壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

唐辛子の種

2010年04月25日 23時21分11秒 | Weblog
        此の種と思ひこなさじ唐辛子     芭 蕉

 どのように味わうべきか、一瞬ためらってしまう句である。
 唐辛子の種をのぞき込んで、「此の種と思ひこなさじ」と感じとっている姿は、なかなかなつかしく、思わずほほえんでしまうものがある。
 「思ひこなす」は、侮(あなど)るの意。つまり、軽くみてばかにする、みくびる、の意。
 「思ひこなさじ」の「じ」は、助動詞「む」の否定を表す。「…ないだろう。…まい」の意の推量の否定と、「…ないつもりだ。…するまいと思う」の意志の否定とがある。

 季語は「(唐辛子の)種」で春。「唐辛子」は秋の季語。

    「こんな小さな種といって侮るまいぞ。これが、秋にはあの真紅の、ぴりりと辛い実となる
     唐辛子の種なのだ」


      花苗を提げてゆふべの街の空     季 己