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むぎわら日記

自然、読書、模型のことなど

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『COW HOUSE カウハウス』小路幸也 (ポプラ文庫)

2025年05月05日 | 読書
 商社に勤める20代のサラリーマンである主人公は、役員を殴り解雇の危機にあったとき、仕事ができる上司の部長に救われ、鎌倉にある使われていない会社所有の大豪邸の管理人として働くことになった。賃金は3割カットであるが、家賃、光熱費等は会社持ちである。恋人との同棲も上司から許可され、天才ピアノ少女と元国際的テニスプレーヤーの老人と知り合うことになる。
 救ってくれた部長も絡んで、だんだん面白いことになっていくという、サラリーマンのぬる~い夢を書き上げたような小説だ。
 そんなのは読んでいて退屈だろうと思われる人もいるだろうが、このぬるま湯に浸っている感じは捨てがたく、快感ですらある。
 鎌倉の高台にあるぬる~い露天風呂に浸りながら海をぼんやり眺めている。そんな癒し効果がここにあるのだ。
 ちなみに題名のCOW HOUSEは、直訳するとウシの家であるが、そこに集まった人たちが70代のじいさん、40代の部長、20代の主人公、10代の少女、がみんな丑年生まれだったから付けられた名前である。もう、題名からぬる~いのだ。
 さて、ここから生まれる新しいプロジェクトとは何か。最後には、商社の仲間を巻き込みながらプロジェクトが作動するのだが、熱い展開のようで、やっぱりぬるかった!
 
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『パワハラ上司を科学する』津野香奈美(ちくま新書)

2025年04月29日 | 読書
昨今、いろいろなところで話題になるハラスメントですが、その中でも一番わかりやすいのがパワハラですね。上司からはもちろん、同僚、部下からのパワハラもあるとか。
やっかいなのが、加害者に自覚がない場合がほとんどで、周りで見ている人も、それをパワハラだと思っていなかったり、賛同したり、容認したりすることです。
この本では、パワハラのパターン、加害者になりやすい性格、パワハラを行わないようにするにはどうするかについて、科学的というより統計的に書かれています。
特に面白いと思ったのは、放任型上司の危険性について書かれたところでした。パワハラ研修をすると、部下に対してなるべく関わらず自分の仕事を淡々とこなしていれば、パワハラをすることはないだろうと考えている人が多いそうです。しかし、これが一番危険です。パワハラ、いじめを見て見ぬふりをすると容認したことになり、それによってパワハラがエスカレートしていきます。また、上司が相談に乗ってくれないのは部下にとってはパワハラです。
また、仲が良い職場も要注意です。仲が良いと言うことは、その空気になじまない人を知らず知らずのうちにのけ者にしたり、その人が悪いという雰囲気ができてしまいます。
自分がパワハラをしていないかチェックする方法や、パワハラにならない部下の育て方など至れり尽くせりの内容で、管理職でなくても読んでおいて損はないでしょう。

退職して、雇われ人になる気がない自分にとっては、必要がない本なのですが、勤めていた時に出会った、もろパワハラ上司を思いだしながら読みました。これらの研修を受けさせてもらえていないのか、勉強不足なのかわかりませんが、やっぱり彼はアホだったなぁと思いながら読んでいました。本を一冊でも読んでいれば、ああはならないでしょうに(笑)。

みんな、気持ちよく成果が上がる職場であってほしいものです。


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『山の音』川端 康成(新潮文庫・角川文庫)

2025年04月23日 | 読書
戦争が終わって、復興の兆しが見え始めた日本。そこで暮す中産階級の家族の中にも、癒されることがない戦争の傷痕がうずくのです。
主人公の真吾は還暦を過ぎ鎌倉から東京の会社に通っているのですが、彼は戦争に行く年齢でもなく、特に戦争の直接の被害を被っていない人間です。彼の妻も同様ですが、息子の修一は帰還兵のため、やや冷めた心を持っています。親子であるにせよ心がどこかよそよそしく理解し合えない状態なのでした。
修一の嫁の菊子は、美人で真吾にもなついていますが、彼女は戦争では被害を被らなかった部類の人間です。そして、彼女も、修一とは一緒に暮らしながら心が通じ合っていない状況のようでした。
また、修一の浮気相手の女とその同居の女性は、戦争未亡人であり、彼女の友達で真吾の会社の事務員の英子も恋人を戦争で無くしています。彼女たちとのやり取りもぎこちなくしてしまう真吾。
なぜかと言えば、日本古来から続く家族を取り巻く常識が、帰還兵の男の傷ついた心理や、夫や恋人を失った女性には通用しないのです。そのことによって、戦争の被害を大きく受けなかった主人公は、戸惑うばかりなのでした。
そして、古い日本の象徴として思い出されるのが、若くして亡くなった妻の姉の美しい姿なのです。
戦争が残した人間同士の間にある傷痕が、戦争が終わっても元に戻れない日本の家族のつらさを描いた物語なのです。
一般的な解釈とは違う角度から作品を分析してみましたが、どうだったでしょうか。


