壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

夏近し

2010年04月28日 22時42分42秒 | Weblog
        夏近し其の口たばへ花の風     宗 房(芭蕉)

 『犬子(えのこ)集』には、
    山風の吹口とぢよ樺桜(かばざくら)
    風袋口ぬひとめよいとざくら
 のような例が見られる。この句の「口」というのも、風神の持っているという風袋(かざぶくろ)の口であると考えられる。

 「たばへ」は、他動詞「たばふ」の命令形で、
    ①惜しむ。大切に守る。
    ②大切にしまっておく。たくわえる。
    ③おおう。かばう。
 などの意があるが、ここでは②の意。

 「花」も春の季語であるが、この句では「夏近し」が季語で春。

    「春はもうすぐ暮れようとして、夏は近い。桜の花も間もなく見られなくなるだろう。
     花に吹く風よ、残り少ない花を散らすことなく、その風の袋の口をしっかり閉めて
     おいて、夏の涼風として大切にとっておいてくれよ」


      夏兆す母の歩幅ものんびりと     季 己