田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ジュディ 虹の彼方に』

2020-01-25 09:55:19 | 新作映画を見てみた

 

 ジュディ・ガーランドが47歳で亡くなる半年前の1968年冬のロンドン公演前後の日々を中心に、過去の回想も交えながら、彼女の人生の舞台裏を描く。

 何と言っても、レニー・ゼルウィガーが圧巻だ。メーキャップの力を借りたとはいえ、渾身の演技と歌で、晩年のジュディに成り切っている。この映画の場合は、それを見るだけでいいのかもしれない。

 ただ、原作は実話を基にした舞台劇なのだが、いくらジュディがゲイたちのアイコンになっているからといって、とって付けたようにジュディとゲイカップルとのエピソードを入れたり(これは多分創作だと思う)、確かに感動的ではあるが、ラストの「オーバー・ザ・レインボー=虹の彼方に」の合唱(こちらは別のライブで実際に起こった出来事らしい)などは、作為の跡が感じられて少々鼻に付く。

 さて、アメリカのスターの黄昏をイギリス人監督(この映画はルパート・グールド)が描くこと。あるいは、アメリカで尾羽打ち枯らし、イギリスでも一度は倒れながら、一瞬の輝きを得る姿などは、ローレル&ハーディの最後のイギリス公演の様子を描いた『僕たちのラストステージ』(18)と重なるところがある。

 また、こうしたバックステージものを見るたびに、どちらの側に立つか、あるいは思い入れるかで、その人物や周囲の人々の描写や評価は異なるものだと感じる。だから、もはや故人が圧倒的に多いが、ルイス・B・メイヤーやミッキー・ルーニーをはじめとする関係者たち、ジュディの夫たち、ライザ・ミネリも含めた子どもたちは、この映画を見たらどう感じるのだろうかなどと思ってしまうのだ。

『オズの魔法使』とミュージシャン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8bea5b048a5b828b840ec0ce505ea92c

『イースター・パレード』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6c90f434d91b92db9478836533b99391

『スタア誕生』完全版
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/656303fc1f7bc49f69cadd46230fce46

『ザッツ・エンタテインメント』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fefd562cb991a0cf7470cc97c11b5f0d

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする