しばらくは花の上なる月夜かな 芭 蕉
花と月との映発しあった春の夜の情をつかんで的確な作品である。明るすぎるくらい明るい情景をうたって、その中に一抹の水のような寂寥をにじませているのは、「しばらくは」が、月と花との映りあう美しさの中に、移ろうものの姿を言いとめているからであろう。貞享五年吉野の作という。
「月夜」は秋の季語であるが、ここでは「花」が季語で春。
「この月は、やがて西へ傾き去るであろうが、しばらくの間は花の上にあって、花と照り映え
とけあって、まるで夢のような春の夜の景である」
「お独りで寂しくないですか」と、聞かれることが時たまある。「寂しくない」と言ったらウソになるかもしれないが、独りが当たり前になっているので、返答に困ってしまう。
友人のS君の学生時代の詩に、こんなのがある。
待つ時間と
待った時間とは
ちがいます。
独りでいる寂しさと
独りになった寂しさとが
ちがうように。
わたしの場合は、「独りでいる寂しさ」であって、「独りになった寂しさ」ではないので……。
咲きみちて風をよぶ花 塔伸びる 季 己
花と月との映発しあった春の夜の情をつかんで的確な作品である。明るすぎるくらい明るい情景をうたって、その中に一抹の水のような寂寥をにじませているのは、「しばらくは」が、月と花との映りあう美しさの中に、移ろうものの姿を言いとめているからであろう。貞享五年吉野の作という。
「月夜」は秋の季語であるが、ここでは「花」が季語で春。
「この月は、やがて西へ傾き去るであろうが、しばらくの間は花の上にあって、花と照り映え
とけあって、まるで夢のような春の夜の景である」
「お独りで寂しくないですか」と、聞かれることが時たまある。「寂しくない」と言ったらウソになるかもしれないが、独りが当たり前になっているので、返答に困ってしまう。
友人のS君の学生時代の詩に、こんなのがある。
待つ時間と
待った時間とは
ちがいます。
独りでいる寂しさと
独りになった寂しさとが
ちがうように。
わたしの場合は、「独りでいる寂しさ」であって、「独りになった寂しさ」ではないので……。
咲きみちて風をよぶ花 塔伸びる 季 己