壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

冬至

2008年12月20日 20時35分56秒 | Weblog
        母在りき冬至もつとも輝きて     鷹 女

 あす十二月二十一日は、二十四節気の一つ「冬至」である。太陽の軌道が、最も南にかたよって、北半球では、一年中で最も昼が短く、夜の長い日である。
 冬の至りとはいえ、地表には輻射熱が蓄えられているので、本当の寒さが訪れるのは、冬至より後である。その点は、最も日の長い夏至より後に、本格的な暑さが来るのと同じ理屈である。

            花柳章太郎に
        一陽来復の雪となりにけり     万太郎

 冬至を極限として、また日がだんだん長くなるので、一陽来復といって、これを祝ういろいろな生活習慣があった。
 まず、冬至粥といって、小豆粥を食べる習慣が、中国・朝鮮・日本に共通していた。ことに朝鮮では、トンシパッチュクといって、門扉に小豆粥を塗っておくと、悪い病気に見舞われない、と言い伝えられているとのこと。

        いそがしき冬至の妻のうしろ影     草 城 

 食品偽装、振り込め詐欺、年金・雇用問題などなど、さまざまな問題があった平成二十年。この冬至を極限として、ぜひ改善され、景気が上向くことを切に祈りたい。
 きょう、二度目の「木原和敏 個展」(銀座・画廊宮坂)へ行ってきた。画廊は人、人、人……。木原先生の人気の程が、よく知れる。売約済みの赤ピンがわりの小さな赤点が、いかにも奥ゆかしく、また、いくつも付いているのがうれしい。
 この不況の嵐のさなか、腹の足しにはならない絵画を買ってくださる方が、多数おられることがわかり、こちらまで元気が出てくる。
 今回の作品も素晴らしく、欲しい作品が幾つもある。たいていは売約済みだが、まだ赤ポチの付いていない作品が二つある。
 だが今、木原先生の作品で最も欲しいのは、今年の日展出品作『ジャスミンの壁』である。100号なので、飾るところはもちろん、置き場もない有様なのに、気持だけは欲しいのだ。まるで子供……、と我ながらあきれ果てている。今でも木原先生の作品を一点、宮坂さんに預かっていただいて、迷惑をかけているのに。
 いつの日にか、また、木原先生に描いて頂きたい作品がある。それは、「あけぼのの空・風船かずら・あけずば織のショール」を含んだ女性像である。
 それにはまず、豚小屋と化した部屋を片付けねば、と頭ではわかっているのだが……。

        冬至の日縞あるごとくゆれにけり     青 畝

 関西地方には、冬至の日に、「ん」の二つ重なった食品を七種類食べると、運が開けるという言い伝えがある。たとえば、なんきん・うんどん・きんかん・にんじん・れんこん・かんてん・なんきん豆の七種類といったところであろう。
 なんきん豆はピーナッツ、なんきんとは、かぼちゃのことだが、特に南瓜(かぼちゃ)は、冬至南瓜といって、全国いたるところ、冬至の食物として尊重されている。夏や秋に収穫された南瓜も、冬至の日までは、不思議と腐らずに残っているのである。冬至こんにゃくを食べる習慣もあると聞く。

        柚子湯出て夫の遺影の前通る     眸

 また、冬至の日の習慣として広く行なわれているのが、柚子湯である。袋に入れた柚子を風呂の湯に浮かべて、その香りを楽しむことは、冬至を湯治(とうじ)にかけた洒落であろうか。
 柚子に限らず、柑橘類の揮発性の成分が皮膚を刺激して、血液の循環を活発にし、非常に身体を温めることは確かである。


      水仙の香や裸婦の絵は燈を遠く     季 己