東日本大震災や原発事故とその後の諸対応に伴い、節電が求められている。冷房需要期の現在は特に厳しい。
JR東日本では、駅やオフィスでの節電をしているが、秋田支社管内では普通列車車内(リゾートしらかみや特急は対象外)でも節電が行われている。
4月15日頃からは、車内の蛍光灯が間引かれている(滅灯)。
「701系電車」車内。右手前の蛍光灯が外されている
奥羽本線・羽越本線・津軽線を走る701系電車では、客室内天井に直管蛍光灯の長いもの(40ワット型?)と短いもの(18ワット型か20ワット型?)が1車両当たり10~11本ずつ設置されている。(トイレ内や乗務員室内分を除く)
このうち、長いの3本と短いの2本が取り外された。各車両とも同じ位置のものが撤去されているようだ。JRのリリースによれば、「蛍光灯の減灯により、室内灯の消費電力を約30%削減することができます。」とのこと。
報道によれば、読書ができる程度の明るさを確保したそうだが、実際に乗ってみても別段不便はない。天井を見なければ滅灯に気づかないかもしれない。
やけにガラガラですが…
電車はブレーキをかけたときのエネルギーから電気を作ることができ、いわば電気を再利用する仕組みがあるので、この程度の滅灯で実際に東北電力に対してどれだけの節電効果があるのかは分からないが、やらないよりはいいか。
トンネルに入ってもそれほど気にならない
6月24日からは、さらに厳しくなった。
リリースによれば、空調では「冷房については、節電を意識し極力使用を控え窓開けを実施します。」「(冷房を使用する場合は)現行の設定温度より2℃高い設定を基本とします。」
室内灯では「9 時から16 時までは「消灯」を基本としますが、天候等の状況を判断して室内灯を点灯することがあります。なお、トンネル区間については室内灯消灯の取り扱いから除きます。」「蛍光灯の減灯については継続して実施」
とのこと。
また、電車でなく気動車(ディーゼルカー)を使用する男鹿、五能、花輪の各線でも同様に実施するとのこと。
僕はこれを知って、蒸し暑くて薄暗い列車で移動するイメージが湧き、気が重くなった。
実際はどうなのか、6000円で東北地方のJRとほとんどの私鉄・3セク鉄道が3日間乗り放題の「東北ローカル線パス」を使って乗ってみた。
※国が言う節電は、平日の昼間が特に求められていますが、乗ったのはいずれも土日です。
※掲載した画像は、実際の見た目の明るさと完全に同一ではありません。
まずは、蒸し暑い晴天の昼間に秋田から新青森まで北上。
701系電車は、半分ほどの窓しか開かないので、暑い日は全開にしてもたかが知れていると思っていたが、いずれも冷房(もしかしたら送風だけかも?)が入っていたのでひと安心。暑からず寒からず、適切な温度だったと思う。
そして室内灯。
秋田→東能代:消灯
東能代→大館(車掌は秋田から引き続き乗務):点灯。二ツ井近辺にトンネルがあるためだと思うが、前山駅以遠のトンネルがない区間でも、点灯したまま。
大館→弘前:ワンマン運転のため点灯(ワンマンでは細かな調整が難しいため、消灯を実施しない)
これならまったく問題ないと思えた。むしろトンネルのない鷹ノ巣から大館辺りも消してもいいんじゃないかと思ったり。
しかし、弘前から先では…
弘前駅停車中。暗くありません?