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『独学の思考法』山野弘樹(講談社現代新書)

2025年04月20日 | 読書

地頭を鍛える「考える技術」が、副タイトル。

表題に独学とありますが、独学とは関係ない内容だったので面喰いました。

前半は、本を読むとき、どのように線を引いたり、色をつけたりするのがよいかという学生や学者の本との向き合い方が書かれています。この辺りが独学というタイトルの所以なのでしょうが、独学じゃなくても通用するものです。

後半は、対話の仕方についての提言となっていました。この程度のことは、社会人として身に付けておいた方が良いくらいの話です。

著者は哲学専攻で、哲学者の悪い癖である簡単なことを難しく表現する内容となっていて、ある程度、勉強している社会人なら自然に身についている程度のことでした。

とは言え、高齢なのに身についていない人も多く見かけることも確かですので、新人、中堅、管理職になる節目に確認の意味で読んでも良い本に仕上がっていると思います。
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『山怪 弐 山人が語る不思議な話』田中 康弘(ヤマケイ文庫)

2025年04月18日 | 読書
『山怪』の続編となります。山怪に入らなかった余ったネタだろうから、パワーが落ちているのではないか? と怪訝な気持ちで読み始めましたが、そんなことはありませんでした。
それどころか、話を引き出す技術が向上していて、不思議なことや怖いことにあったことがないと言う人からも、そういえば……という感じで聞き出しています。そういう話の方がリアリティがあって面白かったりするのです。
また、地域によってはタヌキの仕業だったり、キツネの仕業だったり、四国では狗神だったりするのですが、ただの不思議な話で終わってしまう地方もあり、場所による解釈の違いも指摘されていました。
酒の席での奇譚語りの域がでないですが、テレビが普及していなかった時代の娯楽を感じさせ、山の中で熾火を見つめ暗闇を背にしながら聞いている雰囲気があって、それ自体が神秘と感じる時代になったのだと思いました。


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『怖い患者』久坂部羊(集英社文庫)

2025年04月16日 | 読書
悪い医師もいれば、当然、怖い患者もいるのです。
ちょっと、性格に難がある患者や医師が主人公の短篇集となっています。いや、ちょっとどころではなく、精神異常の範疇だと気づいたときには、物語の終わりに来ているパターンです。
作者が現役医師であり、医療現場の描写や、薬剤などの記述がリアルです。久坂部羊の本を読むと、「こんなこと、お医者さんが書いちゃっていいの?」と思うような黒い描写の連続で、しかも首を縦に振りながら読んでしまう説得力。
そして、まあ、冗談だよね、と思って本を置けるある種の軽さ。
このバランス感覚が、ブラックなユーモアとして、自分の中の悪魔がほくそ笑むのでした。癖になります。


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『少年たちはなぜ人を殺すのか』 キャロル・アン・デイヴィス(文春新書)

2025年04月12日 | 読書
イギリス・アメリカを中心に幼くして殺人を起こした少年・少女たちの事例を列挙し、その後、事件の裁判・報道を分析しながら、今後の社会の在り方を問う内容です。
事件の列挙が半分くらいを締めていますが、1日2事例ずつ読もうとしたところ、居たたまれなくなり1事例ずつ読んでいきました。
著者の主張は、少年・少女たちが犯行に及ぶのは、幼いころからの虐待・ネグレクト・過干渉が原因であるというものです。確かに、読んでいられないほどの虐待を受けているのですが、時に法廷の場ではそれを無視され、報道の場ではホラービデオやゲームに矛先が向くことに社会の在り方を問います。
アメリカ・イギリス圏では、キリスト教の影響か、道具を使った暴力(しつけ)が正当化されているようで、日本人としてはそれだけできつすぎるように感じます。日本の場合は、ネグレクトや過干渉の事例が多そうです。
また、社会では、大人は善・子どもは悪と決めつける傾向があり、大人の証言を重要視する傾向が強いと主張していました。そして殺人を犯した少年・少女たちは生まれつきの悪と断じる論調が多いと嘆いています。
確かに、親が暴力的だと、それを模倣するのが子どもですから、殺人にまで発展していくのは自然の成り行きに見えます。しかし、暴力がない生活になることによって、その性質は消えていく事例も多々あり、暴力など振るわなくても良いならそれに越したことはないというのが子どもたちの本来の性質でしょう。
一部の例外を除き、ほとんどの事例では、子どもにおける性善説が成り立つと思えました。


