウン管の映画館

『ケープ・フィアー』(91)(1992.2.6.日本劇場)

 レイプの罪で服役していたマックス(ロバート・デ・ニーロ)は出所後、自分の弁護をおこたったとして、ボーデン弁護士(ニック・ノルティ)への復讐を誓う。

 先日、図らずもオリジナルの『恐怖の岬』(62)を見てしまったおかげで、両作の間にある30年という時の流れによって生じたさまざまな変化の方に興味がいってしまい、この映画を、まっさらな新作としては捉えられなかった。

 例えば、善悪がはっきりしていた『恐怖の岬』に比べると、この映画では、何をもって善と悪を区別するのかが曖昧である。それは、極悪な異常者役をデ・ニーロがやることで、彼の演技が善悪を超越してしまったことと、被害者であるノルティ演じる弁護士一家の方に問題があり過ぎて、彼らが襲われても同情心が湧いてこないことも大きく影響している。30年という歳月は、ここまで人間を変え、歪めたのか、という思いがした。

 こういう映画を見ると、最近のアメリカ映画が好んで描く“家族や心の回復劇”は、所詮現実逃避に過ぎないのか、現実があまりにも殺伐としていることへの反作用なのか、と感じて空しくなる。かといって、マーティン・スコセッシがハートウォーム映画を撮ったら、それはそれで驚くだろうが…。

 この映画が全くのオリジナルだったら、いかにもスコセッシらしい映画として評価することもできたかもしれないが、映画はある意味では生ものなのだから、中半端なリメークはよした方がいいのではないかと思う。

 ただ、『恐怖の岬』で主人公の弁護士を演じたグレゴリー・ペック、犯人役のロバート・ミッチャム、警察署長役のマーティン・バルサムがカメオ出演し、タイトルはソール・バスが担当し、音楽はオリジナルのバーナード・ハーマンによるスコアをエルマー・バーンスタインが編曲・指揮している。こうしたオリジナルへの敬意や遊び心は、映画狂スコセッシの愛すべきところだ。

 そんなこの映画を製作したのは、スピルバーグ主宰のアンブリン。前作『アラクノフォビア』(90)を見た際に、アンブリンもファンタジー路線だけではなく、そろそろ“冒険”が必要だと感じた。その意味では、この映画は、成否はともかく、わが意に応えてくれたとも言えるのだが、この後は、またもやファンタジー路線の『フック』(91)ときた。うーん、これはどうなのだろう。



『恐怖の岬』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f9b7eee01d69f1bb22c828191286b02b

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【インタビュー】『バック・トゥ・ザ・フューチャー』宮川一朗太 

2020-10-12 07:37:56 | インタビュー

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の製作35周年を記念して、「バック・トゥ・ザ・フューチャー トリロジー 35th アニバーサリー・エディション 4K Ultra HD + ブルーレイ」が10月21日から発売される。マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティ・マクフライの吹き替えを担当した宮川一朗太に、マイケルへの思いや、吹き替えの裏話を聞いた。

アメリカ人から「何でマイケル・J・フォックスが日本語をしゃべっているんだ」と言われたことが心の支えに
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1244940

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『恐怖の岬』

2020-10-12 07:30:24 | ブラウン管の映画館

『恐怖の岬』(62)(1991.12.28.)

 

 弁護士のサム(グレゴリー・ペック)は妻のペギー(ポリー・バーゲン)と娘と共に幸せに暮らしていた。だがある日、自分が刑務所に入れられたのはサムのせいだと思い込む性犯罪者のマックス(ロバート・ミッチャム)が出所する。復讐をもくろむマックスに対して、サムは必死に家族を守ろうとするが…。

 この映画は、来年の正月映画の目玉と目される『ケープ・フィアー』(91)のオリジナルである。多分、それに当て込んでの放送で、予習ができたのはありがたかった。

 製作当時は、恐らくこれでも検閲突破すれすれの危うさを持った映画だったと思われるが、今の暴力や性の氾濫から見ればかわいいものだ。スコセッシ+デ・ニーロによるリメーク版は、もっとストレートに、この題材が持つ異常性を強調して描いているだろう。

 だが、少々キザな言い方をすれば、「秘すれば花」ではないが、何でも直接的に見せることが、果たしていいことなのか、という気もする。

 それは、この映画が持つモノクロ画面の魅力、ペックとミッチャムの対決に加えて、妻役のポリー・バーゲンの貞淑さ故の色っぽさが光っていたことも大きな理由の一つだ。

 リメーク版の夫婦や家族の絆はここまで強くは描かれていないだろうし、善悪の区別もはっきりしないのではないかと思われる。そう考えると、『ケープ・フィアー』では、また「アメリカ社会の病根の深さ」を見せられるのか、という危惧もある。

 この映画の監督はJ・リー・トンプソン。かつては『ナバロンの要塞』(61)『マッケンナの黄金』(69)など、面白い映画を作っていたが、今やブロンソンの『デス・ウィッシユ』シリーズ『禁じ手』(89)など、冴えないB級映画を撮っているのが残念だ。 

『ケープ・フィアー』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0c123171525eee06ed155a84e7131446

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『サボテン・ブラザース』

2020-10-11 08:25:58 | 映画いろいろ

『サボテン・ブラザース』(86)(2010.8.19.)