弘前駅のホームは、橋上駅舎の下にあるので薄暗い。
それなのに、消灯して停車していたものだから、もう「まっ暗」状態。
この電車の窓ガラスは着色されているため、元々外から車内が見づらいこともあるのだが、一瞬、乗ってはいけない回送列車かと思ってしまいそう。
※秋田駅も同じ構造だが、気にならなかった。光線状態や停車位置の関係だろうか。
発車後も、弘前→新青森(弘前までとは別乗務員)全区間で基本的に消灯。途中の「大釈迦トンネル」内のみ点灯し、しかもトンネルを出るやいなや消された。
新青森駅の在来線ホームも、秋田・弘前同様、上に駅舎(と新幹線ホーム)があって薄暗い。
新青森駅在来線ホーム。上の茶色いのが駅舎・新幹線ホーム
それなのに、消灯したままなものだから、
外から見てもまっ暗
車内もまっ暗
視力などによっては車内の様子が分かりにくく、ドア部分に段差があるためつまづいてしまう危険もある。
新幹線乗り換えで大荷物の客だっているんだから、駅停車中だけでも点灯するべきだと思う。
ある意味、秋田支社のリリース内容通りの対処だが、これは行きすぎた節電(もしくは気の利かない車掌)だ。
車掌個人個人の判断基準を統一するのは無理だし、もしかしたら所属運輸区ごとの方針があるのかもしれないが、誤乗や事故につながらないよう、安全第一の節電をお願いしたい。
帰りは薄曇りだった。空調は全区間で作動し、ワンマンでない(交代で3人の車掌が乗務した)のに全区間で車内灯が点いていた。
車内放送では、行きの車掌は2人とも消灯や滅灯の案内しかしなかったが、帰りの車掌のうち2人は、「冷房の設定温度を高めに設定」していることも案内していた。
これは回送なので消灯中
橋上駅舎下での消灯は危険なので要改善だと思うが、それ以外はこの程度の我慢で済むなら続けてほしい。
でも、節電とは関係のない気動車路線までも同様に節電する(最近は乗っていないので、実情は分かりません)のは、どうかなと思う。
電車路線の乗客の不公平感をなくしたり、乗客に「節電意識」を持ってもらったり、燃料の節約にはなるだろうけれど、「電力を確保するために節電する」のではなく「節電のために節電」しているような感もある。
一方で、ガラガラの特急列車が煌々と点灯しているのを見ると、もったいなく思えるし、矛盾を感じる。
【9月7日追記】8月下旬に男鹿線の気動車(キハ40系)に乗ったところ、冷房は作動し、蛍光灯は間引き点灯していた。ただし、701系と異なり、蛍光灯は取り付けたままで消灯していた。キハ40では、蛍光灯のスイッチ・配線が複数系統あるようだ。【2018年12月11日訂正】キハ40系では、車両の蛍光灯灯具1台ごとの出っ張った側面に小さなON/OFFスイッチが付いていた。それを使って個別に消していたのだろう。
※この後、気動車の滅灯は2015年春頃まで続いた。
ちなみに、JR東日本ではないが、今回乗った他の鉄道会社では、
十和田観光電鉄(全列車ワンマン):1つおきに消灯(蛍光灯は取り付けたまま)。空調停止
青い森鉄道(全列車ワンマン):間引きなしでフル点灯。空調作動
だった。
弘南鉄道など地方私鉄では、震災と関係なく、日頃から昼間は消灯している所もあるが、この2社はいずれも点灯していた。
中でもJRと親密な関係にあり、新青森駅まで車両が乗り入れている、第3セクター鉄道「青い森鉄道」は、節電しているそぶりがまったく感じられなかった。
同じ東北電力の電気を使っているのだし、もうちょっと足並みを揃えてもいいのではないだろうか。
鉄道に限らず、どんな分野(公共施設やオフィスでも家庭でも)においても、どこまで節電する必要があるのか、本当に意味がある節電なのか、判断は難しい。
今回の一件が、今までの電気との付き合い方を考え直す機会であることは間違いない。
ところで、昔の「ドリフ大爆笑」のコントでこんなのがあった。
列車内が舞台で、志村けんがワゴンの車内販売員。乗客は仲本工事かな(←違うかもしれない。「もしも」コーナーで扱われたこともあったそうだ)。
