牧師室だより 2012年9月2日 将来設計の基本は人口
「少子高齢社会」。この言葉を聞かない日はない。そして私たちの日常生活の様々な場面でそのことを実感する。しかし、このことによる日本の将来の国のあり方、社会のありようについて、十分な論議と設計(施策)が考えられているようには思えない。年金は、医療・介護は、子育ては、雇用はと、不安が先行する。
少し古い統計資料だが、日本の総人口は2009年時点で1億2751万人。2004年の1億2779万人をピークにすでに減少が始まっている。2050年には1億人を割り(約2割減)、2080年には約半分に、2100年には5000万人を割ると予測されている。2050年といえば、私は101歳(すでに天国にいるだろうが)、子どもたちは60代後半、孫たちは30代後半。私の予想では、その頃は交通渋滞は昔話で、首都圏の一部を除いて、どの道路もガラガラ。どうしてこんな広い道路を造ったんだと、若者たちはつぶやくに違いない。それでも日本の政官財の指導者はまだ高速道路や新幹線などを作ろうとしている。
今後は、人口が減ることを前提にした、人口が減ることによる利点を享受できるような政策、まちづくりが必要になるだろう。
まちづくりに欠かせないのが地域のコミュニティ。しかし現在、地域社会の人と人をつなぐ力、コミュニティの力が弱体化しつつある。近年、誰に看取られることもなく亡くなる、いわゆる孤独死が増えている。孤独死という言葉は阪神・淡路大震災の時に、仮設住宅で人とのつながりを失った多くの高齢者が孤独に死を迎えたことから問題が顕在化した。昨年の東日本大震災では、その時の教訓に学び、かなりの配慮がなされたが十分とは言えない状況がみられる。
今回の大震災で「絆」という言葉が強調されている。ということは裏返せば「絆」が乏しいということでもあるだろう。災害時はもちろん、育児、医療、防犯など、生活の場で様々な局面で地域コミュニティの力が必要となろう。地域に開かれ教会として、求められていることは何だろうか?