TAMO2ちんのお気持ち

リベラルもすなるお気持ち表明を、激派のおいらもしてみむとてするなり。

読書メモ:『韓国の若者』

2020-10-11 18:30:00 | 読書
 『韓国の若者』(安宿緑著、中公新書ラクレ=701)

 韓国は日本と似ていて、社会的課題を煮詰めたようなところがある。若者が「ヘル朝鮮」と自嘲する厳しさは、恐らく日本の比ではない。この本は、数多くの若者へのインタビューを通じてその実態・実相を浮かび上がらせる。

 大学を出ていないと確実に貧困層に陥る社会、大学を出ていると言ってもソウル近辺の大学でないと価値がないとされる社会、そういう大学を出たとしても、財閥系の一流企業というとても狭き門を突破しないと「人並み」の生活は送れない社会、そのために過当な競争が子供の頃から行われる社会(本書では子供の頃に一日20時間の勉強を強要され、おそらくは耐えられずにドロップアウトする女性が登場する、が、ドロップアウトしたことを後悔している)、念願叶って大企業に入社したとしても過酷な競争が待っていて、昇格時に選ばれなかったら、「チキン屋」になるしかない社会、それでも「チキン屋」になれるだけ恵まれているという社会。そして兵役が重くのしかかり、女性の地位は低く、性的少数者には居場所がない社会。展望のなさから「非恋愛、非SEX、非婚、非出産」を掲げる。非モテどころではない。

 韓国がどんな社会かを羅列するだけで辛くなる。そのためか、若者を取り込む信仰宗教も多い。「適当主義」。日本も競争社会の度合いがどんどん過酷になり、放置していたらそういうことになりかねない。が。そういう日本に韓国の若者は就職を試みる。そのための団体も複数あり、中でもKOTRAは有名。これらの組織は日本での就職をかなり分厚くサメ[トしていて、成功率も高い。また、韓国の若者はそういう次第で目的意識が高く、英語の力も日本の若者とは比較にならないくらい高く、意識とスペックの高さで日本企業は歓迎する。他国の若者と比較しても韓国人は優れている。(尤も、日本企業を踏み台にしている実態を個人的には知っているが、そこには触れていない。)なお、2019年の韓国の競争力は141カ国中13位、日本は6位。なんだかんだと言いながら、日本のほうが競争力があるということもあるのだろう。日本企業側から見た韓国人従業員の課題は、協業にあるようだが直ぐになじむようでもある。「反日」などの政治状況は無関係。

 日本での経験を糧に、韓国に戻る人の話は興味深い。また少数だが日本人で韓国で仕事をする人もいる。またアニメや漫画を通じて日本文化に好感を持ち、ネットで日本人と直に交流する人もいる。(セモニキ)

 さて。なにやら閉塞的な韓国社会。だが、突破口を作りつつある若者もいる。韓国では起業をしても、大手企業に食い物にされる事例が多いらしいが、自分のやりたいことを仕事にしたり、ブルーオーシャンを見つけて成功する事例もある。ソウル大学をトップで出て起業し、成功する人もいる。小生の世代、すなわち386世代が政治革命によって世の中を変えようとし、結局は彼ら自身が既得権益層となって怨嗟の的になっているのは、文在寅を巡る論調を見れば明らか。そうじゃなく、若者世代は政治じゃなく、社会革命を目指している。革命が必要というのならば、そちらが本筋だろう。韓国の若き起業家に期待したい。勿論、日本でも。なんだかんだ言ってご近所なのである。日本人としても身につまされる話が多く、日本を振り返る上でも多くの人に読まれて欲しい。

 また、本書では若い起業家について、コロナのせいでインタビュー旅行が出来なかったとのこと。この部分については、東アジアの未来のために、いつか別の本でがっつりと取材&出版を期待したい。

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