枯芦の間にただよう姿、潮に群集して啼きかわす姿、夕映えの海上を一列に連なって飛ぶ姿、どれもが絵になる水鳥である。
雁・鴨・かいつぶり・鴛鴦など、水に浮かぶ鳥を総称して水鳥という。秋に渡ってきて、春に去るものが多いので、冬の季語となったようである。
鴛鴦(をしどり)は、ガンカモ科の水鳥で、単に「をし」ともいう。
水鳥の中でも、最も色彩豊かで美しい翅の色を持っている鴛鴦は、夏の間は山地の水辺に棲み、高い木の洞(うろ)に巣を作って繁殖する。秋冬の間は、平地の河川や湖沼・池などにその一部が降りてくる。
静かさやをしの来ている山の池 子 規
鴛鴦は雌雄異色で、雄の冬羽は、緑・藍・紫・橙色など多彩で美しい。雄にはまた、“思い羽”という独自のトレードマークがあって、よく目立つ。
鴛鴦のいづれ思ひ羽思はれ羽 狩 行
昔は、狩猟鳥であったので、その美しい羽を求めて、むやみに捕獲する者が多く、その数が次第に減ってきたので、後に、保護鳥として捕獲が禁止されることとなった。
鴛鴦の羽の色の美しさは、主として雄に限っていると思われているが、雄の羽の色も、季節によって大変な違いがあり、繁殖期を過ぎると、雄雌ほとんど違いはなくなるといわれている。
鴛鴦の水鴛鴦をはなれて輝けり 火 童
昔から「鴛鴦(えんおう)の契り」という言葉があるように、鴛鴦の雌雄には、一定の番(つがい)がある。雌雄つねに離れず並んで泳ぎ、枝に眠るときには、互いに首を差し交わし、翼も交わして、常に仲睦まじく暮らしているので、夫婦仲のよいことにたとえられ、人も羨むばかりである。
詠み人知らず
夜を寒み 寝覚めて聞けば 鴛鴦の
羨ましくも 水馴るなるらむ (『拾遺集』巻四)
仲のよすぎる鴛鴦に、子規は、独り者の人間に少しは同情しろと、八つ当たりしたとかしないとか。
人間のやもめを思へをし二つ 子 規
しかし、そんな八つ当たりはご無用。見かけは一夫一婦の操を守っているようでも、この鴛鴦、内実はけっこう浮気者で、雌雄誰とでも仲良くする、いたって要領のよい鳥だということである。
すると、雌雄どちらかが捕らえられると、他の一羽は思い焦がれて死ぬ、といわれているのは……。
想ひ出の夕日の中に鴛鴦二つ 季 己
雁・鴨・かいつぶり・鴛鴦など、水に浮かぶ鳥を総称して水鳥という。秋に渡ってきて、春に去るものが多いので、冬の季語となったようである。
鴛鴦(をしどり)は、ガンカモ科の水鳥で、単に「をし」ともいう。
水鳥の中でも、最も色彩豊かで美しい翅の色を持っている鴛鴦は、夏の間は山地の水辺に棲み、高い木の洞(うろ)に巣を作って繁殖する。秋冬の間は、平地の河川や湖沼・池などにその一部が降りてくる。
静かさやをしの来ている山の池 子 規
鴛鴦は雌雄異色で、雄の冬羽は、緑・藍・紫・橙色など多彩で美しい。雄にはまた、“思い羽”という独自のトレードマークがあって、よく目立つ。
鴛鴦のいづれ思ひ羽思はれ羽 狩 行
昔は、狩猟鳥であったので、その美しい羽を求めて、むやみに捕獲する者が多く、その数が次第に減ってきたので、後に、保護鳥として捕獲が禁止されることとなった。
鴛鴦の羽の色の美しさは、主として雄に限っていると思われているが、雄の羽の色も、季節によって大変な違いがあり、繁殖期を過ぎると、雄雌ほとんど違いはなくなるといわれている。
鴛鴦の水鴛鴦をはなれて輝けり 火 童
昔から「鴛鴦(えんおう)の契り」という言葉があるように、鴛鴦の雌雄には、一定の番(つがい)がある。雌雄つねに離れず並んで泳ぎ、枝に眠るときには、互いに首を差し交わし、翼も交わして、常に仲睦まじく暮らしているので、夫婦仲のよいことにたとえられ、人も羨むばかりである。
詠み人知らず
夜を寒み 寝覚めて聞けば 鴛鴦の
羨ましくも 水馴るなるらむ (『拾遺集』巻四)
仲のよすぎる鴛鴦に、子規は、独り者の人間に少しは同情しろと、八つ当たりしたとかしないとか。
人間のやもめを思へをし二つ 子 規
しかし、そんな八つ当たりはご無用。見かけは一夫一婦の操を守っているようでも、この鴛鴦、内実はけっこう浮気者で、雌雄誰とでも仲良くする、いたって要領のよい鳥だということである。
すると、雌雄どちらかが捕らえられると、他の一羽は思い焦がれて死ぬ、といわれているのは……。
想ひ出の夕日の中に鴛鴦二つ 季 己