スタジオジブリの新作で、難解と評判の作品を金曜ロードショウで放送すると言うので興味深く鑑賞させていただきました。
構成としては、キャロルの『不思議の国のアリス』、マクドナルドの『リリス』に代表される王道ファンタジーで、動物に誘われるように異世界に迷い込む話です。特に難解とは感じませんでした。
題名の「君たちはどう生きるか?」は、日本人に対しての監督からのメッセージなのでしょうが、素直に受け取るなら、「自分は、こういうふうに生きたから、君たちはどう生きるの?」という意味だと思います。題名の問いに作品の中で答えていないので難解と言われるのではないでしょうか。その答えは、視聴者の中にあるのです。
「日本人に対して」としたのは、北米での公開される題名を『少年とサギ』としているからです。他の国の人に対しては、王道ファンタジーを楽しんでくださいということでしょう。
少年のお父さんは、監督自身の父親と職業、性格が重なっていますので、そのものずばりです。監督の母親はずっと病床にいたため、母親らしいことをしてもらっていないようですので、その辺の描写はないですね。母親は産んでもらった人であり、幻のようなものであるのでしょう。
アオサギは高畑勲だと思います。監督は高畑勲の下で働くことからアニメの世界に入り込み、その技術を盗みながら、腕を上げていきます。ケンカをしたりもしましたが、やがて肩を並べビジネスパートナーとしてスタジオジブリを運営していきます。
しかし、芸術肌で金に糸目をつけず採算を考えない高畑勲に対し、経済的な成功を考える芸術家になりきれない自分に対して歯がゆさを感じていることも自分で純粋ではないというセリフに現れていましたね。
王道のファンタジー路線に自伝をミックスして、どちらにもとれるようにしたので、やや重層的な作品になり、一般のアニメ視聴者には難解と言われる作品になったのでしょう。