広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

ACのCM

2012-01-08 18:04:19 | その他もろもろ
昨年の大震災直後、各企業がテレビCMを流すのを控えたため、その埋め合わせとして重宝されたのが「ACジャパン」のCM。「ポポポポーン」のあいさつCMがにわかに話題になった。

ACジャパンの起源は1971年にさかのぼり、1974年から2009年までは「公共広告機構」という名称(「AC」が通称)だった。
民間企業などが会員となって会費を出して運営する公益社団法人で、広告の制作は会員の広告会社が行い、広告料は無料だそうだ。
個人的には、1980年代に放送された「まんが日本昔ばなし」とタイアップした「もったいないおばけ」などのシリーズが印象に残っている。でも、最近のACのCMは、あまり心に響かないような気がしている。(テレビを見る時間が減ったことも原因かもしれない)


そんなACのテレビCMの中で、(昨年の夏頃から存在したようだが)昨年末に初めて見たものがあり、それにとても違和感を感じてしまった。
3つある「2011年度全国キャンペーン」の1つで、ACの40周年記念で公共心をテーマにした「魔法使いの少年」というタイトルがついたもの。
実際の広告内容はACのサイト(http://www.ad-c.or.jp/campaign/self_all/01/index.html)に出ているが、僕が初見の際に受けた感覚としては、
視点は車のドライバー(独り語り)。
疲れて車を運転していると、押しボタン式信号(の車両用信号機が)が赤になったので停まった。
たった1人の小学生が横断するだけで、自分や周囲の車の運転者たちは、うんざりしたり時間を気にしたりしながら、信号が変わるのを待った。
すると、横断し終えた小学生が、車に向かって頭を下げた。
小学生の「ありがとう」の気持ちが伝わり、心を打たれた。
といったような内容。
新聞広告

テレビCM
新聞広告版では、歩行者用信号機のアームが異様に長くなっていて、信号柱も異なる(下部が膨らんで、制御箱が付いていない)。いずれも画像加工されているのだろう。

この広告は、AC40周年の「作文コンクール」最優秀賞作品を元にしたらしい。
制作会社は「電通名鉄コミュニケーションズ」(名古屋鉄道と電通が折半して出資)。

じっくり見聞きして少し考えれば、押しボタン信号、横断歩道うんぬんは、あくまで道具の1つに過ぎず、「どんな場面でも相手に感謝したりみんなを思いやる気持ちを持ちましょう」ということを伝えたいのは分からなくもない。


しかし、そんなことよりも、全体的に「クルマの傲慢さ」が漂い、それを肯定する(が言い過ぎとすれば「否定しない」)広告のように感じてしまう。
言うまでもなく、押しボタンだろうがなんだろうが赤信号では止まらないといけないし、横断歩道を横断する歩行者を車が妨げることはできない。自動車専用道路以外においては、歩行者が最優先である。
それなのに、この広告では「押しボタン信号で停められることはクルマにとって迷惑だ」「赤信号でクルマは『停まってやっている』のだ」「横断歩道を渡る歩行者は、クルマに感謝しろ」と言っているようにも受け取れる。
特に“ながら視聴”されやすいテレビCMでは、うわべだけ見て誤解されるかもしれない。日頃から傲慢な運転をする人なら、自分の行為を正当化してしまうかもしれない。

歩行者の中には、(あまり通行量が多くない道路において)赤信号にして車を止めるのを申し訳なく思って、押しボタンを押さずに道路を横断している人を時々見かける。(理由はともかく信号無視だ)
こんなCMを流されたら、余計、ボタンを押しづらくなるに違いない。



全国的にはどうか知らないが、秋田でクルマの運転を見ていると、もっと歩行者を思いやって欲しいと思うことが多い。(もちろん、歩行者側にもドライバーに無駄な神経を使わせないような配慮は必要)
先週の秋田市内。除雪されたが路肩に雪がたまる。現在はさらに雪が増えた
例えば、今は道端に除雪された雪の雪山ができており、足元は滑りやすい。
道幅が狭い道路では、車と車、歩行者と車が交差する際、どちらかが待って相手を交わさないとならない。(上の写真では、車も人も互いにうまく交わしている)

それが車どうしの場合、8割方、ドライバーどうしがあいさつを交わしてすれ違うだろう。
しかし、歩行者と車の場合、歩行者が立ち止まって待っても、歩行者には目もくれず、中にはタバコをふかしたり携帯電話を耳に当てて知らん顔で通り過ぎるドライバーも少なくない。
(もちろん、歩行者に対しても感謝の意を伝えてくれるドライバーや、歩行者が通り過ぎるまで停止して待ってくれるドライバーもいる。そんなクルマには礼をしたくなる)


そんなクルマたちを見ていると、よくもあんなクルマの傲慢さを助長する広告が流せるもんだと、腹立たしくなった。
むしろ、逆に歩行者の視点で「通り過ぎるクルマからあいさつをもらえて心を打たれた」というCMを作るか、そもそも「歩行者保護の運転マナー啓発」CMを作るべきだ。
ACへ文句を言ってやろうと思ったら、同機構はメールは受け付けていない。(電話、FAX、郵便で受け付け)年賀はがきの余りでも使おうか…


そういえば、ACと紛らわしいのに「JARO」があった。
「日本広告審査機構」で、昔のCMの通り「ウソ・大げさ・紛らわしい」などの広告の苦情・問い合わせを受け付け、審査して広告主へ改善を促す(強制力はない)機関。
JAROのテレビCMを最近は見ない気がするが、昔は、クレイアニメ(?)のお姫様などが出てきて「JAROってなんじゃろ?」というCMが、ACのもったいないおばけシリーズやハウス食品のCMとともに、早朝のアニメ番組(ABSの一休さん再放送など)で何度も流れていた。
「クルマの危険運転を助長する」という意味では、このACのCMも充分「紛らわしい」と思う。でも、「意見広告およびこれに類する広告」はJAROでは扱えないそうなので、ACのCM自体がこれに該当しそうだから守備範囲外なのかもしれない。


最後に、この広告の撮影地。
背後に海が見え、海沿いの道はわりときれいに整備されていて、どこかで見たような(行ったことがあるような)気がした。

神奈川県鎌倉の江ノ電沿線のような気がして、Googleマップのストリートビューで確認すると、間違いなさそう。
厳密な場所は特定できなかったが、神奈川県道134号線の由比ヶ浜海水浴場前、江ノ電由比ヶ浜駅の南の「鎌倉海浜公園」南西角に、よく似た押しボタン信号があった。
神奈川県では車両用信号機には「押しボタン式」表示がないらしい
歩行者用信号機(小糸製の電球式で「押ボタン式」表示あり)、電柱や押しボタン・制御箱、後方の看板や道標の配置は酷似しているが、看板の枚数や柵の形状は異なっている。
CGで加工したのか、あるいはストリートビューが2010年3月撮影なので、その後CM撮影時までの間に変わったのかもしれない(し、まったく別の場所なのかもしれない)。

【10日訂正】コメントをいただき、撮影地が判明。上記地点より西に進んだ、稲村ヶ崎付近とのこと。
ストリートビューで見てみると、電柱や背景の看板は、「稲村ヶ崎駅入口」の押しボタンでない交差点と、その西隣(セブンイレブン裏)の押しボタン信号の両方の一部分を合成しているようにも思えた。


秋田市は積雪がついに40センチを超えた。
雪道では、歩行者もクルマも、いつも以上に余裕を持ち、互いに譲り合って感謝し合って通りたいものです。
コメント (4)
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