むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

クリスマス・ショートショートでカウントダウン(12/22)「幸せのホワイトクリスマス」

2016年12月22日 | 創作 文芸/イラスト・漫画

 キャンパスに立っている冬枯れのイチョウの下で、大学生の田村宮子は僕に言った。
「今年はホワイトクリスマスになるのかしら」
 駅前のイルミネーションが輝くツリーの下で、OLの宮子は僕に言った。
「今夜は雪になるかしら」
 ホテルでウエディングドレスを試着しながら、宮子は僕に言った。
「ホワイトクリスマスになったら最高なのに」
 アパートの窓から空を眺めながら、赤ん坊を抱いた妻は僕に言った。
「今年はホワイトクリスマスかしら」
 息子に勉強しろと怒鳴った後、妻が僕に言った。
「ねえ、あなた、クリスマスには雪が降るかしら」
  夫婦二人ではもてあますクリスマスケーキを前に妻は僕に言った。
「雪は降りそうにないわね」

 そんなにホワイトクリスマスはいいものなのだろうか。

 そう思って、僕は調べてみたことがある。
 気象庁によると東京でホワイトクリスマスになったのは、観測が始まってから五○年間ないそうだ。一九一九年(大正八年)に雪が降ったらしいという記録があるらしい。一番近いところでは、一九六○年に雪が舞ったらしいということが解った。

 そんなことで、妻の期待もむなしくクリスマスが去っていくことが繰り返されていた。

 しかし、それもいつのころからか変わった。
 部屋の明かりを消しキャンドルだけが点る部屋。
 マンションの窓からは都会の夜景が輝いて見える。
 シャンパンの栓をとばし、グラスに注ぐ。
 小さな音を立てて乾杯。
「今年も来たわね。ホワイトクリスマス」
 妻の白髪がキャンドルの明かりに映える。
「そうだな……」
 僕はいささかはにかみながら自分の白髪頭をなでた。


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 一足早く年越しそばなど | トップ | クリスマス・ショートショー... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マイタ)
2016-12-22 22:02:59
読者登録ありがとうございます。
「むぎわら日記」で文章校正の勉強をさせていただきます。
今後ともよろしくどうぞ。(^。^)
返信する
>マイタさん (タック)
2016-12-22 22:49:47
いらっしゃいませ。
見直しせずにクリックしちゃってますので、校正しほうだいです。
どんどん、校正しちゃってください^^
こちらこそ、よろしくお願いします。
返信する
いい話ですねえ (八島正太郎)
2016-12-23 08:19:46
とっても、すばらしいショート小説ですね。
人生の機微というものが、にじみ出ています。
幸せな、ひとこまですね。
返信する
>いい話ですねえ (八島正太郎) (タック)
2016-12-23 18:41:36
ありがとうございます。

クリスマスには幸せな光景が似合いますね。
返信する
Unknown (Wolfen)
2016-12-24 06:59:31
素敵な物語ですね。心にジンと来ました。

私の故郷(三重)では、かつてイブから雪が降り始め三日ほど交通網がストップしたというクリスマス豪雪に見舞われたことがありました。もうコリゴリですw
返信する
>Wolfenさん (タック)
2016-12-24 08:07:59
ありがとうございます。

普段から雪に慣れていないところで雪が積もるとたいへんですよね。
私は新潟住みですが、ドカ雪は、ホワイトくるしみます です。
返信する

コメントを投稿

創作 文芸/イラスト・漫画」カテゴリの最新記事