田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ニューヨーク東8番街の奇跡』

2020-01-28 10:41:05 | 映画いろいろ

『ニューヨーク東8番街の奇跡』(87)(1987.12.28.日本劇場) テレビで久しぶりに再見した。

 再開発の波が押し寄せるニューヨーク。古いアパートの住人のフランク(ヒューム・クローニン)たちは、立ち退き問題に悩まされていた。ところがある日、UFOのような生命体が現れ、アパートの屋上で暮らし始める。 原題の「Batteries not Included」は「バッテリー(電池)は含まれません」という電気製品の注意書きをもじったものらしい。

 今年のラストショーはまたしても“スピルバーグ印”の映画(監督はマシュー・ロビンス)になった。それにしても、最近のアンブリンの多作ぶりには驚くばかりだ。そして、それぞれの映画の奥には、スピルバーグが大好きなディズニーやロッド・サーリングの影響が伺えるのだが、今回はもろにフランク・キャプラのタッチだった。

 もともとスピルバーグの映画は、心温まるキャプラ魂を、SFXを使って現代によみがえらせたと言えなくもないのだが、この映画などはその最たるものだろう。

 最近、日本でも深刻化している地上げ屋の横行が、ニューヨークでも起きていることには少々驚いたが、地上げ屋という目新しい存在を、かつての街のボスや悪徳政治家に置き換えれば、それに対抗する善良な人々と、奇跡が起きるハッピーエンドは、もろにキャプラのタッチである。まあ、そこに宇宙人を介入させるところが現代風であり、スピルバーグ印映画の真骨頂だとも言えるだろう。

 さて、この映画をピリッとしめるのは、ジェシカ・タンディ、ヒューム・クローニンという老名優夫婦の圧倒的な存在感であり、ロビンス監督が『コクーン』(85)の二番煎じにしなかったところが、また見事だった。

【今の一言】なかなかいい味を出していたマシュー・ロビンスだが、残念ながらこの後はあまり活躍しなかった。スピルバーグは『レディ・プレイヤー1』のインタビューで「80年代はイノセントで楽観的な時代だった」と語っていたが、今改めて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズやこの映画を見ると、なるほどと思う。

【コラム】「1980年代が再びブームに スピルバーグの映画から」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85e114aac84e6082e0b867b9fbf80cd5

【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0252d427482eb27bb9e501c5b7b8acce

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『ギターを持った渡り鳥』

2020-01-28 07:04:15 | 映画いろいろ

『ギターを持った渡り鳥』(59)(1980.12.23.)

 函館を舞台にした、小林旭主演の大ヒットシリーズの第1作。

 心が疲れている時には、こんな昔の、でたらめでセンチメンタルな映画が大いに慰めになったりもするのだ。最近、このシリーズや、加山雄三主演の「若大将」シリーズがリバイバルブームになったのは、そんな効用があるからなのかもしれないと思った。

 旭が「赤い夕陽が~」と歌うウエスタン調のテーマ曲もいいが、主人公・滝伸次が吐く、こんなキザないいセリフもあった。「思い出すというのは忘れているからさ。俺は忘れてはいないから、思い出すということもない」

【今の一言】心が疲れている時、などと書いているのは、確かこの前日に彼女と別れたからだ。この映画で、ジョージというやくざを印象的に演じていたのが、先頃亡くなった宍戸錠だった。

コメント (2)
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