『カサブランカ』(42)(2006.2.7.)
舞台は、第二次世界大戦下のフランス領モロッコのカサブランカ。ここは、アメリカへ行くためには必ず通らなければならない寄港地だった。そこで酒場を営むアメリカ人のリック(ハンフリー・ボガート)のもとに、昔パリで突然姿を消した元恋人のイルザ(イングリッド・バーグマン)が、夫で反ナチス活動家のラズロ(ポール・ヘンリード)を伴って現れる…。
この映画、何度見てもバーグマンが演じたイルザという女になじめない。2人の男の間でユラユラ揺れて、態度がはっきりしないからだ。彼女に振り回されるリックやラズロが何だか哀れになってくる。
もっともバーグマン自身も、なかなか仕上がらない脚本にイライラさせられ、はっきりしないイルザの性格が好きになれず、最後までこの役に感情移入ができなかったという。それ故、完成した映画も嫌いで、ちゃんと見ていないらしいのだ。
ところで、もともとこの映画はボギー+バーグマンではなく、ロナルド・レーガンとロザリンド・ラッセル(アン・シェリダン説もあり)で映画化される予定のB級の企画だったらしい。それがどうしたわけかボギー+バーグマンになり、複数の人物が手掛けた脚本をハワード・コッチがなんとかまとめ上げたのだという。
監督はハンガリー出身のマイケル・カーティス。脇役に同じくハンガリー出身のピーター・ローレ、オーストリア出身のポール・ヘンリード、そしてスウェーデン出身のバーグマンが出演することで、図らずも、単なるメロドラマではなく“反ナチズム”を反映した国際的な?戦時映画として仕上がり、後には古典となってしまったという不思議な作品なのだ。小学生の頃、リバイバルされたこの映画のタイトルを見て、訳も分からず“カサブタ”を思い浮かべたのはまた別の話だが。
さて、ジュリー=沢田研二が歌った「カサブランカ・ダンディ」の阿久悠の詩が、この映画の内容を見事に表現している。
ききわけのない女の頬を、ひとつふたつ張り倒して、背中を向けて煙草を吸えば、それで何も言うことはない。
嬉しい頃のピアノのメロディー、苦しい顔で聴かないふりして、男と女は流れのままに、パントマイムを演じていたよ。
ボギー、ボギー、あんたの時代は良かった。男がピカピカのキザでいられた。ボギー、ボギー、あんたの時代は良かった。
男がピカピカのキザでいられた。
しゃべりすぎる女の口を、醒めたキスでふさぎながら、背中のジッパーつまんでおろす、ほかに何もすることはない。
想い出ばかり積み重ねても、明日を生きる夢にはならない。男と女は承知の上で、つらい芝居を続けていたよ。
ボギー、ボギー、あんたの時代は良かった。男のやせ我慢、粋に見えたよ。ボギー、ボギー、あんたの時代は良かった。
男のやせ我慢、粋に見えたよ。
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