TAMO2ちんのお気持ち

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読書メモ:『マルクス・エンゲルス小伝』

2005-03-21 23:04:49 | 読書
『マルクス・エンゲルス小伝』(大内兵衛著、岩波新書)

言うまでもなく、共産主義、社会主義は一敗地にまみれた。少なくとも、マルクス=レーニン主義は論理的にも、そしてこれが大事なのだが実践的にも歴史的生命は途絶えた。この苦い現実を認識するところからしか社会主義・共産主義の復活はありえない。だが、未だに護教論者のパワーは強く、それを直視しろというものへの迫害は強い。その迫害は右からではなく「左」からである(爆笑)。

一敗地にまみれた理由は色々ある。でも、死んだ子の歳を数えるようなことは飽きた。そんなことをしても、偉大なマルクス・レーニンから学ぶことは少しはあろうが、空しい。この本の巻末におけるシュームペーターらを引き合いにだした大内氏の言説が空しいように。

小生が一つ思うことは、主義は負けたがその主張は多く実現したと言えなくもない、ということである。勿論、マルクス主義の目標はプロレタリアートの主体の回復・解放であり、それの歴史的主張は未だ地上のどこでも実現していない。そんなことではなくて、例えば「状態」で知られる余りにもアレな労働者階級の窮状を救うには、マルクス=エンゲルスが言ったように労働者階級が団結するしかないこと、そしてその通り(少し姿は違うが)フェビアン派などを作って自らのありようを改善したイギリスの労働者のことである。究極的には解放されていないが、かなり改善はされた、そしてその闘い方は彼ら自身が言うようにマルクスらに学び、時によってはマルクスらの指示に従ったおかげである。

資本の原理を明らかにしたマルクス・エンゲルスは、その原理通りに進むことでどんなことになるかを予言した。そして、それを回避するには労働者階級の奪権、解放しかないことを言った。歴史はアレかコレかの二者択一のみをするものではない。現実は、社会の矛盾の行き着く先が予言されることによってそれを回避した。例え、それが超過利潤に買収された帝国主義本国労働者上層の利益であるにせよ、それはそれで分厚かった。

何が言いたいかというと、「マルクス主義はある程度の成功ゆえに没落した」ということである。だが、新自由主義というものは復活させようとしているが……。あひゃひゃ。日本での復活は日本の労働者組織=連合@眠れる豚次第だが。共産党?多分、ダメでしょう。

前置きが長くなった。この本は、英雄として崇められていた時代に書かれたマルクス・エンゲルスの良き入門書である。エンゲルス(紳士かつ常識人)はともかく、マルクスの人格については今はかなり問題があったことが定説である。だけど、実際に身の回りにいた頭の良すぎる人とマルクスは被ります。頭の良すぎる人には、情が深すぎて暴走しちゃう人ってのがいる。この本で読み取れるマルクスの熱情と、他のマルクス伝(決して、誉めているばかりじゃない)から読み取れるマルクスの暴走ってのは、友情なんですよね。マルクスの貧乏は収入がないがゆえのものではなく、収入があっても困っている奴を見ているとどうしようもなく金を与えちゃう病気に起因するものだし。勿論、この本では触れていないが。そんなマルクスの熱情に裏打ちされた偉大な仕事の概説です、この本は。内容は、まあいいや。パンフとして活用してくだされ。しかあし! そう書くだけではつまらん。マルクスってのは、そういう思い、熱情、愛の人であり、そういう愛を前提に=当たり前として問わず語りのこととした 人であったと思う。だから、マルクスはその出発点=自由主義者マルクスでのみ、「 #人間# としての #人間# を、そして人間的なものとしての世界にたいする彼の関係を前提とせよ。そうすれば、君は、愛は愛とだけ、信頼は信頼とだけ交換することができる」(俺が一番好きなマルクスの言葉)などと、臭い(失礼!)ことを言うのだ。

だけど、そうは言っても現実の無情さ、人間が作り出して人間が(少なくとも個人としては)制御できなくなった様々なものを 疎外やら労働やらをキーワードとして分析しだしたとき、彼は科学者となる。そして、その時彼は科学の言葉を使う。すると、読むものは「人間」を忘れてしまう。矛盾し、平気で言うこととやることが違う「人間」というものを! ここにマルクス主義というか科学的社会主義の悲劇がある。マルクスのドロドロ・ネトネトの文章には、科学とは裏腹の人間臭さがあるのに、人間が忘れられる。

一方、エンゲルスはもっとサラッとしている。クールな感じである。当時の西欧の最良の知識人・教養人らしく。マルクスの難渋でドロドロの文章を分かりやすく普及した功績は、エンゲルスに帰されるべきである。だけど、アツさがないわけではない。負けるとわかっていても、南ドイツの民衆蜂起に参加し、軍の副官として闘ったことは有名である。もう一つ。純粋に労働者階級と言いきれるわけではない小生が、労働者階級の闘いを側面から支える勇気というか、面の皮の厚さを超OK!と思わせてくれる人が、エンゲルスである。エンゲルスは、2万ャ塔h蓄財した。だけど、それの多くは労働者階級の解放のためであり、そのベストの選択としてのマルクスの生活を支えるためである。小生はどうなのか。知らん(笑)。彼ほど蓄財できるとは思えないし。

しかし、マルクス、復権して欲しいよなぁ~。オモロイやっちゃ。
コメント
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