乗客がカップ酒を買って飲もうとすると、列車がトンネルに入り車内が真っ暗に。
トンネルを抜けて明るくなると、酒の量が少し減っており、志村さんの顔が赤くなっている。
トンネルが次々にあり、その度にそれが繰り返され、「あんた私の酒飲んでるでしょ?」と言われても、べろんべろんの志村さんが「おらぁ飲んでねぇーだよ」と答えていておかしかった。
(類似編として、ステテコみたいな格好のいかりや長介と学生服の前川清が、トンネルを通る度に少しずつ服装が入れ替わっていくのもあった。)
その時、「おもしろいけど、トンネルに入っても車内に照明があるからまっ暗にならないよ!」と思ったもの(昔の列車はどうだったんだろう?)だが、下手すると現実になりかねない。
そんなわけで、青森県の今まで行ったことのないエリアを中心に訪れました。おいおいアップします。
JR東日本では、駅やオフィスでの節電をしているが、秋田支社管内では普通列車車内(リゾートしらかみや特急は対象外)でも節電が行われている。
4月15日頃からは、車内の蛍光灯が間引かれている(滅灯)。
「701系電車」車内。右手前の蛍光灯が外されている
奥羽本線・羽越本線・津軽線を走る701系電車では、客室内天井に直管蛍光灯の長いもの(40ワット型?)と短いもの(18ワット型か20ワット型?)が1車両当たり10~11本ずつ設置されている。(トイレ内や乗務員室内分を除く)
このうち、長いの3本と短いの2本が取り外された。各車両とも同じ位置のものが撤去されているようだ。JRのリリースによれば、「蛍光灯の減灯により、室内灯の消費電力を約30%削減することができます。」とのこと。
報道によれば、読書ができる程度の明るさを確保したそうだが、実際に乗ってみても別段不便はない。天井を見なければ滅灯に気づかないかもしれない。
やけにガラガラですが…
電車はブレーキをかけたときのエネルギーから電気を作ることができ、いわば電気を再利用する仕組みがあるので、この程度の滅灯で実際に東北電力に対してどれだけの節電効果があるのかは分からないが、やらないよりはいいか。
トンネルに入ってもそれほど気にならない
6月24日からは、さらに厳しくなった。
リリースによれば、空調では「冷房については、節電を意識し極力使用を控え窓開けを実施します。」「(冷房を使用する場合は)現行の設定温度より2℃高い設定を基本とします。」
室内灯では「9 時から16 時までは「消灯」を基本としますが、天候等の状況を判断して室内灯を点灯することがあります。なお、トンネル区間については室内灯消灯の取り扱いから除きます。」「蛍光灯の減灯については継続して実施」
とのこと。
また、電車でなく気動車(ディーゼルカー)を使用する男鹿、五能、花輪の各線でも同様に実施するとのこと。
僕はこれを知って、蒸し暑くて薄暗い列車で移動するイメージが湧き、気が重くなった。
実際はどうなのか、6000円で東北地方のJRとほとんどの私鉄・3セク鉄道が3日間乗り放題の「東北ローカル線パス」を使って乗ってみた。
※国が言う節電は、平日の昼間が特に求められていますが、乗ったのはいずれも土日です。
※掲載した画像は、実際の見た目の明るさと完全に同一ではありません。
まずは、蒸し暑い晴天の昼間に秋田から新青森まで北上。
701系電車は、半分ほどの窓しか開かないので、暑い日は全開にしてもたかが知れていると思っていたが、いずれも冷房(もしかしたら送風だけかも?)が入っていたのでひと安心。暑からず寒からず、適切な温度だったと思う。
そして室内灯。
秋田→東能代:消灯
東能代→大館(車掌は秋田から引き続き乗務):点灯。二ツ井近辺にトンネルがあるためだと思うが、前山駅以遠のトンネルがない区間でも、点灯したまま。
大館→弘前:ワンマン運転のため点灯(ワンマンでは細かな調整が難しいため、消灯を実施しない)
これならまったく問題ないと思えた。むしろトンネルのない鷹ノ巣から大館辺りも消してもいいんじゃないかと思ったり。
しかし、弘前から先では…
弘前駅停車中。暗くありません?
