ツガザクラに比べ葉が広く米粒みたいということなのでしょうコメバツガザクラという名前が付けられています。ミネズオウと並んで人形石の付近にたくさん見られました。これも低木で岩陰の隙間などにこんもりと葉を茂らせながら全体で鎧をまとった形態で生育しています。花の季節ですから小さな坪型の花を数個固めてつけます。さすがに花は昆虫の花粉媒介を期待することもあって葉の鎧よりも上部に花柄を出してつけています。
コメバツガザクラは普通単独では生育していません。このような大株になって地面を覆い尽くすような塊で暮らします。葉を密生させその下が一定の安定した空間になるようにしているように見受けられます。高山に生育する種の一つの適応スタイルです。
淡い色の葉を展開させているクロマメノキ。その葉と区別が付けにくいような花を一緒に咲かせています。高山の種は葉と花が同時というのが多い気がします。短い生育適期のためでしょうか、クロマメノキもそういう性質を持った種です。開花結実後は果実を熟させ種子を散布する必要があるわけで、高山帯では十分な時間があるわけではありません。
見事な坪型の花で下からのぞいても内部の様子がよくわかりません。ミネズオウの花は上を向いて咲くのに対して多くの高山に住むツツジ科の低木の花は下向きに花を咲かせます。クロマメノキもその仲間の花で、さらに口を絞り込んだ坪型の花。おそらく雨の対策に徹しているのでしょう。ここを訪れる昆虫は狭い入口を通り抜けなければなりません。
ミネズオウの花に圧倒されて写真を撮りまくっていたら、その一角にひっそりとヒメイチゲがありました。ハイマツなどの木陰に風をよけるような位置にポツンポツンと見られます。イチリンソウ属の仲間は群生することが多く、ヒメイチゲも場所によってはまとまることもあると思いますが西吾妻連邦の尾根筋ではかろうじて生きているというような印象を受けました。
高山植物でも人気の高いサンカヨウです。この個体は葉も花も開いている状態でしたが、ほとんどの株は芽が出たばかり。芽が出たばかりと言ってもサンカヨウは花を咲かせながら葉を展開する面白い性質の持ち主ですから芽出しの状態を見て、それがサンカヨウと正確にわかる人がいませんでした。サンカヨウの花の咲きだしは早い方で、花を見る危機が比較的少ないのですが、この時期はもっと早めのタイミングでしたからいい勉強になりました。
もっと早い段階はこの白い花もないすりこ木状のものナノですが、そこからいきなり白い花を開花させ、やや遅れて葉は展開してくるという性質があるのです。こういう姿を目にするには残雪が多い6月の高山に行かなくてはならないのです。なかなか神秘的な姿ではありませんか。
サンカヨウの花弁は濡れていると向こうが透けるような状態になります。乾くと復元するのですがこういう性質も不思議なものですね。夏場は青い実が熟し少しだけジューシーな果実になりますから、疲れた山歩きの祭の元気づけとして一粒二粒口に含みます。
葉が針状でネズミをも刺すということでしょうか、ネズミサシという種の高山型と考えられます。ハイマツと同じように地に這いつくばって生育しています。白い丸いものは果実。雌雄異株ですからこの株は雌株ということになります。さらに、果実は昨年秋にできたもので、冬越しをしてここまで成長したことになります。完熟したものは黒っぽくなって落ちていくはずです。
詳しいことは分からないのですが、ミヤマネズの近縁種にホンドミヤマネズとなずけられたものがあります。葉が弓状に曲がる特徴があるそうで、この拡大写真では葉は直線的ですからホンドミヤマネズではなくミヤマネズであると思います。ミヤマネズの球果が時々見ますが、花は確認したことがありません。地味で小さなものなのでしょうが、ネットで探しても見つかりません。
コメツガの球果です。この鱗片の内側に種子があるはずですから、この部分が雌花ということになります。ミヤマネズも雌花も同じような位置づけでしょう。それにしてもコメツガの雄花やミヤマネズの雄花は確認したことがないですね。