田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ドミノ』

2023-10-07 20:36:26 | 新作映画を見てみた

『ドミノ』(2023.10.4.オンライン試写)

 ダニー・ローク刑事(ベン・アフレック)の最愛の娘が行方不明に。ロークは心身のバランスを崩したが、正気を保つために仕事に復帰する。そんな中、銀行強盗を予告するタレコミがあり、現場に向かったロークは、そこに現れた謎の男(ウィリアム・フィクトナー)が娘の行方の鍵を握っていると確信する。だが、男はいとも簡単に周囲の人々を操った末に逃亡する。

 打つ手がないロークは、占いや催眠術を熟知するダイアナ(アリシー・ブラガ)に協力を求める。彼女によれば、ロークの追う男は相手の脳をハッキングしているという。彼女の話す“絶対に捕まらない男”の秘密に、ロークは混乱するが…。

 原題は「催眠術(=Hypnotic)」。ロバート・ロドリゲス監督が「観客には何が現実なのか分からないところが面白いと思う」と胸を張るように、事象が目まぐるしく変化し、どんでん返しが連続する多重構造のストーリーや、それに伴う仕掛けはなかなか面白い。しかも、映画の特性である、同じ場面を違った角度(視点)から何度も見せることができるという利点も生かしている。

 ところで、ロドリゲス監督は「謎が謎を呼ぶドミノのような展開は、ヒッチコックの諸作からインスパイアされた」と語っているが、こちらは、クリストファー・ノーラン監督が時間の逆行を描いた『メメント』(00)『TENET テネット』(20)、相手の潜在意識に入り込み思考を植えつける『インセプション』(10)、あるいは運命調整局の存在を描いたジョージ・ノルフィ監督の『アジャストメント』(11)といった、類似性のある作品のイメージが頭に浮かんだ。

 ただ、それらに比べると、複雑な話を94分にまとめた手際の良さが光るこの映画には、いい意味で、B級のSFやサスペンス映画が持つ味わいがあると感じた。


『ドミノ』ロバート・ロドリゲス監督 『ヒッチコックの映画術』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6285736090eb9f63a8cc76af0cb5baba


【インタビュー】『アリータ:バトル・エンジェル』ロバート・ロドリゲス監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d2ad9aec30d1603459912ecf7dfe6276

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『ザ・クリエイター/創造者』

2023-10-07 07:55:59 | 新作映画を見てみた

『ザ・クリエイター/創造者』(2023.10.5.ディズニー試写室)

 2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。人類とAIの存亡をかけた戦いが激化する中、元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)は、人類を滅亡させる兵器を創り出した「クリエイター」の潜伏先を突き止め、暗殺に向かう。

 だがそこにいたのは、幼い少女の姿をした超進化型AI(マデリン・ユナ・ボイルズ)だった。ジョシュアはある理由から、暗殺対象であるはずのAIをアルフィーと名付け、守り抜くことを決意するが…。

 『GODZILLA ゴジラ』(14)はもちろん、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(16)でもアジアを強く意識していたギャレス・エドワーズ監督。今回も彼独特の摩訶不思議なアジア観が見られる。

 ただ、ロスを爆破されたアメリカはAI撲滅を叫び、ニューアジアと呼ばれる東南アジアを思わせるエリアはAIと共存しているという対立構造を見ていると、何やらベトナム戦争や同時多発テロを想起させるところがあり、新味がなく、類型的な感じがしたのは否めない。

 そして、結局はジョシュアがアルフィーに感化される、つまりミイラ取りがミイラになる話なのだが、果たして幼い少女の姿をしたAIを殺せるのかというジレンマを描くことで、最近何かと騒がしいAIの問題に一石を投じているところはあった。

 また、『メッセージ』(16)『ブレードランナー 2049』(17)『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督同様に、エドワーズ監督の特徴のある近未来のビジュアルには妙に魅かれるものがあると感じた。

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