むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『銃口』三浦綾子(小学館)

2022年12月09日 | 読書
三浦綾子の最後の小説となった作品です。
主人公は、学校の先生になりたくて学校の先生になった心優しい青年です。
小学生のときの先生を敬愛し、幼いころから同級生だった女性と純愛しながら、治安維持法と戦争の渦に巻き込まれていく物語です。
子供を愛し、日本のために生きる子に育てているのに治安維持法に触れた疑いで逮捕されるなど、理不尽な扱いに耐えるしかない実情でした。その後、釈放されたものの、出兵し敗戦により満州からの脱出を試みます。
主人公は、三浦綾子らしい完全無欠に近い人格を目指す良い人ですが、過酷な状況の中で自分の弱さを発見して悩んでいきます。
最後には 弱さを認めて生きることが、ほんとうの強さなのでしょう。
たくさんの人たちの生き死にがありながら、最後は大団円となりました。
不条理にどう生きるか問われるところがカミュの『ペスト』などに通じるところがあると思いました。

コメント
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