弘前駅のホームは、橋上駅舎の下にあるので薄暗い。
それなのに、消灯して停車していたものだから、もう「まっ暗」状態。
この電車の窓ガラスは着色されているため、元々外から車内が見づらいこともあるのだが、一瞬、乗ってはいけない回送列車かと思ってしまいそう。
※秋田駅も同じ構造だが、気にならなかった。光線状態や停車位置の関係だろうか。
発車後も、弘前→新青森(弘前までとは別乗務員)全区間で基本的に消灯。途中の「大釈迦トンネル」内のみ点灯し、しかもトンネルを出るやいなや消された。
新青森駅の在来線ホームも、秋田・弘前同様、上に駅舎(と新幹線ホーム)があって薄暗い。
新青森駅在来線ホーム。上の茶色いのが駅舎・新幹線ホーム
それなのに、消灯したままなものだから、
外から見てもまっ暗
車内もまっ暗
視力などによっては車内の様子が分かりにくく、ドア部分に段差があるためつまづいてしまう危険もある。
新幹線乗り換えで大荷物の客だっているんだから、駅停車中だけでも点灯するべきだと思う。
ある意味、秋田支社のリリース内容通りの対処だが、これは行きすぎた節電(もしくは気の利かない車掌)だ。
車掌個人個人の判断基準を統一するのは無理だし、もしかしたら所属運輸区ごとの方針があるのかもしれないが、誤乗や事故につながらないよう、安全第一の節電をお願いしたい。
帰りは薄曇りだった。空調は全区間で作動し、ワンマンでない(交代で3人の車掌が乗務した)のに全区間で車内灯が点いていた。
車内放送では、行きの車掌は2人とも消灯や滅灯の案内しかしなかったが、帰りの車掌のうち2人は、「冷房の設定温度を高めに設定」していることも案内していた。
これは回送なので消灯中
橋上駅舎下での消灯は危険なので要改善だと思うが、それ以外はこの程度の我慢で済むなら続けてほしい。
でも、節電とは関係のない気動車路線までも同様に節電する(最近は乗っていないので、実情は分かりません)のは、どうかなと思う。
電車路線の乗客の不公平感をなくしたり、乗客に「節電意識」を持ってもらったり、燃料の節約にはなるだろうけれど、「電力を確保するために節電する」のではなく「節電のために節電」しているような感もある。
一方で、ガラガラの特急列車が煌々と点灯しているのを見ると、もったいなく思えるし、矛盾を感じる。
【9月7日追記】8月下旬に男鹿線の気動車(キハ40系)に乗ったところ、冷房は作動し、蛍光灯は間引き点灯していた。ただし、701系と異なり、蛍光灯は取り付けたままで消灯していた。
※この後、気動車の滅灯は2015年春頃まで続いた。
ちなみに、JR東日本ではないが、今回乗った他の鉄道会社では、
十和田観光電鉄(全列車ワンマン):1つおきに消灯(蛍光灯は取り付けたまま)。空調停止
青い森鉄道(全列車ワンマン):間引きなしでフル点灯。空調作動
だった。
弘南鉄道など地方私鉄では、震災と関係なく、日頃から昼間は消灯している所もあるが、この2社はいずれも点灯していた。
中でもJRと親密な関係にあり、新青森駅まで車両が乗り入れている、第3セクター鉄道「青い森鉄道」は、節電しているそぶりがまったく感じられなかった。
同じ東北電力の電気を使っているのだし、もうちょっと足並みを揃えてもいいのではないだろうか。
鉄道に限らず、どんな分野(公共施設やオフィスでも家庭でも)においても、どこまで節電する必要があるのか、本当に意味がある節電なのか、判断は難しい。
今回の一件が、今までの電気との付き合い方を考え直す機会であることは間違いない。
ところで、昔の「ドリフ大爆笑」のコントでこんなのがあった。
列車内が舞台で、志村けんがワゴンの車内販売員。乗客は仲本工事かな(←違うかもしれない。「もしも」コーナーで扱われたこともあったそうだ)。
乗客がカップ酒を買って飲もうとすると、列車がトンネルに入り車内が真っ暗に。
トンネルを抜けて明るくなると、酒の量が少し減っており、志村さんの顔が赤くなっている。
トンネルが次々にあり、その度にそれが繰り返され、「あんた私の酒飲んでるでしょ?」と言われても、べろんべろんの志村さんが「おらぁ飲んでねぇーだよ」と答えていておかしかった。
(類似編として、ステテコみたいな格好のいかりや長介と学生服の前川清が、トンネルを通る度に少しずつ服装が入れ替わっていくのもあった。)
その時、「おもしろいけど、トンネルに入っても車内に照明があるからまっ暗にならないよ!」と思ったもの(昔の列車はどうだったんだろう?)だが、下手すると現実になりかねない。
そんなわけで、青森県の今まで行ったことのないエリアを中心に訪れました。おいおいアップします。