広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

正月の五能線

2020-01-07 00:18:31 | 旅行記
正月に弘前に行った話の続き。順番を入れ替えて、帰りに乗った「リゾートしらかみ」について。
※元日かつ区間運休という特殊な日の乗車記ですので、その点をご了解の上、ご覧ください。
荒れ模様ながら五能線でも運休にはならない程度と予想して(後述の理由もあって)、前日に指定席券を購入。

乗ったのは、青森始発の「リゾートしらかみ4号」。弘前14時30分発、秋田18時56分着。
冬場は弘前折返しの3・6号は運行されないため、4号が上り最終。
この時の使用編成は、ハイブリッド車の2代目「ブナ(正式には漢字)編成」。
千畳敷駅(後述)にて
2018年春デビューの新ブナ編成には乗ったことがなかったし、久々に冬の日本海を見るのも悪くないと思って乗ることにした。なお、五能線内で4号に乗るのも初めて(東能代→秋田は経験あり)。

予想通り、弘前を定刻で発車。
しかし、この日の午前中は五能線内で速度規制(強風のため?)がされ遅延と一部運休が出ていた。折返し4号となる1号も遅れて、1・4号とも弘前-青森間で区間運休=弘前折返しになっていた。
ちなみに、青森・新青森から乗る予定だった人は、15分ほど後の普通列車に乗れば、川部駅で弘前から来た4号を捕まえることができるダイヤ。

元日のリゾートしらかみの利用状況が予想できなかった。青春18きっぷ期間だし、正月の観光列車だし、でも正月から五能線に乗る人なんているかとか…
前日に予約できた席は、五能線内でいちばん前の車両の前のほう、しかも海側窓際と、なかなかいい席。空いているのかな?

結論としては、海側の窓際が全席埋まるほどではなかったが、なかなかにぎわっていた。
団体客はさすがにおらず【7日補足・いずれも1~2人旅がほとんどだった】、地元の人、国内旅行客、外国人もちらほら。五所川原で降りる人はいつものように多く、ウェスパ椿山で降りて不老ふ死温泉の送迎バスに向かった人(時間的に宿泊か)や、もちろん乗り通す人も。
【7日追記】極端に空いている場合に、普通の座席に座っていると、車掌が来て「よろしければボックス席をお使いください」とコンパートメント風の1区画を独占させてくれることがある。今回はそれをするには多すぎる客数だった。


ブナ編成の形式はHB-E300系。2010年末デビューの2代目青池編成と形式としては同じ。
相違点は、内装に木材(秋田スギや青森ヒバ)を多用したこと、3号車に売店「ORAHO(おらほ)」カウンター を設置したこと。JR東日本エリアの車内販売縮小により、2019年4月からリゾートしらかみでも車販は実施されなくなったが、この売店は継続。

車内。

座席の柄は、青池編成では、盛岡支社「リゾートあすなろ」や長野支社「リゾートビューふるさと」と共通。ブナ編成は「東北の夏祭りをイメージ」した暖色系の四角のパッチワーク風で鮮やか。
床や壁は、青池編成(これも盛岡・長野も同じ)では、床はフローリング、壁は最近の列車に多い白系の樹脂。
ブナ編成では、床・壁とも板。床は青池とは色やはめる向きが違っている。窓枠部分は白い樹脂で、少し違和感もあるが、目障りなほどではない。天井は木と樹脂が両方使われている。
全体として、温かみがある車内に感じた。

床板にはぽつぽつと傷のようなもの
2年でこうなってしまったのだとすれば、メンテナンスが大変そう。

運転席直後の「展望室・イベントスペース」。
ここも従来とは違う
まず目を引くのが、右奥の「シンボルツリー」。
椅子やランプシェードには、弘前の「ブナコ」や秋田木工の製品を採用。

上の写真で、いちばん前・右側の席は、上りで海側最前席となる4号車11A席。
しかし、目の前に大きな出っ張りがあって視界をさえぎり、シンボルツリーも前の大きな窓も、隠れてしまっている。反対の1号車側にはなく、4号車だけこうなっているようだ。気動車の宿命である排気筒でも入っているのか。
横の窓はあるし、逆向きの下りでは無関係だけど、前面展望を期待して上りでこの席を取ると、がっかりすることになりそう。この日の11Aはずっと空席だったので、優先的には予約されないことになっているのかも。

天井の液晶ディスプレイには、以前は沿線紹介のビデオや運転席のカメラからの前面展望映像が放映されていた。今回は、ずっと黒いまま何も映らず。
座席前のポケットには、以前は東能代運輸区お手製の沿線ガイドが入っていたこともあったが、現在は何もなし。
駅などでも手に入る冊子「五能線の旅」を手元に置いておくと、途中駅の時刻などが分かって便利。以前は展望スペースにあったが、現在はデッキ付近にしかなかった。