 西部劇のヒーロー「スリーアミーゴス(サボテン・ブラザース)」役の俳優3人組が、映画の撮影だと勘違いして、野盗集団に襲われているメキシコの小さな村を訪れるが…。

 サタデー・ナイト・ライブ出身のスティーブ・マーティン、チェビー・チェイス、マーティン・ショートが、サイレント映画の“3馬鹿大将”を演じるコメディ西部劇。

 『荒野の七人』(60)(音楽はエルマー・バーンスタイン!)、『ローンレンジャー』など、西部劇のパロディー満載だが、サタデー・ナイト・ライブ出身者とジョン・ランディスが作ったコメディーは、アイデアの良さは認めるが、しつこいギャグ、スラングの連発、妙なテンポなどで、残念ながら日本人には理解不可能なところが多い。

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『さらばヤンキース』『巨人の星』

2020-10-11 00:10:55 | ブックレビュー

 元ニューヨーク・ヤンキースの往年の名投手ホワイティ・フォードが亡くなった。残念ながら、その現役時代は、知る由もなく、アーカイブ映像や本でしか見聞きていない。そのフォードも登場する『さらばヤンキース』というノンフィクションの傑作を25年ほど前に読んだことを思い出した。

『さらばヤンキース』(1995.3.)

 1964年の“保守”ニューヨーク・ヤンキース対“リベラル”セントルス・カージナルスとの間で行われたワールドシリーズを柱に、両チームの選手やフロントの動静を、当人たちへのインタビューを交えながら克明に再現し、メジャーリーグ(否、アメリカそのものと言うべきか)の転換期を見事に浮き彫りにしていくノンフィクション。

 筆者のデビッド・ハルバースタムが、スポーツライターではなく、社会派のジャーナリストであるため、カージナルスのボブ・ギブソンやルー・ブロック、カート・フラッドといった黒人選手たちの自己主張の姿と、公民権運動に代表されるアメリカ社会の変化が鮮やかにオーバーラップする。ベースボールが、アメリカ社会の鏡となることを改めて知らされた思いがした。

 また、この時期のヤンキースを9連覇後半の巨人に、晩年のミッキー・マントルを長嶋茂雄に、カージナルスを、巨人凋落後の広島や西武に置き換えてみても、さほど違和感を抱かせないことも興味深かった。

【今の一言】今年は奇しくも、フォードの他に、『さらばヤンキース』にも登場した、盗塁王ルー・ブロック、オマハ超特急と呼ばれた大投手ボブ・ギブソンも亡くなっている。

 ところで、カージナルスと言えば、68年の日米野球を思い出す。もちろんブロックも、ギブソンもその時のメンバーだったが、『巨人の星』で主人公・星飛雄馬のライバルとなる“野球ロボット”ことアームストロング・オズマが所属していたことでも印象深いのだ。

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『水上のフライト』中条あやみにインタビュー

2020-10-10 10:45:23 | 仕事いろいろ

 走り高跳びで世界を目指す遥(中条あやみ)は、交通事故に遭い、二度と歩けない体になってしまう。遥は心を閉ざし、自暴自棄に陥るが、ある日、パラカヌーと出会い、周囲の人々に支えられながら新たな夢を見つけていく。

 『超高速!参勤交代』シリーズの脚本家・土橋章宏が、実在のパラカヌー日本代表選手との交流に着想を得て、オリジナルストーリーとして脚本を執筆。『キセキ あの日のソビト』などの兼重淳が監督した。

 自我が強く、共感しづらい主人公が、徐々に変化していく様子が描かれるのだが、それを彼女は頑張って演じ分けていた。しかも、競技や練習の場面も、スタンドインを使わずに、ほとんど自分で演じたというのだから、なかなかの根性の持ち主だ。

詳細は後ほど。

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『パリの恋人』

2020-10-10 06:58:26 | 1950年代小型パンフレット

『パリの恋人』(57)(2005.4.1.)



 インテリ娘のジョー(オードリー・ヘプバーン)は、カメラマンのディック(フレッド・アステア)に見出され、パリでファッション・モデルとなるが…。

 スタンリー・ドーネン監督の傑作ミュージカルの1本であるこの映画を再見。今回は脇役、ケイ・トンプソンのうまさが光って見えた。ストーリーは他愛もないものだが、こういう映画に理屈を言ってはいけないのだ。ジョージ・ガーシュインの「ス・ワンダフル」はやっぱりいい曲だなあ。

 以下、フレッド・アステア追悼としてテレビで放送された際のメモを記す。(1987.7.3.)

