隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1255.リベンジ・ホテル

2012年05月28日 | 仕事
リベンジ・ホテル
読 了 日 2012/05/19
著  者 江上剛
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 480
発 行 日 2012/03/15
I S B N 978-4-06-277226-6

 

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xnミステリーで定期的に放送している講談社の「リブラリアンの書庫」という番組で、著者が出演して本書に関するインタビューに答えていた。図はその時の番組あてに書いた著者のサインだ
この番組でインタビューする作家と作品は、必ずしもミステリーとは限らないのだが、それでもAxnミステリーというチャンネルだから、ミステリー系統の本だろうと、読んでみることにした。
出来るだけ広く浅く多くの作家と作品に接してみよう、という趣旨を掲げてはいるものの、僕の気まぐれな読書はなかなかその思い通りには進んでいないのが実情だ。まるで自分の中に何人かの別の人格が備わっているような感じだ。多くの郊外型の古書店を見て回っていると、やはり目に入ってくるのはミステリー系統の作品が多く、いつ読めるのか定かではない本を安いからというだけの理由で、買い求めてしまう自分と、帰宅してテレビの書評番組、ネットの通販サイトや、オークションサイトを眺めているうちに、新しい本を読みたくなる自分が顔を出す。

 

 

タイトルの復讐(リベンジ)ホテルとは穏やかでないが、先の著者のインタビュー番組などの話では、過激な内容ではなさそうだが、他に意味があるのかと思いながら読み始める。
今の世の大卒の就職内定率の低い現状の中で、花森心平という青年は100社以上に応募のアクセスを試みるも、無残な結果に終わっていた。そんな時に企業の合同面接会で、ブラックホールのように沈んだ雰囲気を漂わすコーナーに、吸い寄せられるように座って、即座に内定が決まってしまった就職先は、経営不振であえいでいる地方都市のホテルだった。
ということで、もうこの青年の努力と思いが、周囲の人間を巻き込んで何とかホテルの経営を立て直す、というストーリーだろうと想像がつく。だが、読み進めながら、そんな単純な内容でもないのじゃないか?という思いも持つのだが・・・・。
しかし、どうも予想は外れることなく、暗く沈みこむようなホテルの雰囲気は、花森心平が入社したことだけではなく、新しく支配人となったオーナーの孫娘である神崎希(まれ)の出現により、少しずつ従業員たちの心構えも違ってくる。

 

 

人公・花森心平の何とも心もとない様子は、これでも大卒なのかと!と言いたいほどだ。しかしそんなキャラクターだからこそ、その後の活躍が浮き彫りにされるのか?
何事にも真面目に取り組み、めげそうでめげないばかりか、積極的な態度がまず客に好印象を与えていく。そういったまことにオーソドックスなストーリー展開だが、途中でメインバンクの貸し剥がし問題が起こって、ピンチに陥る場面も出現して、簡単にはいかないところも見せる。
アメリカ留学でMBA(Master of Business Administration:経営管理学修士)を取得したという、神崎希がオーナーの孫とはいえ、なぜ経営不振のホテル支配人になったのか?といった問題も裏に秘めながら、ホテルの行く末が次第に見えてくる終盤は、大きな障害も見せず少しあっけない気もするが、それは読み手のないものねだりか?
しかし、ホテルマンたちがいろいろと出すアイディアが、周辺の商店や人々を巻き込みながら、地域の特色を生かしたイベントを実施するなどは、近頃盛んな町興しにも似て、面白い。
そういう状況の中でも、いくら田舎のホテルとはいえ、少ない人口の中で経営を立て直すのは容易ではないだろうと、フィクションながら心配になる。
だから、ハッピーエンドは心から歓迎するが、実社会の景気回復もこのようにできるとうれしいのだが、なかなかそうは問屋が卸さないか。

 

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