隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1666.あしたの君へ

2016年09月11日 | 仕事
あしたの君へ
読 了 日 2016/09/11
著  者 柚月裕子
出 版 社 文藝春秋
形  態 単行本
ページ数 244
発 行 日 2016/07/30
ISBN 978-4-16-390442-9

 

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約してあった本の順番が回ってきたとの連絡メールが、9月4日の日曜日に市原市立図書館から入った。少し前に木更津より市原の方が、予約の順番が回ってくるのが早い、という実績があって僕はネットで市原市立図書館の方に、本書の予約を入れておいたのだ。
この他に誉田哲也氏の新作「硝子の太陽Rouge」と、中山七里氏の「作家刑事毒島」も予約してあるが、現在21人待ち、10人待ちということだから、もう少し時間がかかるだろう。あとから予約した「刑事作家・・・」の方が早く順番が来るかもしれない。予約の順が来るのを待つ、そんなことも僕にとってささやかな楽しみの一つだ。
前にも書いたことだが、市原市は周辺の公民館等の図書室が、七か所くらいと多いことから待ち時間が少なく済むのかもしれない。せいぜい活用して新作を早く読みたいものだ。 本当は予約などしないでゆっくり読める時を待てばいいのだが、予約するといくらかでも早く読めるから、早く読んだところでどうなるものでもない、とそんなことはわかっていながらも、なんとなく早く読むことがその面白さを高めるなどといった、変な錯覚が僕の中にあるみたいだ。
折角ここ半月ほど翻訳ミステリーに慣れてきたところだから、もう少し続けようかと思っていたところへの飛び入りだ。

 

 

今回の本書は、下表にある通り連作の短編集で、新米の家裁調査官補の成長記録のようなもので、ミステリー味については少し薄めだ。ミステリーというよりはかつて三浦しをん氏の「舟を編む」が、審査員である大方の書店員の推薦を受けて、本屋大賞を受賞したのをきっかけに、お仕事小説なる言葉が一時使われた。
この本を読みながら僕はそんなことを思い出して、このストーリー群も同様に“お仕事小説”の一つだと感じた。静岡出身の望月大地―というのが物語の主人公だ―は九州の福森家庭裁判所での、研修が定められていよいよ家裁調査官の研修が始まった。研修期間のうちは調査官補となるため、上司からはカンポちゃんと呼ばれる。
望月大地はそれが嫌だったが、観衆なので仕方がない。調査官補は他にも志水貴志、藤代美由紀という二人がいて、彼と同様に新人研修に励んでいる。夫婦の離婚問題やら、それに伴う親権の問題など、日常の生活の中で起き家庭裁判所に持ち込まれる、事件を調査して解決に導くのが彼らの仕事だ。

 

 

にも書いたことがあるが、ミステリーの探偵役に付いて、あらゆる職種が出きったのではないか、そういう人もいて、ミステリー作家の題材探しも大変だなと、本書を読んでいてそんなことを思った。もう探偵をこなす職業はないのではないか、そんな意見に対してまだまだありますよ、といった具合に今回の主人公が初めて聞く“家裁調査官”ということで、探せば探偵になる人物はいくらでもあるのではないか、そんな気にもさせられる。
今では一つのジャンルとして確立されている、いわゆる“日常の謎” 派というミステリーでは、ごく普通の市民や、高校生、大学生、あるいは町のカフェのマスターとかが、名推理を発揮してご近所の謎を解明するといったストーリーが次々と出てくる。
これからも出てくるであろう名探偵に、僕は大いに期待している。

 

初出誌 オール讀物
# タイトル 発行月・号
第一話 背負う者 2014年8月号
第二話 抱かれる者 2014年11月号
第三話 縋る者 2015年2月号
第四話 責める者 2015年5月号
第五話 迷う者 2015年11月号(「旅立つ者」改題)

 

 

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