車内放送は、自動放送は従来同様、JR東日本の新幹線と同じ。
チャイムは、これまではクラシック曲4曲(5曲?)だったのが、聞いたことがない曲に代わっていた。音色はよりリアルなオルゴール風。
帰ってから調べたら「リゾートしらかみ3兄弟のテーマ」。JR東日本秋田支社社員が考案したキャラクター(過去の記事)に、さらに社員が作った歌もできて、それがチャイムになっていたのだった。
場違いではない音だけど、何の曲か気になる人もいるだろうし、車内で説明がないと分からない。


五能線に入ってしばらくはリンゴ畑や田んぼが多い津軽平野を走る。
展望室から
架線がない分、まさに真っ白い世界を貫いて進むのは、雪国に暮らす者でも少し感動。

木造(?)駅で遅れていた反対列車を待って5分強の遅れ。
例によっては車掌は鰺ケ沢、運転士は深浦で交代。
海が見えてくると、もちろん荒れている。漁港の漁船には、日の丸が掲げられていた。

リゾートしらかみは、千畳敷駅で15分停車し、乗客は岩の海岸を散策できる(1往復は通過)。この時は、遅れの影響で8分ほどに短縮。
以前乗った時は、到着前の放送で、発車5分前に汽笛(警笛)を鳴らすので戻ってくるようにという注意があったが、今回はなし。千畳敷海岸の説明(殿様が畳を敷いたうんぬん)と、長く停車することだけだった。
何より寒いから、乗客たちも降りたくないだろうなとも思った。

実際には、多くの乗客が降りて、道路を渡って海岸へ行っていた。
波は高いが、風も寒さもそこまでは厳しくなく、秋田市のひどい時に比べればマシに感じられたが、暖かいところから来た方々ならば…と考えたが、皆さん旅慣れているのか。

僕も降りたけれど、海辺はパス。冬の千畳敷駅のもう1つの見どころを見ることにした。
線路の海と反対側は段丘の崖になっており、そこからしみ出た水が凍結して、氷のカーテンを作るのだ。※いつも水が流れる「滝」ではない。
千畳敷駅。左が海
今年は寒さが厳しくないせいか、前に写真で見たほど発達してはいないが、崖全面が凍り始めていた。

到着前の放送での予告はなかったが、発車の何分か前に警笛が長ーく、大きく、3度鳴った。【8日補足・予告なしだったので、車内にいて何事かとびっくりしている人もいた。】
以前乗った時は、たしか2度で、駅出口に近い下り列車の後部・車掌側で鳴らしていたようだ。今回は、逆向きであるせいか前・運転士側で鳴らしていた(車掌も前へ来ていた)。
それと、車掌がまもなく発車する旨を、車外スピーカーを使ってアナウンスしていた。海辺までは聞こえないだろうけど。
千畳敷駅ホームから海
1組が千畳敷駅で下車した(=散策して戻るのでなく、戻らずにそのまま降りたという意味)のには驚いた。弘南バスに乗り換えるのか、1時間後の下り5号に乗るのか、民宿に宿泊するのか。
遅れを解消して16時13分千畳敷発車。向かいの民宿兼イカ焼き屋の人が1人だけ、手を振って見送ってくれた。

日暮れが迫ってくる中、海の車窓はクライマックス。ほんのちょっとだけ雲が切れて、陽の光が見えた。
 
夕日もいいけれど、こんな風景もいい。16時半を過ぎた深浦から先は、真っ暗になった。【8日補足・暗くなったとたんに眠くなり、岩館から能代の間だけ寝て、東能代からは奥羽本線での高速走行を楽しんだ。】


これまで、HB-E300系には3回乗っている。滑らかで電車と同等の加速の、いい車両。
今回気になったのは、エンジンが動いている時間が、前に乗った時より長く感じたこと。ほぼ絶え間なく稼働していた。
そのため、エンジンの音と振動は感じるが、客室内では防音防振されているのか、あまり気にならなかった。
暖房でそんなに電気を食わないと思うから、寒さでバッテリーの持ちが低下していたのか。


最後に、車内販売のこと。
上記の通りワゴン販売が廃止されたため、その代わりという名目で、沿線の人たちが入れ替わりで区間を限って乗りこんできて、食べ物やお土産を車内販売する「ふれあい販売」が実施されている。
曜日や列車によって内容や有無が異なるが、この日の4号は一切なし。
ちなみに、津軽三味線演奏など車内イベントもなし。元日だからそれはしかたない。

したがって、ORAHOカウンターが頼り。
駅弁は4種類くらい売っていると聞いていた。しかし、この日は最初から期待していなかった。
なぜなら、通常の上りでは青森駅で積みこんでいるはずで、区間運休でできないと思われたから。案の定、駅弁は何も置いていなかった。
ちなみに、弘前駅改札外の地元の弁当(駅弁としては非公式)「津軽弁」の出店もなかった。

