壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

侘助が咲けば

2008年12月28日 20時27分49秒 | Weblog
 いよいよ今年も余すところ、あと三日。
 顧みれば、中国製ギョーザで中毒・無差別殺人・岩手宮城大地震・金融不安・雇用問題などなど、大変な一年であった。
 そのためか、今年の世相を表す漢字に「変」が選ばれたという。変人の「変」でもあるのだが、喜ぶことは出来ない。
 個人的には、年頭の“誓い”で達成できそうなのは、このブログただ一つだけ。この元日から大晦日まで、欠かさずブログを書き、最後に俳句を一句つけて、毎日更新する、というものだ。今日で363日目。あと3回……。
 周囲の方の「ブログ読んでるよ」の声に、どれだけ励まされたことか。いま改めて御礼を申し上げる。ありがとうございました!

        侘助が咲けばこの年かへりみる     澄 雄

 春にさきがけて咲く梅よりも早く、寒中に咲く寒椿よりも早いものに、侘助椿がある。
 ただ、一番早いのは、白玉椿で、これは椿の中でも、最も品格が高く、九月の末、十月の初めに、大輪で牡丹咲きの美しい花を開く。
 重なりあった六枚の真白い花びらが、心もち首をかしげて、黄金色に飾られた雄蕊の輪をのぞかせる。飽かず眺めていれば、世の中の憂さ辛さを忘れさせてくれるのが、白玉椿である。

        侘助や出を待つ如く人を待つ     隆 保

 十月の末頃から、ちらりほらりと咲いていた侘助が、いまは盛りとなった。もっともこの椿は、うっかりすると見落としてしまうほど、慎ましやかな花である。
 花が一重で、花数も少なく、いかにも侘びた姿をしているので、この名があるといわれている。また、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、加藤清正が持ち帰ったものを、千利休と同じ時代を生きた茶人侘助がこよなく愛したところから、この名が付いたともいわれ、お茶の活け花として喜ばれるものである。
 学名は、カメリア・レティクラタ・ワビスケ・マキノと呼ばれるとのことなので、分類植物学の第一人者の牧野富太郎博士が、学会に報告したものと思われる。

        侘助の咲きかはりたる別の花     風 生

 白・桃色・紅(くれない)と紅白の絞りなどの栽培品種がある侘助は、いずれもがいつが盛りということもなく、今年の冬から翌年の初夏までの長い期間を咲き続ける。雪や霜にも傷められず、何ヶ月も咲き通して、変わることのない律儀さが尊ばれる。

        侘助のひとつの花の日数かな     青 畝

 こうした侘助の持ち味は、お茶や俳句の世界でいう、「わび」だとか「さび」だとか、「不易流行」と呼ばれる精神にも通じているのだろう。
 ただ、侘助という「変」な名で、句に詠むのに抵抗を感じるようでもある。


      侘助や丘をまたいで去る夕日     季 己