広く浅く

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こけしバス

2013-01-15 21:19:40 | 秋田のいろいろ
この塗装のバスを見て、どんなバス(路線とか行き先とか)だか想像つきますか?
行き先表示で分かってしまいますが
僕は、小田急シティバスと秋田中央交通が共同運行する、秋田市と新宿を結ぶ夜行高速路線バス「フローラ号」専用車だと思ってしまう。

では、これは?
上の色違い
こちらは、秋田-仙台の高速路線バス「仙秋号」のうち、中央交通担当便の車両の印象がある。


ところが正解は、どちらも秋田市内と秋田空港を結ぶリムジンバス。
緑系の塗装の車両は、湯沢や能代方面の秋田県内の高速バスに使われることもある。(オレンジ系の車両も使われている可能性がある)

個人的には、この塗装のバスといえば、長距離高速バス専用車の印象が強く、リムジンや県内路線を走っているのには違和感がある。
実は、上の2台の車両は、実際に元々はそれら高速バスの専用車で、経年により格下げされて、現状の使い方をされている。緑のほうは元仙秋号用で数年前に転用、オレンジのほうはつい最近、フローラ号または仙秋号から転用されたようだ。
元フローラ号用ならば、座席配列を3列から4列に替える改造は受けていることになる。しかし、車両後部のトイレのスペースはそのまま(使っていない可能性が高い)だし、何よりも塗装がそのまま。
窓の黒い部分がトイレスペース
つまり、できるだけカネをかけずに格下げしたかったのが伺えるが、それが僕には違和感を感じさせていることになる。
そして、バスに乗ろうと待っている客の立場からすれば、ややこしいことこの上ない。(通常のリムジンや県内高速は、貸切バスと同じ塗装

どちらも格下げ車。この時は緑が高速湯沢、オレンジがリムジンに使われていた

この塗装は、秋田中央交通の“専売特許”ではなく、小田急バスでも見ることができる。※現在は子会社「小田急シティバス」の車両
現在は、フローラ号のほか、広島や岡山方面などの夜行高速バスでも、同じ塗装のバス(というか同じバス)が使われているという。
ただし、広島や岡山方面の便では、小田急担当便だけがこの塗装で、共同運行先の地元バス会社はそれぞれの塗装の車両が入っているようだ。

つまり、この塗装は、[秋田中央交通と小田急シティバスにだけ存在]し、秋田中央交通では[フローラ号(主にオレンジ色?)、仙秋号(主に緑色?)、およびそれらの格下げ後の高速・リムジン]用として、小田急では[地方発着高速夜行バス]用として使われていて、[フローラ号だけがこの塗装のバスで統一されている]ということになる。
なお、小田急には、オレンジ色系統、緑色系統のほか、色違いの青系統のもあり、フローラ号にも3色とも使われている。
【2018年1月17日追記】1990年の仙秋号運行開始時に使われていた秋田中央交通の車両では、青い塗装の車が存在したようだ(側面窓下には、当時のフローラ号と同じ書体で「HIGHWAY EXPRESS」と表示)。上記の通り、その後2010年代までのどこかで青がなくなって、オレンジと緑だけになったということのようだ。


歴史をさかのぼると、この塗装が出現したのは、1988年のフローラ号の運行開始時。(たぶん当初はオレンジ色系統だけだったと思う)
新しい夜行高速バスであることをPRしようと、小田急と中央交通共通の新塗装を設定したのだろう。当初は、正面や側面に大きく「FLORA」と記されていた。
その後、上記の通り、両社とも他の高速バスにも、同じ塗装のバスを投入することになっていき、フローラ号専用塗装ではなくなったけれど、フローラ号には両社とも使い続けていることになる。これに伴い、車体の「FLORA」表示は、小田急では「ODAKYU(と一部車両は犬のエンブレム)」表記に変わった。中央交通も「AKITA CHUO KOTSU」に変わったが、フローラ号用の正面だけは「FLORA」が残る。