飲み物。
パンフレットの写真では、ペットボトルのお茶やコーラもケースに並んでいる。
しかし、この時はそれらはなく、沿線の瓶入りリンゴジュースとサイダー(と酒)だけだったようだ。ひょっとしたら、区間運休の影響かもしれないが、ペットボトルが全部売り切れていたとは考えにくい。
これではちょっと物足りないし、ペットボトルがあれば確実に売れるだろうにもったいない。
【7日飲まないのですっかり忘れていたので追記】定番のホットコーヒーも扱っていたようで、カウンター内の海側窓に向かったビュッフェ風スペースで飲んだり、紙コップを自席へ持ち帰ったりする人が見られた。あらかじめポットに淹れたのを注いで売るのでなく、都度、ポーションを白神山地の水のお湯で希釈する方式らしい。じゃあ、その「白神山地の水」だけを売ってくれても??

それからアイスクリーム。スジャータと地元のものと、何種類かあるという情報を得ていた。
現在はスジャータはなくなり、いずれも秋田関係の4商品。
「枝豆アイス(JAあきた湖東・花立牧場工房ミルジー)」、「華の里こまちアイス」、「平鹿林檎と濃厚ミルクのソフトなアイス」と、
「ぶなの森アイスクリーム 緑茶味」※裏面の表示では「ブナ」とカタカナ表記
「リゾートしらかみ限定」つまり今はブナ編成でしか購入できないことに引かれて買ってしまった。2代目ブナ編成デビュー時にできた商品だそう。
秋田市の「ノリット・ジャポン」雄和工場製。100ml330円、無脂乳固形分12.0%、乳脂肪分8.5%で種類別アイスクリーム。
「緑茶味」を称しながら、原材料名欄にはそれらしき材料は使われておらず、「緑茶風味」か。
そもそも、ブナと緑茶の関連が不明。単に色が同じだから?

ほんのりお茶の味(風味)がして、おいしいことはおいしかった。
でも、リゾートしらかみ限定をうたうのならば、もっと関係が深い味や材料にしたほうがいい。例えば、緑茶にこだわるのなら、能代の北限のお茶「檜山茶」を使うとか。
これなら、他の3つのアイスのほうが魅力的だ。


ORAHOカウンターのレシートを見てびっくり。
レシートの上と下の抜粋。冒頭に「LiViT」
担当する企業が、日本レストランエンタプライズ(NRE)でなく、JR東日本東北総合サービスに代わっていた! ネット上の情報では、少なくとも2019年10月の時点で変更済み。
表示された連絡先は「秋田支店トレインクルーセンター」なる初めて聞くセクションで、所在地は秋田駅の中。しかも電話番号は、かつてNREの秋田列車営業支店と同じ。

NRE秋田支店を、そっくりLivitに移管したようだ。
秋田の列車で、車内販売が行われているのはこのブナ編成ORAHOカウンターのみ。そのためだけにNREの拠点を置くのは効率が悪いのだろう。(ただLivitとしても、効率はどうだろう。多くても1日1往復で運行しない日もあるのだから)
秋田から引き上げてNREの青森側で担当しているのかなと思っていたが、こういうやり方か。
【7日補足】2019年7月で、JR東日本管内すべての車内販売業務がNREから「JR東日本サービスクリエーション」という企業へ移管されていた。秋田列車営業支店では、サービスクリエーションではなくLiViTを移管先にしたということかもしれない。車両の基地は秋田ということもあるし、秋田側での商品搬入拠点も必要で、秋田から引き上げずにこの形になったのかも。

メニュー一覧が少なくとも目立つ場所にはなかったり、スナック菓子類がなかったり、聞いていたのと若干内容が違ったりしたのも、担当会社変更が関係しているのだろうか。
何も地元のものだけを売る必要はない【7日補足・「おらほ」の趣旨からは外れてしまうけど】、というか4時間以上も走る列車でこれでは物足りない。工夫次第でもっと売れると思う。
【7日追記】そこそこ売れていたコーヒーや酒をさらに支える売り上げを追求したほうがいいと思う。青池編成にはカウンターはないが、いずれ新造されるであろう2代目くまげら編成でどうなるか注目。


飢えたりエコノミークラス症候群・熱中症にならないよう、飲食物には注意【7日補足・五能線内を乗り通す場合は、ペットボトル1本と腹の足し(今回は工藤パン商品)を確保して乗車することをおすすめします】だけど、やっぱり五能線の風景は良かった。
※正月の弘前の続きはこちら

【2023年1月11日追記・リゾートしらかみの車内販売について】この後、新型コロナウイルス感染症や大雨による長期運休があった。2022年12月24日からは、セルフレジによる無人販売が始まり(2021年10月から試験搭載)、ORAHOカウンターは廃止された。
「飲料や菓子類、鉄道グッズなどを販売し」「ホットコーヒーやアルコール類は販売しません」とのこと。弁当やアイスはないのでしょうね。

2023年6月の千畳敷海岸。 その他リゾートしらかみブナ編成乗車記
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