『スタア誕生』完全版(54=83)(1993.1.12.)
この話は、これまでに三度映画化されている。ウィリアム・A・ウェルマン監督のオリジナル(37)は、サイレントからトーキーに移行する際のスター同士の逆転図。この映画は、当時はやっていたミュージカル仕立て。そして、わがリアルタイムのバーブラ・ストライサンド主演の『スター誕生』(76)は、女性の自立のドラマ、という具合に、同じ話を描きながら、作られた時代の雰囲気によって微妙に変化している。ところが、スターの存在、華やかさの裏にある悲劇、人生の変転という縮図はどの時代にも当てはまる。だから繰り返し映画化されるのだろう。
この3時間にも及ぶ大作は、まさしくジュディ・ガーランドの独壇場であった。その姿は、『オズの魔法使』(39)の少女ドロシー役や、『イースター・パレード』(48)の可憐な印象が強い自分にとっては衝撃的であったが、彼女のミュージカル女優としての存在感の大きさを、今更ながら思い知らされた。
もう一つ興味深かったのは、この映画のショートカットのガーランドが、驚くほどライザ・ミネリに似ているということだった。もちろん母と娘なのだから似ていても当たり前なのだが、この2人は、自分の中では見た目が似ていない母と娘として認知していただけに、改めて血の絆を感じさせられたのだ。
そのガーランドは、自殺未遂後、この映画で見事に復活を果たし、アカデミー賞の本命とされたが、『喝采』のグレース・ケリーにさらわれ、再びノイローゼに陥り、後に命を落とす。ガーランドと親しかったサミー・デイビス・Jrは、この件について、著書『ハリウッドをカバンにつめて』の中で不当な結果として、怒りを露わにしている。
つまり、実生活では、皮肉なことに、映画とは逆に、ガーランドが落ち、落ちぶれて自殺する夫役のジェームズ・メイスンの方が名脇役として生き残ったのだ。だから、時代を経た今、そうした2人の“その後”に思いをはせながらこの映画を見ると、別な意味で切なくなってしまった。
ジュディ・ガーランドのプロフィール↓
ジェームズ・メイスンのプロフィール↓
*四度目の映画化となったレディー・ガガ主演、ブラッドリー・クーパー共演、監督の『アリー/ スター誕生』が間もなく公開される。
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パンフレット(55・東宝事業部(東京宝塚劇場))の主な内容
かいせつ/ものがたり/鑑賞の栞 ジュディ・ガーランドを中心としたスタア誕生の優秀な鮎(清水千代太)/ジョージ・キューカー監督のこと/見事にカムバックしたハリウッドの名花ジユデイ・ガーランド/スタア紹介ジェイムス・メイスン、チャールズ・ビックフォード、ジャック・カースン、ルシイ・マーロウ/ビール誕生