はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

先達

2006-06-23 09:28:59 | 出来事
歳をとると、涙もろくなるという。
それは多分、共感によるものだ。いろんな事を経験し成長していく中で、人は多くの成功と挫折を学ぶ。目の前の事象を、自分の中の経験の引き出しと照らし合わせてイニシャライズし、感じることができる。
でも、時には例外もあって。

日本VSブラジルを見ながら、サポーターの多くは共感していた。日本代表が現在進行形で味わっている敗北。積み上げてきたものが崩壊していく姿。
試合終了のホイッスルが鳴ると、中田はピッチに倒れた。力無く空を見上げ、放心していた。フランス大会から8年。依然として、世界の壁は高く厚い。
彼が感じていたのは何だろう。人種の違い。環境の違い。どうしてここまで差がつくのか。自分にできたことは何なのか。できなかったことは何なのか。
ただひとつだけいえるのは、その日その時その立場でドイツの空を見上げていたのは彼だけだということだ。
カイザースラウテルンの空は青かったか。
ドルトムントの夜は暑かったか。
風は。
食事は。
どんな人達が暮らしていたか。
どんなことを話したか。
背中に触れた芝生の感触。
もう二度と味わえぬもの。
少年時代から憧れ、願いやまなかったもの。
失うということ。
それだけは、誰にもイニシャライズできない、彼だけの時間だった。

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