田中雄二の「映画の王様」

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『或る夜の出来事』と「世界名作劇場」

2017-03-13 22:00:00 | 映画いろいろ

 家出した富豪の娘と失業中の新聞記者が、フロリダからニューヨークへ向かう夜行バスに乗り合わせて…という、ラブコメディー+ロードムービーのお手本のような“ボーイ・ミーツ・ガール”映画。

 製作ハリー・コーン(コロムビア)、監督フランク・キャプラ、脚色ロバート・リスキン、撮影ジョセフ・ウォーカー、主演クラーク・ゲイブル、クローデット・コルベール



 この映画を初めて見たのは、NHK教育(現在のEテレ)で放送された「世界名作劇場」(1976年8月5日)だった。

 その当時ですら、すでに製作から40年あまりがたっていたにもかかわらず、何と粋で楽しくて、見終わった後に幸せな気持ちになれる映画なのだろうと思い、前年、同じくテレビで見た『ポケット一杯の幸福』の印象も重なって、他のキャプラの映画も見たくてたまらなくなった覚えがある。

 以後、この映画はもう何度も見ているのだが、80年余りがたった今も、その輝きは全く失われていない。演出、ストーリー、カメラ、俳優…、その全てが美しい映画なのだ。

 ところで、76年開始の「世界名作劇場」では、キャプラの『スミス都へ行く』『オペラハット』のほか、

 『巴里祭』『自由を我等に』『巴里の屋根の下』(ルネ・クレール)、『間諜X27』『モロッコ』(ジョセフ・フォン・スタンバーグ)、『オーケストラの少女』(ヘンリー・コスター)、『外人部隊』『ミモザ館』(ジャック・フェデー)、『格子なき牢獄』(レオニード・モギー)、『大いなる幻影』(ジャン・ルノワール)、『制服の処女』(レオンティーネ・サガン)、『天井桟敷の人々』(マルセル・カルネ)、『道』(フェデリコ・フェリーニ)、『地上より永遠に』(フレッド・ジンネマン)、『灰とダイヤモンド』(アンジェイ・ワイダ)、『誓いの休暇』(グリゴーリ・チュフライ)、『かくも長き不在』(アンリ・コルビ)、『キュリー夫人』『心の旅路』(マービン・ルロイ)、『イヴの総て』(ジョセフ・L・マンキーウィッツ)…などを見ることができた。

 まだビデオもDVDも衛星放送もない時代、名作映画をノーカット字幕スーパーで放映してくれる実に貴重な映画枠だった。

 楽しみながら、随分と勉強させてもらったのだが、やがてビデオや衛星放送の台頭でありがた味がなくなり、気がつけば、いつの間にかなくなっていた…。いまさら懐かしむのは身勝手か。

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