絵画指導 菅野公夫のブログ

大好きな絵とともに生きてます

美学 3

2013-01-22 | 美術
絵を指導する場合、私はテーマと構図を大切にしている。
これも美学の一つだろうと思う。

よく私は絵を見てくださいと言われる。それは、描いた絵にアドバイスをくださいということである。
しかし、本格的に絵を指導したいとなると、それでは、ダメである。なぜなら、大抵はテーマと構図がダメだからだ。

まず、何を描きたいかということから始めなければならない。

私が今まで高校生に絵を指導して、プロと戦えるレベルの絵を描かせることができたのは、このテーマと構図に力を入れたからだと思う。高校生に描きたい物を勝手に描かせていたら、ほとんどがトンチンカンナものになる。もしくは漫画になる。

テーマで言うと、普通絵を始めたばかりの人は、難しいものを描きたがる。
花、夕日、富士山、絵ハガキになりそうな観光地など。
これらは、結構難しいのである。

私は、まず静物画から始めた。
それは、初心者がやるデッサンの延長だからである。

そして、構図を教えた。

構図と言うと、黄金比とか何か画面の区分けの線のような感じがするかもしれないが、私がここでいうのは、物の配置のことである。だから、構成と言った方が近いだろうか。

私は、静物画をドラマに例えて話す。

それは、主役脇役がいるということである。まず、何を描きたいかメイン(主役)を作る。
そして、それをなるべく画面の中央に置く。それが主役を目立たせる場合には、良い方法である。
しかし、下手をするとそれだけが目立って、身動きできない構図になる可能性がある。
それだけが目立つ場合を私は日の丸現象と呼ぶ。それは単調でつまらないから避けた方が良いと言う。

主役になるものを画面の中央でない場所に置くこともある。中央でない場所に置いてもそれが主役であると感じさせるには、かなりの工夫がいる。それはハイレベルの構成ができる人である。

先日のこの構成を見てもらいたい。


今、述べた主役の配置である。完全に中央に置いているので、白い石膏がメインであることは明らかだ。
しかし、それがあまりにも強いと日の丸現象になる。これは石膏の向きを左に向かせることで、それを避けている。
石膏全体で見ると日の丸現象に近いが、本当のメインは顔だから、画面のど真ん中からは外れている。その分、少し楽だ。
これが、顔だけの石膏像で、その顔が真っすぐ正面を向いて画面のど真ん中なら完全に身動きとれない構図になってしまう。

メインの置き方としての工夫は、今述べたところにある。

主役が目立たないドラマは、何が言いたいか分からないドラマになってしまう。
その意味で、この構成は主役が目立つので成功している。

しかし、ドラマは主役だけでは良い物にならない。その主役を引き立てる脇役が必要である。
この絵の構成は、脇役にいろいろなものがある。それらが主役を引き立てている。

引き立てている理由はなんだろう。
まずは、明度差である。メインの石膏が明るく、それ以外の物が暗い。
しかし、真っ暗では宇宙空間に置かれた孤独な存在になる。むしろどのくらいの明るいものが二番手の明るさとして必要かと考えて構成して行った。配置をしながら、もっと明るい物が何かありませんかと探してもらった。

右側に花瓶を置いたが、これなどは、探してきてもらったものである。
丸々見えていると目立ち過ぎるので、何か布でも被せますかというのは、その後の工夫であるが、
最初はこの場所に無かったものである。

現実には、このテーブルも石膏もこんなに目立つ状況にはなく、奥に引っ込んでいたので、構成としては手前に引き出していろいろ工夫した。



これが、最初に置かれていた状態だった。
もちろん、これは絵に描くために配置した訳ではなく、生活のそのまま置かれていた状態である。
ただ、先ほどから言っている主役脇役の配置という観点で見ると、構成がダメである。
だから、普段の何気ないそのままが絵になる構図になっているかというとなかなかそういうことはないのだとわかる。

これの何がいけないかと言うと、メインが石膏ではなく花になる。
メインが花だとしたら、石膏は邪魔である。それにしても花瓶が大きすぎる。白い物のバランスなどももっと検討したいなどの問題があるのだ。

つづく







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