 フレッド・アステアが亡くなった。前世紀生まれの87歳だというから大往生といってもいいだろう。初めてアステアを知ったのは『ザッツ・エンターテインメント』(74)。というわけで、その全盛期は知るよしもないが、並び称されるジーン・ケリーの映画が結構リバイバル上映されているのに比べると、アステアの映画を見る機会にはあまり恵まれなかった。

 その性か、『バンド・ワゴン』(53)を見るまでは「アステアの踊りは高級すぎてどうも…」という気がして、『雨に唄えば』(52)を始めとするケリーの方に親しみを感じていたのだが、最近、『バンド・ワゴン』や『足ながおじさん』(55)、そしてこの映画を続けて見ることができて、遅ればせながら、共演する女優を際立たせるアステアのダンスの見事さに気づいた次第。

 とはいえ、この映画に関しては、オードリー・ヘプバーンの全盛期、加えて、つい先日『ティファニーで朝食を』(61)を見た、というこちらの事情も手伝って、どうしてもオードリーの方に目が行ってしまった。

 それにしても、昔は随分と年の離れたカップルが何の違和感もなく描かれていたことを、改めて知らされた思いがする。例えばオードリーにしても、『ローマの休日』(53)のグレゴリー・ペック、『麗しのサブリナ』(54)のハンフリー・ボガート、『昼下りの情事』(57)のゲーリー・クーパー、そしてこの映画のアステア…、父と娘と言ってもおかしくはない年齢差だ。それを当然の如く見せてしまう力や存在感が、昔の“スター”と呼ばれた人たちにはあったのだろう。

 加えて、若く輝いていたこの映画を見ると、オードリーにはやはり『暗くなるまで待って』(67)で引退してほしかったと思うのはオレだけだろうか? あららアステア追悼のつもりで見たのに随分話が横道に逸れてしまった。

フレッド・アステアのプロフィール↓


オードリー・ヘプバーンのプロフィール↓


『名画投球術』いい女シリーズ2「ちゃんと観たことありますか?」オードリー・ヘプバーン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f64acdf38588e036985f3da44701ca89

パンフレット(57・東宝事業課(日比谷スカラ座 No57-14.))の主な内容は
「パリの恋人」におけるファッション紹介/解説/物語/監督スタンリー・ドーネン/オードリー・ヘップバーン/美しき哉、巴里!/ファッション・モデルのNo.1ドヴィマ/フレッド・アステア、ケイ・トムソン/パリの恋人を見て(津田幸夫)/「パリの恋人」に就いて-色彩・音楽・踊りを主として-(野口久光)

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『真昼の死闘』

2020-10-09 07:17:46 | ブラウン管の映画館

『真昼の死闘』(70)(1976.6.12.)

 メキシコ北部の荒野。流れ者のガンマン、ホーガン(クリント・イーストウッド)は暴漢に襲われた尼僧のサラ(シャーリー・マクレーン)を救う。メキシコ革命軍に加勢して大金を稼ごうと画策するホーガンは、フランス軍の輸送列車襲撃計画に加わるため、土地に詳しいサラと共に旅をするが、彼女には秘密があった…。

 バッド・ベティカー原案、ドン・シーゲル監督、音楽エンニオ・モリコーネ。イーストウッドとマクレーンの軽妙なやりとりが見どころの西部劇。マカロニウエスタンの影響が強く感じられる。

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【ほぼ週刊映画コラム】『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

2020-10-08 10:02:56 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
ハリウッド映画とは一線を画する、新たな映画の真骨頂
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』



詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1245294&preview=true

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『眠狂四郎 殺法帖』

2020-10-08 06:56:25 | ブラウン管の映画館
『眠狂四郎 殺法帖』(63)(1983.3.11.)
 
 
 加賀藩の奥女中・千佐(中村玉緒)から、命を守ってほしいと依頼された狂四郎(市川雷蔵)は、密貿易に絡む争いに巻き込まれ、やがて少林寺拳法の使い手である陳孫(城健三朗)と対決することになる。
 
 シリーズ第一作というのは、当たり前のことだが最も出来がいい。この映画も、その例に漏れず、ストーリー的にも、狂四郎のキャラクターが生きている点でも、シリーズ最高の出来だろう。
 
 ニヒルで世をすねているくせに、同じような境遇の人間に対しては限りない優しさを示す狂四郎は、最近もまた片岡孝夫主演でテレビドラマ化されたが、誰がやっても決してこの雷蔵を超えることはできない。いい役者には必ず「これ!」というはまり役があるものだ。当時は城健三朗を名乗っていた若山富三郎演じる陳孫もはまり役で、確かこの後のシリーズ作にも登場したと思う。
 
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