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『魚ビジネス』ながさき一生(クロスメディア・パブリッシング)

2025年04月11日 | 読書
「食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養」が副タイトル。
寿司屋から、鮮魚店、缶詰等加工食品、養殖と天然、細胞培養、うまい魚料理を出す居酒屋の見分け方まで、食べるための魚のトリビアがギッシリ詰まっている食魚の豆知識本になっています。
魚は取り方、処理の仕方などから品質・値段が変わることや、新鮮な魚が良いとは限らないことなど面白知識が満載です。
角上魚類が売れているわけや、荒巻鮭と、越後村上の塩引き鮭の違いに言及しているところは流石。
やけに新潟辺りに詳しいなと思っていたら、筆者は新潟県能町(現:糸魚川市)筒石の漁師の家で生まれ育ったということでした。
魚好き(食べる方)の人、これから魚を楽しみたい人は目を通しておいて損はないですね。
ちなみに、サバ缶は、製造月が秋冬のもので古いものがおいしいとのこと。秋冬に脂がのり時間をかけてなじんでいくそうです。

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『虹の岬の喫茶店』森沢明夫(幻冬舎文庫)

2025年04月07日 | 読書
トンネルを抜けるとすぐに、小さな喫茶店の看板がある。左折すると書いてあるが、その道は草が生い茂り轍が微かについているだけのだ。恐る恐る入っていくと、視界が開け海が広がる。そして、岬に建つ喫茶店を発見するのだ。
これで経営が成り立つとは思えないが、三本足の犬に案内され店内の入ると、老婦人がコーヒーを入れてくれる。そして、音楽。お客がリクエストしてもいいけれど、老婦人にセレクトさせると、その人に合いそうな曲をかけてくれるのだ。壁に掛けられている岬から見える海にかかる虹の絵が、この店の存在の理由のようだ。
現代版、迷い家とも言えるその喫茶店を訪れる人たちの様々なドラマを描いた連作短編集となっています。訪れる人たちは、何かを抱え、何かを降ろし、何かを得て去っていく。それを自然体で持てなす老婦人と三本足の犬は、ここで何を待っているのでしょう。
どの話も、切り口が違って退屈しません。作者の懐の広さのなせる業です。


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『駆逐艦「野分」物語』佐藤 清夫(光人社NF文庫)

2025年04月04日 | 読書
子どもの頃、児島襄著の『太平洋戦争 (上)(下)』(中公新書)を愛読していて、その中で、駆逐艦「野分」がたびたび登場して活躍する印象が残っていました。駆逐艦は、最前線で絶えず活動しており、大局にさえ影響を与えていたことになります。
この本を手に取ったのは、そんな「野分」の活躍を読みたかったのですが、そうとはなりませんでした。
筆者が野分に乗ったのは、1年にも満たない期間で、太平洋戦争も終盤です。従って、戦争前半の華々しい活躍は、さーっと流されて、後半の苦闘の部分が多く描かれていました。また、人事に対する記述が多く、乗組員中心の話になっています。
戦争中とはいえ、めまぐるしく人事が行われていたことに驚きました。生き残るには、ここでの運が大きく関与していたのです。
そんな中で、トラック島より引き上げるとき、スプールアンスが乗艦するアメリカ海軍最強の高速戦艦ニュージャージーとアイオワに40cm砲の砲撃を受けながら、追撃を振り切った場面などは、実際に筆者が体験したことなので迫力が違いました。
野分の最期については、行方不明とされていましたが、アメリカ軍の資料が開示され、今度はハルゼー率いる高速戦艦部隊(またもやニュージャージー、アイオワ基幹、軽巡洋艦3隻、駆逐艦8隻)に捕捉される撃沈されたことがわかります。
野分の乗組員の生き残りは居ませんでしたが、重巡「筑摩」のただ一人の生き残りの証言により、野分は単艦戦場に残り撃沈された筑摩の乗組員を多数救助していたことが知られました。
常に最前線で戦った駆逐艦の姿が垣間見れる一冊でした。

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