この塗装、バス愛好家の間では「こけしバス」とか「こけし塗装」と呼ばれることがある(各色を赤こけし・緑こけし・青こけしと呼ぶこともある)。たしかに民芸品のこけしが並んでいるように見えなくもない。
でも、ネット上の一部に、「(フローラ号の目的地である)秋田特産のこけしをモチーフにしたのではないか」という記述があるのは、間違いだろう。
なぜなら、まず、こけしの本場は宮城。秋田でも湯沢の「木地山こけし」などはあるが、フローラ号沿線ではないし、秋田県全体を代表する特産品とまでは言えない。
それに、バスの塗装を見ると、頭がないこけしや、頭が2つ3つ重なったこけしが描かれていることになるが、こんな気持ち悪いこけしなど、ない。
あくまで、「こけしっぽく見える」から「こけしバス」と呼ばれるのでしょう。
この緑こけしは「AKITA CHUO KOTSU」がずいぶんと前寄りでアンバランス

2社が共同運行するフローラ号が発祥で、今は両社それぞれに使っているこけし塗装の存在は、小田急と中央交通の“仲の良さ“の表れと言えるだろう。
中央交通にとっては、大手の小田急と仲良くすることのメリット(中古車を優先的に譲ってもらえたりとか)は大きいし、社長が若い頃に修業させてもらった恩もあるだろうから、良好な関係を続けたいのはよく分かる。一方、小田急にしてみれば、全国各地にあまたある“田舎の小さなバス会社”の1つに過ぎないように思える中央交通に対して、ちゃんと相手をしてくれているのは、何か目的があるのだろうか?
損得や利害関係抜きの「真の友情」で結ばれているか、切るに切れない「腐れ縁」なのかもしれませんが…


※「夜行高速路線バス」という表記について
記事の最初で、フローラ号のような「夜から朝にかけて、主に高速道路を走行し都市間を運行する路線バス」のことを「夜行高速路線バス」とさせてもらった。これは公式な名称ではない。一般的には「高速バス」とか「夜行バス」と呼ばれることが多いかと思う。
ネット上やテレビでは、このようなバスのことを「深夜バス」とか「寝台バス」と呼ぶことがままあり、昨年の事故で問題となった「ツアーバス」と混同しているケースも多く見られる。
このことがちょっと気になるので、誤解を招かないであろう「夜行高速路線バス」という名称を作ってしまいました。

ちなみに、「深夜バス」とは、大都市圏などで深夜(23時以降など)に運行される一般路線バスのこと。(割増料金がかかることが多い)
「寝台バス」では、「寝台」つまりベッドがあることになってしまうが、日本ではそのようなバスの運行は認められない(1960年代に札幌市交通局が作ったものの、横転事故を起こし、規制されたそうだ)。
また、単に「高速(路線)バス」では、仙秋号のような昼間のバスと区別ができないし、「夜行バス」ではツアーバスや深夜バスをも含むようにも受け取れる。
【2015年10月15日追記】北海道テレビ制作で全国で人気のバラエティ番組「水曜どうでしょう」内では、夜行高速路線バスのことを「深夜バス」と呼んでいるそうで、この影響もあるのだろう。

※こけし塗装の屋根について、この記事中ほどに

※2019年8月頃に、仙秋号用に青こけし塗装の新車(同型のいすゞ・日野1台ずつ)が2台導入された。
中央交通ホームページによれば「仙秋号運行開始30周年を記念し、運行開始時の青系のカラーリングを復刻」したそうで、ナンバープレートも30-01と30-02。
中央交通にしてみれば、青こけしが途絶えていたのだから「復刻」なんだろうけど、小田急では継続しているわけで、微妙な復刻。

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2 コメント

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Unknown (雪こまち)
2013-01-16 11:44:52
湯沢出身の者ですが、緑こけしはよく羽後交通湯沢営業所で待機しているの見掛けますね!
オレンジもたまにあります。

高速秋田湯沢線は週末や連休になると結構利用者いるので、格下げでも比較的新しい車両が入るのは良いですね。

羽後交通はオンボロバスなんで(笑)

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赤こけしも (taic02)
2013-01-16 19:46:47
赤こけしも県内高速路線に使っていましたか。

秋田-横手・湯沢の高速バスは、JRより安いし、本来ならもっと利用者いてもいいと思うのですが…
快適性の提供の意味では、こけしバスは充分に貢献していますね。

担当会社による車両の格差は問題ですね。以前、羽後交通担当便に乗った時は「これが高速を走るの?」と驚きました。
ただし、もちろんシートベルトやETCは付いているし、車両の手入れそのものは、中央交通よりも丁寧できれいに感じました。
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